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| 2002年08月22日(木) 白鳥に乗ったシンデレラ。 |
| 数日前、近所のスーパーで高校の同級生の女の子と久々会って、 僕の買い物かごには惣菜とインスタントラーメンとコーヒーと菓子パンが入っていて 彼女の買い物かごにはレタスとトマトと台所洗剤と豚のコマ切れとかんぱちの刺身が入っていた。 「え?結婚したの?」 「うん。知らなかった?」 買い物かごを見て結婚していると判断したわけではない。 その小さな眼鏡とは少し不釣り合いなマタニティドレス。 8ヶ月も小さな命を宿しているその腹部は、彼女の幸せを象徴していた。 そしてインスタントラーメンが入らない日がない買い物かごは、僕の相変わらずの現状を象徴していた。 「彼女とはうまくいってるの?」 幸福の妊婦は僕に辛い質問を投げかける。 「え?いつの?誰のこと?」 僕の受け答えはいつだってしどろもどろだ。 「ははっ。去年の今頃付き合ってた彼女のことよ。去年の祭りで会ったじゃない」 「あ、あぁ。別れちゃったよ。夏が終わって飽きが来た。みたいな」 「ははっ。バカねぇ」 僕は、自分の不幸を笑い話に変換できる術を持っている。 「で、今は彼女はいないってこと?」 「今も、彼女はいないんだ」 「あ、ちょうど良かった!紹介しよっか?」 誰も僕がひどい男だとは知らずに、女の子を紹介しようとする。 そして1度紹介した人は、2度と僕に紹介しなくなる。 僕と付き合った女性は、最後におもりを付けられて「不信」の海に沈められてしまうんだ。 「ごめん。紹介は、いいよ。僕は運命的な出会いがしたいんだ。 買い物帰りにアパートへの道をトボトボ歩いていると白鳥に乗った餅肌の女の子が空から落っこちてくるんだ」 「・・・で?」 「で?って突っ込んでくれないんだね。まぁ、いいや。 でね、その傷ついた白鳥と女の子をアパートに連れて帰って泊めてやるんだ。 そして朝起きたら白鳥は毛布の中で鳩になっていて、女の子はガラスの靴を残して消えてしまってるんだ」 「なんだか滅茶苦茶だけど、要するに魔法が溶けちゃったってわけね」 「お、話がわかるねぇ」 「だって昔と全然変わってないもん」 彼女は大きなお腹を揺さぶりながら言う。 「だけどそんなことばっかり考えてるといつまでも結婚できないわよ」 「わかってるよ!」 柄にもなく、本気で怒ってしまった。 |
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