2001年08月13日(月)  刻印。
万策尽き果て、理由も無くなり、軌道修正を余儀なくされた僕は、
ようやく緩やかな気流を発見して、快適なフライトが再び始まろうとしていた。
   
が、
  
やはり、快適な空の旅は退屈なのか、いつの間にか乱気流へと突入している自分に気付く。
  
南米にある小さな鳥がいる。
安息の地を求め、羽根を休め、ハリケーンが見えると両手を挙げて喜び、
突風に身を委ねて、小石に当たり、木の葉のように舞い、
傷だらけになって、地面へ叩き落とされる。
そして、再び安息の地を求め、羽根を休め、また悲劇が繰り返される。
  
「自虐的」
 
19歳の頃、半同棲している彼女がいた。
彼女は時々、僕の右腕を長い時間、強くつまむ癖を持っていた。
    
無表情で、僕の目を見つめ、力のある限り、つまんでいる手を震わせて、
僕の右腕を強く、強くつまむのが癖だった。
  
そこには、愛情も、悲哀も、憎悪も感じられなかった。
ただそこには「痛み」という直接的な感覚だけがいつまでも残った。
彼女はその行為によって一体何を求めていたか今でもわからない。
しかし、僕は彼女の気が済むまで、無表情でその痛みに耐えた。
  
彼女はそのつまむ行為を終えると、
キスをすることもあったし、トイレに行くこともあったし、
何事もなかったようにそのままテレビを見ていることもあった。
  
今でも僕の右腕には、当時の名残が、
彼女のあらゆる感情を集約した刻印のごとくたたずんでいる。
  
  
   
自虐について書きたかったのだが、これは正確な意味での自虐ではい。
他人の意思を借りた自虐と表したほうが適切だろう。
  
僕は今でも時々、あの6畳1間で行われた、あの空虚な「痛み」を思い出す。
そして、あのあらゆる感情が消えた彼女の顔を思い出す。
みんな救いを求めていた。

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