休みなのをいいことに、ダラダラと寝てしまった。 昼過ぎから用事があったのに。
天気のいい日に地下鉄に乗るのはなんだか癪だったのかもしれない。 時間が読めないので、平日は滅多に乗らない車で出掛けた。
丁度お昼時、道は空いているとは思っていたが、 あえて裏道を選んで走った。 暫くやたらと縦長の風景を走ると、急に視界が開ける。 青空が突き抜けるいい天気だ。 どこの道を行こうかとぼんやり考えていると、 後ろからクラクションを鳴らされた。
用事のあるビルの近くに車が停められず、 やむなく少し歩いたチケット制パーキングに停めた。 ビルまでの道を歩いていく。 途中の交差点を渡るとき、振り向くと海が見えた。 初夏の日差しを浴びた緑の木々と青い海、 ただ塗りつぶしただけのような何もない空。 記憶の底を浚うような、デジャブにも似た感覚。
思い出の向こう側の景色は、いつも青空のような気がする。 しかしそれは、都合のいいように書き換えられた記憶。 ただ、でもそれはそれでいいのかもしれない。 懐かしい思い出に曇り空は不釣合いだ。
遠くで君の声が聞こえた、そんな気がした。 空耳だとわかっていても、振り返った。
|