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| 2006年10月04日(水) 39週4日目。 |
| 「ねぇ、おしるし……きたよ」 おしるしとは陣痛が起きたときに発生する少量の出血のことであると解説交えて午後8時。トイレから帰ってきた妻が言う。予定日まであと3日だったが、遂にこの日がやってきた。今日は1日腰が痛いような重いようなって言ってたから、万が一の為に早めにお風呂入って、いつもより1時間早くゲームをしていたぜ。遂にこの日がやってきた。落ち着け落ち着け。えっと、えっと、何すればいいんだっけ。 と、まず落ち着くことを心掛けながら、デジカメ、ビデオカメラの充電を始めるあたり思い切り動揺している。つうか明日夜勤だよ。夜勤交代してもらわなくちゃと婦長さんに電話。婦長さんからアドバイスをもらう。8時半、もうこの時点で20分間隔で陣痛が起きている。陣痛の程度もまだ不規則だし、病院に電話してもまだ来院しなくてもいいという。 午後9時。母親に電話。就寝中。看護婦の妹に電話。看護師としての心構え、母親としての心意気をアドバイス。美容師の妹に電話。就寝中。ベランダで煙草1本。あ、携帯の充電しとかなきゃ。陣痛の合間にヨーグルトを食べたいという妻に、冷蔵庫からヨーグルトを出す。自分で買っといたくせに、あんまり美味しくないと言う。今度はオレンジが食べたいというので、オレンジの皮を剥き始めながら妻を見ると、陣痛の波に襲われており、腰を押さえてウゥウゥ言っている。 午後10時。室内にクラシック音楽をかける。陣痛の間隔を計測しているメモ帳を見ると、もうこの時点で10分間隔になっている。この陣痛の間隔、携帯電話の時計で計測していたが、腕時計をつければいいということをこの時点でようやく気付く。 「大変だぁ。これは大変だぁ。大変なことになるぞぉ。痛いぞぉ。きっとすごく痛いぞぉ」 妻は腰を押さえながら独り言のように呟いている。大変も何もこれからお産が始まるのである。「ねぇねぇ、陣痛ってどんな感じ? どんな痛み? ちょっとわかりやすく例えてみて」と、僕が妻の立場だったらひっぱたいているような質問を、好奇心に任せて訊ねてみる。 「外傷的な痛みじゃなくて、内から響く痛みだから、なんとも例えようがないわ」と、律義に答えてくれるところが妻の愛すべきところであって、僕の憎むべきところは、現在午後11時。眠たくて仕方ないというところである。 というのも、今日は午前中仕事で、午後から仕事の関係の葬儀に参列して、夕方からは葬儀の後、参列者が集う貸切のレストランのウェイターをするという、相変わらず意味のわからないことをやっており、疲労困憊だったのだ。 陣痛が襲ってきたら妻の腰をさすり、陣痛が遠のいたら陣痛の時間のメモを取り、うたた寝する。背中さする、メモ、うたた寝、さする、メモ、うたた寝、そんなことを繰り返しているうちに、どんどん陣痛の感覚が短くなる。さぁそろそろ病院行こう。タクシーを呼んで、事前に準備してあった入院セットを抱え、陣痛と戦う妻に、もうすぐややちゃんに会えるよ。頑張ってね。と、励ましながら午前0時。僕らは病院に向かったのでした。 |
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