2001年04月06日(金)  ゴキブリ論(後編)
「僕らは至極当然の事をしているだけなんだ。残飯だってお腹が空くから漁るし、こんな薄っぺらな羽じゃ鳥みたいに空飛べないし、色だって生まれた時からこの色なんだ。
人間みたいに化粧して白くなったり黒くなったりできるわけじゃないんだ」
「それはわかる」
「全然わかってないじゃないか。じゃ何で人間は当たり前の行動をしてる僕たちを殺そうとするんだ」
「だから君達が害虫って決められてるからなんだ」
「これじゃ話が水平線じゃないか」
「平行線だよ」

僕は冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
ゴキブリは冷蔵庫の下からテーブルの下へ移動した。

「もう、眠い」
「まだ話の途中だよ」
「眠い」
「人間ってわがままだね」
「一部に限らずみんなわがままだよ」
「まだ言いたいこといっぱいあるのに」
「そういうのに限って話の中身が無かったりする」
「人間って傲慢だね」
「そう言われて初めて気付く場合が多い」
「人間って鈍感だね」
「敏感だとこの社会では生きていけないからね」
「人間って酒臭いよね」
「だいたいみんな何かに酔っている」
「人間って夜の歯磨きに時間かけるよね」
「それは僕のことだろ」
「人間って何で朝は不機嫌で物に当たったりするんだろうね」
「また僕の事を言ってる」
「人間って何でいろんな女の人を家に呼ぶんだろ・・・」

僕は雑誌を丸める。

「呼んでない。しかもそれも僕の事っぽいじゃないか。どこで誰が聞いてるかわかんないからそういう事は言うもんじゃない」
「壁に耳あり」
「昨日はメアリー」
「はははっ。いくらなんでも外国人の女性を呼べる器じゃないでしょ、あなた」
「・・・・・・」
「あら黙っちゃって。気ぃ悪くしたかな」
「もう寝る」
「いじけちゃったのね。人間って傷つきやすいのね」
「傷ついていずれ擦り減っていく。では僕は本当に寝る」
「じゃ、僕も寝床に帰る。今日は楽しかったよ。あ。動けない!!何!?この足についてるネバネバは!?」
「ごきぶりホイホイ」
「これが兄さんもひっかかったごきぶりホイホイ!?話しながら僕をここに誘導してたんだ!!」
「そういうこと」
「人間って非情だね」
「この世で一番のね」

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