2002年02月14日(木)  一瞬の距離。
「君のことが好きです」
僕は「好き」ということがどういうことなのかよくわからないけれど、
とりあえず言う。多分、好きなんだろう。
「好き」という感情は、考えれば考えるほど、その本質から遠ざかって行くような気がする。
 
「じゃあ、あなたは何が嫌い?」彼女が言う。
僕は首を傾げて頬を膨らませて(僕は物事を考えるとき頬を膨らませる癖がある)応える。
 
「おでんの玉子が嫌い」
「他には?」
「健康スリッパが嫌い」
「他には?」
「テレビのリモコンが嫌い」
「他には?」
「奈良の大仏とか東京タワーとか」
「他には?」
「残り数枚のティッシュペーパー」
 
「他には?」
「長袖Tシャツ」
「他には?」
「和式トイレ」
「他には?」
「テレビの上に乗せる室内アンテナ」
「他には?」
「緑色のパイプ椅子」
 
「他には?」
「夏休みのラジオ体操の前に流れる歌」
「あ〜た〜らし〜い〜朝がきた」
「そうそう」
「き〜ぼ〜うの〜朝〜だ」
「それそれ」
「よ〜ろこ〜びに胸をひ〜らけ」
「うんうん」
「お〜おぞ〜ら仰げ〜」
「もういいよ。わかったから」
「ラ〜ジオのこ〜えに〜」
「いいよ、もう、しつこいよ、わかったよ」
 
「そう」
「そうだよ」
「こんな私でも好き?」
一瞬の間。
「・・・好きだよ。愛してる」
 
「そう」
「そうだよ」
「今一瞬、間が空いたでしょ」
「空いたね」
 
「これが今の私とあなたとの距離なのよ」

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