2007年01月14日(日)  育児フェロモン。
 
独身時代はその存在すら認識しなかったのだが、世の中にはベビールームというものが存在して、百貨店やショッピングモールの店内に、オムツ交換、授乳、赤ちゃんの食事、休憩などが可能なスペースがあるのだ。場所によっては人二人入れば満員の場所もあれば、10人入っても余裕がある場所もある。ミルク用のお湯が出る水道も設置されてある。授乳室にはそれぞれカーテンが設置されており、プライバシーも保たれる。よって最近は出掛ける場所や、その付近にベビールームがあるか否かが最優先事項になっている。
 
今日は妻の失業給付の諸手続きのため、池袋のハローワークに行った。池袋のハローワークはサンシャインビルにあって、サンシャインビルにはサンシャインシティという巨大なショッピングモールも隣接されている。妻がハローワークに行っている間、僕は御ハナを抱えてショッピングモールを散策、を予定していたのだが、妻と別れて数分後に早速御ハナがグズグズしはじめたので、オムツが濡れたのだなとベビールームへ向かう。
 
サンシャインシティには2ヶ所のベビールームがあり、うち1ヶ所はゆったりとしたソファーや授乳室、10個以上のオムツ交換台などがあり、お湯ももちろん出るし赤ちゃんの身体測定までできるという充実ぶり。内装もすごく綺麗で、別にショッピングモール散策したって買いたいものがあるわけでもないし、そもそも財布に金が入ってない。無利無欲。あるのは妻と御ハナへの愛情だけ。ママの用事が終わるまでここでゆっくりしよっかー。と、御ハナのオムツを替えて、ベビールーム内のソファーに座って御ハナと遊ぶ。
 
遊ぶといってもただ僕が一方的に話し掛けて御ハナがエヘェと笑って僕がウホーとなっているような、結局家でも外出先でもやっていることは一緒なのだが、外出先でもそんな遊びが許されるベビールームという存在。世の中便利になったもんだ。
 
と、感動しながら御ハナと遊んでいると、「御ハナさーん。ウバウバウバブー」「いないいない……イナーイ!」「コラ! なんでそんなに可愛い目をしているのか!」など、我が家と錯覚していつの間にか声を出して御ハナをあやしており、斜め向かいのソファーでその馬鹿親を見ていた1歳半の女の子を連れた母親が、「こんにちはー。可愛いですねー。何ヶ月ですか?」と、話し掛けてきて、1歳半の女の子も、グッジョブママ。よくぞ話し掛けてくれました。と言わんばかりに、「赤ちゃん、触ってきていい?」なんてニコニコしながら母親に言っている。御ハナも御ハナで、その女の子がやたら気になるらしく、二人ニコニコしながら見つめ合っている。
 
「子供たちはね、きっと子供たちにしかわからないテレパシーのようなものを持ってるんですよ」と、その若い母親は言った。「そうかもしれんですねー」と、女の子に小さな足を触られてキャッキャと喜んでいる御ハナの頭を撫でる。いつの間にかその母親は隣のソファーに座っており、僕たちは育児話に花を咲かせていた。
 
しばらくすると3歳児ほどの男の子を連れた母親が入ってきて、何ヶ月ですか? そちらは? 元気ですねー。可愛いですねーみたいな会話を経て、育児話に参入。ややあって今度は御ハナと同じくらいの赤子を抱えた母親が入ってきて、同様の挨拶を経てそれぞれの子供を交えながら育児話。そして数十分後、じゃあ失礼しましたー。頑張りましょうねー。なんて言って、それぞれベビールームを出ていく。
 
子供の名前は知っているが親の名前も仕事も住まいも知らず、多分二度と会うことのない、そんな短時間で温かい関係。ベビールームってすごいねしかし。と、帰りの電車の中で妻に話すと、「女同士だけだったらそんなことないわよ。男一人子供抱えて、いかにもガードが弱そうなあなただからみんな話し掛けてくるのよ」と、褒められているのだか呆れているのだかわからないことを妻は言った。「育児フェロモンだね」と、僕が言うと、妻は「何それ」と言ったけど否定はしなかった。
 

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