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| 2006年09月21日(木) 30歳30円の真実。 |
| 妻はもう臨月に入り、体がなまらないように、過剰に太らないように、ややちゃんがスムーズに下がれるように、毎晩一緒にウォーキングを始めるようになったのだが、ウォーキングの帰りに時々コンビニに寄って、妻は菓子パンを買ったり、僕は駄菓子を大人買いして、これってプラスマイナスゼロじゃなくてプラスマイナスプラスだよねぇなんて話しながらテクテク歩いて帰る。 今日は帰りに30円の「ビッグカツ」という懐かしの駄菓子を購入。今も昔も30円。小学校の帰り道、小銭を握りしめて丸山商店に寄って友人達と駄菓子を買い食いしていた頃、この「ビッグカツ」は、リッチの象徴ともいえる駄菓子であった。100円あれば山のような量の駄菓子が買えた。しかしビッグカツは1つ30円である。100円で3つしか買えない。ちょっと懐に余裕がある時じゃないと買えない駄菓子。 しかも駄菓子ではなく、なんかおかずっぽい駄菓子。学校帰りにおかずを食うという、なんかわからんけど大人びた感じ。食後、ビールと一緒に僕らの食卓にはあがらなかったおかずを食べ始める父親にちょっと近付いた感じ。そんな大人への憧れに似た思いを抱きながら、慎重に貧乏たらしくゆっくりと噛みしめながら食べていたビッグカツ。なにしろカツである肉である。学校帰りに肉である。30円で肉である。 「しっかしこんな薄い食いもんのどこに肉なんて入ってるんだろうねぇ」 「え? 何言ってんの? それ確か原材料するめだよ」 学校帰りじゃなく、あれから20数年経った散歩帰り、妻が笑いもせずに呟く。ま、まさか。う、嘘だろ。と、うろたえながらビッグカツの袋の裏側を見る。 「品名 ビッグカツ 名称 魚介類加工品」 魚・介・類・加・工・品!! 月に向かって僕は叫ぶ。騙されたァ! 僕は騙されていたァァッ! 今度は地面に向かって叫ぶ。ビッグカツは肉ではなく魚介類加工品だったのだ! しかもその事実を大人になって知ったのだ。齢三十になってから知ったのだ。結婚してから知ったのだ。なんたる屈辱。紙のような薄い肉を揚げたものだと疑う余地もなく30円の大金をはたいて学校帰りにリッチな気分で食っていたのは魚介類加工品だったのだ。 「だ、だ、だって、お、お肉な、お肉なんて、全然、全然入ってないって、み、見れ、見ればわかるじゃない」 妻は大きい腹を抱えて道路の真ん中で大爆笑している。なんたる屈辱。残酷な真実。こんな真実、知りたくなかった。どうせならビッグカツは薄い肉を揚げたものだと信じていたまま死にたかった。そっちのほうがどれだけ幸せだろう。だいたいビッグカツって名前がいけない。カツって名乗ってんだからカツだろう。まぁ裏側に魚介類加工品ってちゃんと書いてますって言われればそれまでだけど、ガキの頃はそんな仔細に裏側まで見ないよ。大人になっても見なかった僕も悪いんだけど、それにしてもあんまりだ。しかもまだ袋に3袋残っている。魚介類加工品が3袋残っている。 「残り、全部あげるよ」 「いらなーい」 妻はそう言って腹をゆらゆら揺らしながら定価10円の「かば焼きくん太郎」を食っている。 「言っとくけど、それはかば焼きって名乗ってるけど、実はかば焼きじゃないんだぜ」 「そんなの知ってるー」 屈辱まみれの30円30歳。こんな真実僕は聞きたくなかった。だからもうすぐ生まれる我が子にもビッグカツは肉を揚げたものだと教えることにすると月に向かって吠えて誓って。 |
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