2002年05月21日(火)  温泉郷から書く日記。
1日分の洋服と下着をバッグに詰め込む。
急遽決まった1泊2日の温泉旅行。僕と友人2人。
友人達は僕の傷心旅行と言うけど、僕はそういう風には思っていない。
ただ、ここ数日少し疲れ果ててしまったのでちょっとした養生に行くだけ。
 
失恋の傷はアルコールで綺麗に消毒されました。
 
片道3時間。車の運転は交代で、ということだったけど
結局というか案の定、僕が半分以上運転することになった。
僕は眠そうにハンドルを握って友人達は楽しそうに歌を唄っていた。
一通り歌い終ると、後部座席に座っている友人は白いハンカチを顔に掛けて眠ってしまった。
残された僕達はまるで死体を運搬しているようだった。
 
「ねぇ、どこに埋める?」
「やっぱ人目のつかない山の中でしょ」
「寝てないわよ!」
 
後部座席の友人は確実に寝ていたのに、そういう話はしっかり聞いていて
逆ギレして小言を言ってまた寝てしまった。
 
僕達が泊まる旅館は思いのほか綺麗で、
10畳の部屋を予約したのに12畳の和室へ案内されて嬉々揚々して
友人達は部屋を細かく点検して早速温泉に行ってしまい
部屋に残された僕は、
お茶を煎れてタバコを吸ったり中庭に出て庭園の風景をカメラに収めたりしていた。
 
1人で畳に大の字になって天井を眺めていると
部屋に女中さんが入ってきて「どちらの方が奥様ですか?」と夕食の支度をしながら訊ねる。
「違いますよ。2人とも友達です」僕は笑いながら答える。
「はぁ、そうなんですか」女中さんはそう言って笑い返したが、目は笑っていなかった。
 
2人が温泉から戻ってきて、その女中さんの話を伝えると
湯上がりの髪を解かしながら大声で笑って
 
「あんたと結婚なんてするもんですか」
 
と声を合わせて言った。
声を合わせてまでして言うことないと思った。

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