2001年04月04日(水)  ゴキブリ論(前編)
今日、台所にゴキブリが現れた。

僕はゴキブリが因数分解よりもみのもんたよりも嫌いだ。

「わ。人間だ」
冷蔵庫の下から現れたゴキブリは多少面食らった様子でそう言った。
「わ。ゴキブリだ」
呑気に今度の休日の事を考えながら熱すぎるコーヒーをちびちび飲んでいた私はそう言った。

「こんばんわ。人間さん」
「さようならゴキブリさん」

私はおもむろに丸めた雑誌を振り落とす。
ゴキブリは間一髪振り落とされた雑誌からその不安定に動く羽を羽ばたかせて逃れる。

「ちょっと落ち着いてよ人間さん。ボクはまだ何にもしてないじゃないか」
「落ち着いていられるか。君がソワソワ動くたびに僕の心もソワソワするんだ」
「癒し系にはなれないみたいね」
「当たり前だろ。ゴキブリに癒しなんてだれが求めるんだ」
「何でボクはこんなに人間に嫌われるんだろ」
「そりゃ、その・・・あれだよ・・・」

言葉が詰まる。僕は面と向かって真実を言えない悪い癖がある。
それがたとえゴキブリであっても。

「はっきり言ってよ。ボクほんとにわからないんだ。人間はボクたちの姿を見るたびに目の色を変えて雑誌を丸めたり息が苦しくなるスプレーを取り出したり体が動かなくなる液体をかけたりするんだ」
ゴキブリは小さな目から小さな涙を流している。小さな前足で小さな涙を拭っている。

「ゴメン。さっきは何も言わずに雑誌で叩こうとしたことは謝るよ、」
相手の理由も聞かずに対処した僕が悪かったのかもしれない。
「だけど、キミのどこが悪いってそりゃぁ一般論から言うと、すばしっこいのがイヤだとか、色がイヤだとか、予想できない方向に飛ぶだとか、残飯に群がるのがイヤだとか数え上げればきりがないよ」
「一般論?」
「そう、一般論。いろんな人たちがだいたい口を揃えて言う毒のない意見のこと」
「あなたも一般論?」
「いや、僕はちょっと違うんだ」

          ■□■□つづく■□■□

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