パラダイムチェンジ

2003年07月30日(水) 湾岸ミッドナイト27巻 見返りを求めないこと

前回「トーク・トゥ・ハー」の日記の中でも触れた、見返りを求めない愛、
についてちょっと考えてみる。


考えるきっかけになったのは、漫画「湾岸ミッドナイト」27巻のこんな
台詞(フキダシ?)から。


―覚えとけ。見返りを求めたら大事なコトは手に入らない。
人の気持ちもそして車もだ。そこがポイントだろうナ。

かけたコスト(代償)を車から回収しようとしても、それは無理だ。
できるワケがない―(略)

お前はあのZから何か見返りを求めているか?
払ったコストやリターンのリスクを考えているか?

考えてはいないよナ。
ただあの車で走りたい。それだけだろ(略)

元を取ろうとか何かを回収しようとか思ったとたん、あの車との絶妙な
バランス感は崩れる。

向こうが変わるんじゃないんだゼ。お前がだ―

見返りを求めたとたん、むこうに対するお前の何かが少し変わる。
その少しが大きく何かをかえていくんだ。

たまたまや偶然じゃあないんだ(略)

このRに対する接し方を見てもわかる。
今のお前には車に対する無償の愛がある。
それは強いよ(略)

ここまでやったからここまでの見返りがあって当然。
思ったとたん自分の中で何かが崩れる(略)

見返りを求めるほど気持ちはむくわれない。
人も車もきっと他のコトもすべて

うちの工場には高価な車が入ってくる。
だがオーナーの充足度は驚くほど低い。

それは高価の見返りを車そのものに求めるからだ。
新しい高級車は次々と出るし、いくら追ってもキリがない。

得るべきものはそれとは違う他のモノからくるものなんだ。
わからないから充足を求めていつまでも車を買い換える。

払った代償で得られるモノはちがうモノから―



これはライバルのスカイラインGT-Rを修理する為に借りた、修理工場の
オーナー、高木が主人公、アキオに言った台詞である。

と言っても、読んだことがなくて車に興味のない人には全然わからない
っすよね。


なので、ちょっと概要を説明しておく。
「湾岸ミッドナイト」は、首都高、湾岸高速道路で改造した車を300
キロで飛ばしてバトルをする漫画である。

で、主人公アキオは、自らも意志を持つかのような走りをする、と言わ
れる初期型のフェアレディZ、通称「悪魔のZ」を運転する。

そして、その「悪魔のZ」に魅せられ、またその悪魔のZにバトルで勝つ
為に、周囲に様々な人々、車が集まり、終わりのないバトルを繰り広げて
いく、という漫画なのだ。

なんて書くと、非合法の行為を煽り、助長するだけの問題漫画、のように
聞こえるかもしれない。


でも、私にとってこの漫画の魅力は、非合法なバトルにあるのではない。
この漫画、ある意味では、恋愛漫画だと思うんである。

すなわち、主人公がなかなか自分の思い通りにならない、自分の車と
いかに付き合うか、という事を通して、人や車に限らず、対象に対する
恋愛感情の距離のとり方を考えさせられる漫画なのだ。

例えば、今回の高木社長の台詞。
これは、車に対する愛情の持ち方の話だけど、これをそのまま人間に
あてはめても、そんなにおかしくはないと思う。

つまり、自分が愛した相手に対して、見返りをそのまま求めようとしても
それはかえってこない、という一種の恋愛哲学としても充分通用すると
思うんだよね。

で、そういう目でこの漫画を読み直してみると、そんな風に思わずメモ
したくなるような台詞が沢山あるのだ。


と、言うことで今回の台詞。
前回取り上げた、ベニグノ君の恋愛を今回の話にあてはめてみる。

そうすると、やっぱりベニグノ君は、どこか無償の愛に対して、見返りを
求めようとしていたんじゃないのかな、と思うのだ。
それは一般的には、下心、という。

でね、人が下心を持ったとたん、今まではなんともなかった関係がギク
シャクすることって、多々あると思う。

でも、それを今回の話にあてはめてみると、結局下心を抱くことで変わる
のは、相手の態度じゃなくて、自分の心だと言えるかもしれない。

すなわち、自分のした事に対する代償をそのまま求める限り、例え
リターンがあったとしても、それでは人は満足できなくなってしまうの
かも、しれない。
つまり、もっと多くのリターンを求めてしまうというか。

でもね、無償の愛、見返りを求めない愛だと言っても、そこにはちゃんと
代償として受け取るものはあると思うんだよね。
それは下心を通して見ると、あまり満足のいくものではないのかもしれ
ないけれど。

でも、それはその人が、見返りを求めずに行なった行為に対する、正当な
代償なんじゃないかな、と思うのだ。


それはベニグノ君と同じく、医療機関で働いている者としてそう思う。
すなわち、普段の私たちは、別に見返りがほしくて医療行為や看護を
している訳ではない。
いや、もちろん中にはそうではない人もいるかもしれないけれど。


自分の例でいうと、まだ病院で働き出して間もない頃、一人の女の子の
リハビリの担当になったことがある。
その子は自分の母校の後輩だったこともあって、話も弾み、そして何より
可愛い子だったから、リハビリをしているこっちも楽しい時間を過ごす事
ができていた。

で、個人的には、恋心とまでは言わなくても、ちょっと感情移入をしたく
なった部分もあったんだけど、結局その場では何も起こらなかった。

なぜなら、例えばそういう恋心に対する見返りは、仕事以外の所で求める
ものだろうと思っていたからである。
で、結局その時は何もなかったんだけど、もしも何かのきっかけで外で
会う事があったとしたら、もしかすると恋が始まったかもしれない。

でも、それは医療スタッフと患者という関係ではなく、ただの男と女、
という関係で始まるものだと思うのだ。

で、結局その時は、私の見返りを求めない?医療行為へのリターンとして
彼女からは、ヨックモックのクッキーという、報酬以外の好意をいただく
ことになった。

余談ながらそのクッキーを何も知らない同僚が先に開けて食べているのを
見たとき、ちょっと複雑な気持ちになったりもしたんだけれど。
まあ、ある種の嫉妬ですな(笑)。

あ、でもやっぱりそのクッキーは、大事に食べたので、ちょっと
美味しかったです。


なんか話が思わぬ方向に行ったので、今回はこの辺で。



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