2001年10月11日(木)  【さ】 30分テープ
彼女が何度も「ねぇ、愛してるって言って」と言うので、
最初はそう言われる度に心を込めた振りをして「愛してる」と言っていたけど、
1日に何回も訊ねられるので、―――電話の会話中の大半がその言葉で占められるようになったので、
なんだか馬鹿らしくなって、
「ねぇ、愛してるって言って」
「なるほど」
なんて時には答えたりして、ちょっとした混乱を招くのだが、
  
あらゆる問題にはあらゆる対策が必要なように、
僕もこの件に関して1つの解決策を考えた。
  
30分テープを買ってきて「愛してる」と録音してピンクのリボンを巻いて彼女にプレゼントした。
  
彼女は「これで多い日も安心だわ!」ととても喜んで、
ガラスの靴を持つようにそっと胸に抱えて持って帰った。
  
昨日は期待の星になりそこねて、少々疲れてしまったので今日は早めに寝ようと思った午後11時、
部屋の電話がなった。
あまりにもけたたましく鳴り響くので、ベルが鳴る度に受話器が宙に上がって揺れていた。
  
「いったいなんなのよ!」彼女からだ。ひどく怒っている。
「いったいどうしたっていうんだ」僕は冷静に応える。
「テープ!あのテープ!愛してるって74回しか言ってないじゃないのよ!」
「うん。たしかに74回愛してるって言ったはずだよ」
「どうして74回なのよ!バカ!バカチン!」 バ…バカチン!?
「そりゃそうだよ。なんてったって僕は70回分しか君を愛してると思っていない」
「まぁ呆れた!70回分しか愛してないだなんて!じゃぁあとの4回はなんなのよ!」
「おまけ」
「・・・何?聞こえないっ!」
「なるほど」
「何納得してんのよ!聞こえないって言ってるでしょ!」
彼女の受話器の向こうから僕の声で「愛してる・愛してる・愛してる・・・」とお経のように聞こえていた。
  
  
  
永遠の恋なんて存在しない。それは常に期限付きなのだ。
始まりがあって終わりがある。幕が開いて幕が閉じる。入り口があって出口がある。
機関車はもうもうと煙を吐きながら、時には赤く燃え上がる石炭を放り投げて速度を早めながら
プロセスという線路を通って、終着駅へと向かう。
  
期限付きなんだ。永遠なんて存在しない。早かれ遅かれ終着駅はたしかに存在するのだ。
  
僕の場合、だいたいそれが30分テープで70回なのだ。
あとの4回はおまけ。

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