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| 2002年05月12日(日) 太古の空気。 |
| また今回の恋愛もこういう結末を迎えてしまい、 世の中を嘆くのも自分を責めるのもいい加減飽きてしまって、 ただただ放心状態で、 深夜のキッチンに1人座って何度も冷蔵庫を開けて 酒はないかしら、ビールはないかしら、焼酎はないかしら、何でもいいから 記憶をなくすものはないかしら。 と、延々と眠れず、刻み続ける時計に焦りを感じていた。 冷蔵庫の中のビールもチュウハイも全部飲んでしまって、 いよいよ眠れない夜が訪れて、不眠の死神は僕の肩にそっと手をまわして 一夜を共にしようと耳元で囁くけど 死神の思惑通りに進むのは嫌だったし、何よりも明日は仕事なので 僕は意を決して死神の冷たい手を払いのけ、テーブルから立ち上がり、 キッチンの棚にインテリアのように置いてあったジンとブルーハワイを見つけ 少し迷ってから(というよりブルーハワイという気分ではなかったので)ジンを手に取り、 オンザロックにして、それを飲んだ。 ジンに混ざり合い小さな泡を立てるその氷は数日前、とある女性にもらった南極の氷。 この女性の御主人は南極の昭和基地で砕氷艦「しらせ」に乗っている。 この氷には小さな空気の粒が入っていて グラスの中で氷が溶けるにつれその空気の粒が弾けて 長年閉じ込められていた太古の空気が時と場所を変え、家賃4万円のキッチンに広がる。 数万年前、南極では何が起こっていたかなんてわからないけど、 遥か彼方の南極の昭和基地の北北東のオングル海峡の氷山から採取された 太古の氷と空気は 安物のジンと混ざり合って、失恋した救い様のない男の部屋に広がる。 感傷的な気持ちと、台本に記されているような生活の繰り返しにうんざりして 僕にはアルコールが強すぎるオンザロックで胃の中が熱くなり、 これもアルコールのせいだと思うんだけど、 なぜか目頭まで熱くなった。 |
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