Spilt Pieces
2003年06月14日(土)  実習終了
木曜日、教育実習が終了した。
少しずつ日記を書こうと思っていたのに、忙しくてそんな余裕はなかった。
でも、あんなに充実していた日々がこれまでにあったかと思えるほどの毎日で、終わってしまって現在心のどこかに空洞。
「実習に行くと先生になりたくなるよ」
これまで散々聞いた言葉。
「夢もあるし、一時の感情だけで揺らいだりしないよ」
いつもそう答えていたけれど、生徒に何か言われるたび、揺らぐ自分の姿がそこにはあった。
「先生なら絶対いい先生になれるよ」
無邪気な笑顔と明るい声。
「本当は先生志望じゃないんだよ」なんて、とてもじゃないけど口に出せなかった。


私が通っていた高校は進学校で、自分なんかよりも頭のいい子がたくさんいる。
在学中あまり真面目に勉強しなかった私はコンプレックスの塊で、行ったところで自分に何ができるだろうと悩んでばかりいた。
それなのに、始まってみればあっという間。
難しい質問で苦しむと思っていたら、純粋な疑問の声しか上がらなかった。
意地悪しようだなんて雰囲気は、どこにもなかった。
真っ直ぐにこちらを見てくる目。
自分のため、ではなくて、みんなのために何か頑張りたいと思えた。
嫌いだった経済の範囲を任されて、動揺すれども生徒にとって私は「先生」。
どうすれば分かってもらえるだろうと、あんなに真剣に考えたことなど今までになかった。


上がり症の私は、人前に立つと汗が吹き出て声がかすれる。
何か伝えたいことがあっても、前に立った瞬間いつも忘れてしまっていた。
授業などできないと、実習前は教職を取った自分を後悔してばかり。
今は、行ってよかったとしか思えない。
自分を見つめてくる多くの目を、見つめ返すことができた。
返しながら、言葉を1つ1つ紡いでいくことができた。
今まで怖いとばかり思っていた目が、真剣な励ましに思えるようになった。
自分にだけ与えられた広い空間の中でも、手を広げることができるのだと知り、くだらないことばかり気にしていた自分を思わずせせら笑った。


6つも年下の生徒たちを見て、学ぶことの多さに驚いた。
多様な個性がそれぞれ毎日を真剣に過ごしている。
時にはサボって、時には悩んで、どれもが日々のどこかに腰を据えて前へと進んでいく。
最後の日、伝えたかった言葉を伝えた。
でもそれは、最初から私の中にあった言葉ではなく、生徒たちと過ごした毎日の中で、学んだことをそのまま戻しただけのことだった。
どの個性も、合うとか合わないとかじゃなくてどれも魅力的。
輪から外れようとしてしまう子の気持ちも、どことなく伝わってくる。
それをどう自分の中で消化していけばいいのか。
私には難しすぎて結局はできなかったけれど、自分にできることを精一杯やる以外なかった。


私はいつも中途半端で、どこかしら手を抜いた方が楽だし悲しくならずに済むと思っていた。
でも、今回はそんなことしても自分を苦しめるだけだと思った。
だから、できることを本気で考えたし、それの良し悪しを判断するほどの時間はなかったけれど、いいと思ったことをどれもやるように心がけた。
いつも何かをするときは後悔や反省が付きまとうものだけど、今回はそんなことない。
やり抜いたという自信がある。
あえて言うなら、もっとそんな密度の濃い時間を過ごしたかったということか。


生徒や先生方から、「教師に向いている」と、何度も言われた。
私の将来の夢を理解してくれていた先生までもが、「考え直さないか」説得してくれた。
嬉しくて、当惑もして、それでも私は意志を変える気はない。
教員試験が難しいからなどという理由ではなく、ここで自分の夢を変えたりしたならそれこそ中途半端。
本気で何かに取り組むことの喜びを、教えてくれた実習だからこそそう思う。
中学生の頃までは、先生になりたいと思っていた。
だから、諦めきれない気持ちがどこかにあって、大学1年の時母に勧められるがまま教職課程を取ることにした。
社会に出て、色んな経験を積んで、ふと立ち止まって考えたとき、それでも教師を志すならそのとき願書を書こうと思う。
今はただ、この経験を無駄にせぬよう、日々を真剣に生きていきたいという思いだけが残った、という感覚。


励ましてくれて、支えてくれて、慕ってくれて、相談に乗ってくれて、話を聞いてくれて、受け入れてくれて、一緒に過ごすことができて。
本当にありがとう。
みんなは「いい先生になって」と言ってくれたけど、裏切る私を許してほしい。
でも、みんなのおかげで自信を得られた。
自分も、こんなに何かに真剣になることができるのだということ。
私にも、支えてくれる人がこんなにいるのだということ。
本当は毎日でも1−Eの教室へ行きたいけれど、それだと学んだことを生かしていないんだろうな。
みんなが頑張って日々を過ごしているように、私もこれから自分の生活を充実させられるよう頑張りたいと思う。
「忘れない」だなんて、クサイ言葉はこれまで嫌いだったけど、他に表現を知らないからあえて言う。
この3週間と、共に過ごした全ての人たちのこと、忘れない。
いつかどこかでまた、再会できるならこれ以上の喜びはないよ。
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