2002年03月22日(金)  好色一代男。
鹿児島に帰ってきて最初の休日。
僕はとても疲れていて、ずっと布団の中に潜っていた。
 
体は石のように重く、風のように軽かった。
荒波の中の帆舟のように揺れて、春先の小川のように静かだった。
とても不幸な夢を見たり、覚めないでほしい幸せな夢を見た。
何度も寝返りをうって、何度も毛布を剥いだ。
 
彼女が来て、僕を何度か起こした。
静かに声を掛けたり、激しく体を揺り動かしたりした。
林檎の甘い匂いで僕を誘ったり、温かいスープで僕を優しく包んだりした。
 
それでも僕は起きなかった。
 
彼女は多分、朝から来ていたはずなんだけど、
僕がいつまでも起きないので、遂には諦めてしまって、
パソコンの電源を入れて、「好色一代男」を読んでいた。
 
「どのくらい読んでたの?」
「ん〜。3時間くらい」
「どのくらいの量を読んだの?」
「1年分くらい」
 
この「好色一代男」という日記のようなコラムのような駄文は、
毎日1000字近くの文章を書いているわけだが、
彼女はその約1000字の文章を約365日分読んだわけだ。
 
毎日毎日いろんな事が起こり、いろんな事を考える。
いろんな人がいて、いろんな感情が渦巻く。
過去の日記には、もちろん昔の彼女のことだって書いてある。
幸せだった時も書いてあるし、勿論不幸な時も書いてある。
 
まぁ、これは自分だけの日記じゃないから
多少の加味装飾が施してあるかもしれないけど、
全般的に、僕の正直な気持ちが記してある。僕の全てが書いてある。
 
「で、どうだった?」
「ん〜。複雑。読まなければよかったような」
「ような?」
「読んだほうがよかったような」
「ような?」
「なんだか、本当のあなたがわからなくなった」
 
ハハッ。そりゃそうだ。

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