2001年05月04日(金)  5月の自転車屋。
自転車がパンクしたままだったので近所の自転車屋へ修理へ行く。
近所といってもその自転車屋に行くのは初めての事。街角の小さな自転車屋。
意識して見なければそこが自転車屋と言うことがわからない。
あぁ、そういえばあそこに自転車屋があったなぁ。という感じ。

自転車を売ろうという気迫がまったく感じられない店内。何の規則性もなく、ただ漠然的に自転車が並べてある。
外は5月とは思えない暑さ。シャツの袖で汗を拭く。
店内は自転車屋とは思えない暑さ。もっとも自転車屋は一貫して涼しいとは限らないのだが。

「すみませ〜ん。パンクしたんですけど」

予想どおり返事は帰ってこない。もとから人の気配などしないのだ。
無人の道路で「こんにちわ」と言ってるようなものだ。

もう一回、呼んで返事が帰ってこなかったら帰ろうと思ったそのとき、入り口から買い物袋をぶらさげたお婆さんが現れる。
そのお婆さん、無言で店内に入っていき、そのまま奥の方へ行って消えてしまった。
しばらくそのまま立って待ってみる。それにしても今日は暑い。

「こんにちわ」

お婆さんが再び現れる。ここの店主の奥さんなのだろう。「自転車がパンクしたんです」

「持ってきなさい」

どこかの山中で弟子に助言する仙人のように小さな声で呟く。
とにかく言われた通り、自転車を店内に持ってくる。

「あぁ、パンクしてる」

さっきから言ってるじゃないか、という言葉を胸の奥で押させる。「ちょっと待ってなさい」
店主を呼んでくるのかと思いきや、お婆さん、パンク修理を始める。しかもかなり手際が良い。
「前のタイヤの空気も入れて欲しいのですけど」
修理中は私の言葉はことごとくかき消される。お婆さんは無心でパンク修理を続ける。

10分程で修理が終わる。きっとこのお婆さんは昔、すごい自転車職人だったに違いない。
「前のタイヤも空気入れとこうかねぇ」
さっき僕が言ったじゃないか。

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