2002年01月11日(金)  妥協と洗練。
「ねぇ、色気のある人と、可愛らしい人、どっちが好き?」
 
いつものバーのカウンター。彼女はセミロングの髪がカウンターに届くくらいに
うつむいて、僕と視線を合わさずにそういった。
年上の女性。僕より7歳も歳が違う。友人達よりも7年分違う色気がある。
 
グラスをなでる仕草や、なだめるように話す口調が、僕のペースを狂わせ、
彼女の世界へ飲み込まれていく。
 
「う・・・ん・・・そりゃあ、色気のある人じゃないかな」
 
僕は、精一杯悩む振りをして言う。初めから答えは決まっていたのだけど。
7歳年上の女性に可愛らしい人の方が好みですなんて言えない。
実は、どっちかというと可愛らしい女性の方が好みなんだけど、
ここで自分の考えを素直に表したところで得られるものなんて何もない。
 
突然、この女性に食事を誘われた。
理由はよくわからないけれど――よくわからない振りをしてるだけなんだけど――
本当に青天の霹靂の如く、食事に誘われたのだ。
 
「色気のある人が好みなんて考えは今のうちよ」
 
彼女は予想を覆すようなことを言った。
僕は狼狽する。見透かされたような気さえする。
 
「まぁ、この二択はちょっときつかったかもね」
 
彼女は、1人納得したような口調でそう言う。
そう、この二択はちょっときつかったのだ。
 
人は二択で分けられないんじゃないかな。色気のある人、可愛らしい人。
気の長い人、短い人。綺麗好きな人、そうでない人。料理が上手い人、掃除が上手い人。
お喋りな人、寡黙な人。髪の長い人、短い人。
 
この世に存在する様々な二択。二択だけじゃ真実なんて語ることはできない。
要するに、色気のある人でも髪が短かったら好みじゃないとか。
綺麗好きだけどお喋りな人は好みじゃないとか。
 
人は様々な二択の組み合わせで、人を、自分の好みというカテゴリーに当てはめる。
色気があって、気が長くて、綺麗好きで、料理が上手くて、寡黙な人で、髪が短い人。
という具合に。
 
その中で、妥協できることは妥協して、許せないものはより洗練される。
 
僕は、妥協することが多いと思う。
人と合わせるってことは、要するに、自分を妥協することなんだと思う。
 
いや、貴女には妥協なんてしてないよ。より洗練されてます。

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