2002年03月17日(日)  新しい世界。
午前11時。池女さんと池袋駅西口で待ち合わせ。
今日は少し早めにマンションを出たので、約束の時間まで池袋駅周辺を少し探索。やがて迷子。
 
西口で待ち合わせて、僕はなぜか北口の方角から登場。
むろん本人はどういう経緯を得て北口の方角を歩いていたかわからない。
僕は東京で常に狐につままれ続けている。
 
浅草。
どういう経緯で浅草に到着したのかわからない。
何度か電車を乗り換えたような気がするけど、よく憶えていない。
何度か他の駅の中を歩いたような気がするけど、よく憶えていない。
池女さんがすごく頼もしく見えた。実際に頼もしかった。
僕が違う方向へ歩こうとすると、服の袖を引っ張って道のりを修正した。
頼もしかった。というか僕が頼りなかった。
 
浅草。学生の頃、修学旅行で来たことがあったけど、
バスから降りてすぐトイレに駆けこんだことしか憶えていない。
大きな提灯があって、煙がモクモクしている。テレビで見たことあるー。
しばらく浅草をブラブラと探索。
 
「ねぇ、池女さん。どうしてここにいるおじさん達はみんな新聞を熱心に読んでるの?」
「あんまり見ちゃダメ!競馬に未来の夢を託してる人達なの」
「ねぇ、池女さん。どうしてあのオジチャン、指がなく・・」
「早く行きましょ!ジロジロ見ちゃダメ」
「ねぇ、池女さん。浅草は昼間からストリップ劇場開いてんの?」
「知らないわよそんなの!」
 
とにかく第一次産業が盛んなうちの近所ではまず味わえない世界。
浅草花やしきを横目に、道は観光スポットから徐々に外れていく。
路地も徐々に狭くなり、そこは、もう、賭け値なしにディープな世界。
路上でおでんと謎の煮物を売っているおばちゃんに引き止められ、
3月の陽の光を吸収した思いきり熱いアルミのテーブルで食事をする。
周りを見るとやっぱり新聞を熱心に広げる人達。
 
熱心に新聞を読んでいる割に料理はものすごく適当。
鍋に牛肉と大根と豆腐をごった煮にした料理。しかし結構美味い。
「おばちゃん。この料理の味付けは?」
「適当よ」ぶっきらぼうな答えが帰ってきて僕を恐縮させた。
 
路上で春の光を浴びながら、梅を眺め、深い人達と、怖い会話に抱かれて
なんだかよくわからない食事をする2人。
「なんだか、こういうのって、すごくいい」
 
本当になんだか、こういうのって、すごくよかった。



『新しい世界 ―2―』

浅草を出て、次は隅田川を走る水上バスに乗る。
「手前に見えますのが吾妻橋でございます」などアナウンスが流れて
観光気分を盛り上げてくれる。
 
かつては江戸情緒溢れていた川沿いも、今は高層ビルが立ち並び、
少し残念に思ったどころか、僕はその雲まで届きそうな建物にド肝を抜かれた。
そしていつまでもサッポロビール本社の屋上にある巨大なウンコみたいなオブジェが
頭から離れなかった。
 
浜離宮という日本庭園で降りて少し散歩。
都会にもこういう自然が溢れている所が存在することに驚いた。
桜の木の間から見える高層ビルがとてもアンバランスだった。
 
銀座を通り、青山へ。
ここで舞台は一転する。洗練された人たちが肩をなびかせて道を歩く。
そう。表参道では、全ての人たちが洗練されて見えるのだ。
「あのおばあちゃんの色あせたジーンズも計算されつくされたファッションなんだよねぇ」
「いや、池女さん。それは考え過ぎだと思う」
 
表参道のオープンカフェで軽食を摂る。
静かな通りのオープンカフェで、目の前にはアニエス・ベーのブティック。
梅がさりげなく蕾を開き、道行く人は主張しすぎないお洒落な人たち。
ここはどうみたってテレビの世界。
テレビの世界でカプチーノとサンドイッチを食べる。
サンドイッチにアンチョビが入っていたので池女さんにあげる。
 
その後、あの岡本太郎記念館に行く。岡本氏の自宅を階層した記念館。
芸術が爆発してるといえばしてるだろうけど、
「これってよくわかんないよねぇ」
「芸術って評価する人にコネがないとダメだよねぇ」
僕達の発想の方が爆発していた。
 
青山のインテリアショップにいくつか寄って、さも自分達の家のように
写真を撮る2人。何十万もするソファーに座り、足を組んで澄ました表情。
何十万もするキッチンやテーブルを見て
「これって機能的じゃないよねぇ」
ケチをつけるのも忘れない。
 
この日記は1日あたり文字数が1000字に区切られていて、
とても1000字じゃ収まりきれないので、2つに分けて書いたけど、それでも収まりきれなかった。
この後、渋谷に寄って、僕は今回最後の大失態を演じてしまうわけだが、
またいつか書こうと思う。
 
池女さんに多大なる感謝の意を込めつつ。

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