2001年10月14日(日)  ティッシュと札束。
先輩の結婚式。
 
何度も言うけど、僕は人前に出るのは好きではない。
人前で芸をしたり歌を唄ったりというのはもっての他。
手や足や心臓や肝臓や脳や顎やくるぶしなどがガクガク震える。
兎に角、人前に出るのは好きではない。
 
余興で後輩数人と「葉っぱ隊」を踊ることになっていたが、
僕が猛反対してお流れになった。
僕は何も心配せずに、「おめでとうございます。お幸せに」と繰り返し言えばいいはずだった。
 
だった。
 
「さて、只今より余興に参りたいと思います。歌でも踊りでも漫才でも!
我こそはと思う方はこちらまでお越し下さいませ!」
 
余興。僕は余興とかそういう類のものは好きではない。
例えば「のど自慢」
どういうメカニズムかわからないけれど、ああいうのを見ると全身に鳥肌が立つのだ。
 
あぁ。早くこの時間が過ぎてくれないかしら。
 
・・・
 
・・・
 
気が付けば、僕はステージに立っていた。
「それでは歌っていただきましょう!」
はめられたのだ。先輩と後輩に。僕は引きずられるようにステージまで連行された。
 
辺りが静まり返る。
 
手拍子が聞こえる。
 
やがてその手拍子は式場全体に響きわたる。
 
大喝采。
 
テーブルに戻り、知らない人達から褒められる。
「ありがとうございます。いえいえ、そんな。ありがとうございます。いえいえ、そんな」
あぁ早く式が終わってくれないかしら。
 
1時間経過。
 
「さぁ!これで最後の余興となりました。なんと新郎新婦と会場の皆さんからのアンコールでございます!
○○さんっ!ステージへどうぞ!」
 
僕だ。
 
今絶対僕の名前を言った。
 
先ほど歌った曲のイントロが流れ出す。嫌だ嫌だと嘆いたって、
みんな私を見つめている。もはやここには味方はいない。数の暴力に圧倒される。
僕は今食後に出されたアイスクリームを食べてるんだ!と叫んでみたって誰も同情はしてくれないだろう。
心の中で不条理だ!と嘆いてみるが右手にはしっかりとマイクを渡される。
 
歌い終わり、足早に自分の席へ戻る。
しらないオバサン達がティッシュにお金を包んで僕に渡す。
 
ティッシュにお金を包んで僕に渡す。
 
ティッシュにお金を包んで僕に渡す。
 
・・・
 
僕は人前に出るのは嫌いだ。
 
例えポケットの中が千円札や五千円札とティッシュでいっぱいになっても。

-->
翌日 / 目次 / 先日