2002年01月31日(木)  茂みの中。
再びワインを交わすときがきた。
 
「もうお待ちしてますよ」
 
待ち合わせのバーに遅れた僕の鼻は外の寒さで真っ赤になっていた。
「とりあえず、ワインを、白で」
 
乾杯をして最初の一杯を味わいもせずに飲み干す。
 
考えてみれば、2人で食事をするのは今夜が初めて。
いつものバーで初めての食事。
テーブルの前には、キミがいる。
向かいあって、トナカイのような鼻をした僕がいる。
 
どうなるのだろう。
2人きりで食事をする意味を考える。
 
ワインは進み、僕は徐々に饒舌になる。
 
僕は僕について、彼女は彼女について話す。
 
――人の行く先にはね、いろんな道があるんだよ。
大きな道がね、ほら、例えばね、このライターとワインのコルクとタバコ。
3人の人がいました。この人たちの行く先にはね、大きな道が見えるんです。
で、このライターはこの大きな道を進んで、このワインのコルクはこっちの大きな道を進んで、
このタバコはね、こっちの方の大きな道に進むんだよ――
 
2杯目のワインを飲み干す。
 
――でね、実はね、道はね、大きな道だけじゃないんだよ。
ほら、こういうとこにね、目に見えないような道があるんだよ。
で、僕はたまたまその道があることに気付いて、その道を選んだんだよ――
 
タバコに火をつける。自分で言ってみたものの、自分でもよく意味がわからなかった。
彼女も、肯いたり顔を傾けたりして聞いていた。
顔を傾けるときは、少し頬を膨らます。きっと彼女の癖なんだろう。
 
――その道ってさ、あなたがたまたま気付いたんじゃなくて、
んー。なんていうんだろ。こう、茂みの中をかきわけて見つけた自分の道なんじゃないかな。
んー。なんていうんだろ。自分で掘り続けてる道っていうか――
 
彼女はニッコリ微笑む。
僕は店を出る時間をもう1時間くらい伸ばそうと思った。

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