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タムセレクト(前半):Bob Dylan 

Bob Dylanで今、一番好きなアルバム4枚

「BLOOD ON THE TRACKS」
「UNDER THE RED SKY」
「INFIDELS」
「OH MERCY」









この4枚の中から曲を選びタムセレクトBOB DYLANのBEST盤を作った

それぞれの曲の和訳の詞がわかり
曲順毎に歌詞を並べてみたら
一体どんな詩世界が繋がっているのだろうか気になってしまい
自分が理解を深めたい意味で、曲順に準じて歌詞を書いてみよう

こりゃ大変な作業になりそうだが、興味の方が先だからやろう
全部書き終わった後、タムセレクトを聴きながら読み返すのを楽しみに


【 Idiot Wind:アルバム「BLOOD ON THE TRACKS」より 】

邦題:愚かな風  対訳:中川五郎


誰か僕をハメた奴がいる、マスコミにデマを流しているんだ
誰がやっているにせよもうやめてくれないかな
でもいつになったら止めてくれるのか僕は見当をつけるだけ
奴らの話では、僕はグレイという男を撃ち殺し
そいつの女房をイタリーに連れて行ったそうだ
彼女は百万ドルもの遺産を相続し、死んだら僕らのものになった
ついていたらそういうものさ

みんながしょっちゅう僕に会いにくるけど
どう振る舞っていいのかまるでわかっちゃいないんだ
頭の中は大げさなアイデアやイメージ、それに歪められた事実でいっぱい
君ですらそうさ、本当のところはどうだったのって昨日君は僕に
問い詰めずにいられなかったじゃないか
僕には信じられなかったよ、こんなにも長い年月、一緒にいたのに
みんなと同じように僕のことが何もわかっちゃいなかっただなんて
優しき奥方よ

愚か者の風、君が口を開けるたびに吹きおこり
裏通りを南に向かって吹き抜けていく
愚か者の風、君が歯をがたがた言わせるたびに吹き起こる
君は愚かだよ
息の仕方を今も知っているなんてびっくりだよ

占い師のもとに駆け込んだら
雷が落ちるかもしれないから気をつけろと言われたよ
あまりにも長いあ間、安らぎや穏やかさとは無縁だったから
それがどんなものなのか忘れてしまったよ
交差点には孤立無援の兵士がいて、有蓋貨物列車の扉からは煙が流れ出ている
君にはわかるはずもなかったし、ありえないことだと思っていたけど
最後の最後に戦争に勝利したのは彼だった
あらゆる負け戦を重ねた後でね

僕は道端で目覚め、いろんなことが時にどうなっているのか
白日夢に映っていた君の栗毛の雌馬の光景が僕の頭の中をすごい勢いで
駆け抜けて行き、僕の目を眩ませる
君は僕の最愛の人たちを傷つけ、真実を嘘で覆い隠してしまう
いつか君はドブにはまり、目の回りをハエがブンブン飛び回り
君の鞄は血まみれになっていることだろう

愚か者の風、君の墓に生けられた花の間を吹き抜け
君の部屋のカーテンを揺らしていく
愚か者の風、君が歯をがたがた言わせるたびに吹き起こる
君は阿呆だよ
息の仕方を今も知っているなんてびっくりだよ

僕らを地上に引き付けるのは引力で、僕らの中を引き裂いたのは運命だった
黄身は僕の檻の中のライオンを手なずけたけど
それだけじゃ僕を心変わりさせることはできなかった
今あらゆることが少し混乱していて、実際の話、車輪も止まってしまっている
良いことは悪くなり、悪いことは良くなり
てっぺんに着いたら君にも分かることだろう
君はどん底にいるのだと

儀式の場で僕は気づいたよ
不正な手段を講じたせいで君は結局何も見えなくなってしまったんだってね
僕は君の顔を思い出せない
君の言うことは変わってしまったし、君はもう僕と目を合わそうとしない
聖職者たちは安息日に黒服を着て、建物が燃えていても無表情のまま座っていた
僕はイトスギの木のそばの踏み板の上で君を待っていたんだ
春がゆっくりと秋になっていくまでの間

愚か者の風、僕の頭の回りをグルグルと吹きまくる
グランド・クーリー・ダムから連邦議会議事堂まで
愚か者の風、君が歯をがたがた言わせるたびに吹き起こる
君は阿呆だよ
息の仕方を今も知っているなんてびっくりだよ

僕はもう君を感じられない、君が読んだ本にすら触れられない
君のドアを這うようにゆっくりと通り抜けるたびに
僕はずっと思い続けていたんだ
僕が別の誰かだったらいいのにと
ハイウェイの上、線路の上、忘我の境へと続く道の上、
星空のもと僕は君を追いかけた
君の思い出と熱く燃え上がる君の栄光に
せき立てられながら

最後の最後に僕は裏切られ、今ようやく自由の身になった
君と僕を分ける境界線の上で吠えている獣に僕は別れのキスをした
君は一生わかるまい、僕が心に負った傷も僕が克服した苦痛も
僕だって同じように君のことは決してわかることはないだろう
君の神聖さや君のいう愛のことは
本当に申し訳ない気持ちに僕はさせられるよ

愚か者の風、君のコートのボタンの間を吹き抜け
僕らが書いた手紙の束の中を吹き抜けていく
愚か者の風、僕らの棚に積もった埃の上を抜けていく
僕らは痴れ者だよ
自分たちが自活できているなんてびっくりだね


【 Handy Dandy:アルバム「UNDER THE RED SKY」より 】

邦題:ハンディ・ダンディ  対訳:中川五郎


ハンディ・ダンディ、彼は論争の的
世界を旅してまた戻ってきた
月明かりに潜む何かが今も彼をせき立てる
ハンディ・ダンディ、砂糖と砂糖菓子みたい

ハンディ・ダンディ、自分の骨が全部折れていたとしても
彼はきっと認めようとはしないはず
女性ばかりのオーケストラを率いて
彼が「バンド演奏開始」といえば、みんなが音を出す
ハンディ・ダンディ、ハンディ・ダンディ

君が言う「あなたは何でできているの?」
彼が答える「もう1回言ってくれない?」
君はこう言うだろう「何か怖いものはある?」
彼はこう答えるだろう「何も!生きていようが死んでいようが怖いものは何もないよ」

ハンディ・ダンディ、手にはステッキ、ポケットには金が唸っている
彼が言う「ダーリン、本当のことを教えてくれ、僕には時間がどれほどあるの?」
彼女が答える「この世の時間は全部あなたのものよ、ハニー」
ハンディ・ダンディ

あの澄んだ木の泉は彼のもの
あのすべすべとした絹のような肌は彼のもの
あの山の要塞は彼のもの
ドアもなければ、窓もなく、侵入できる泥棒は一人もいない

ハンディ・ダンディ、庭でナンシーという名前の女の子と一緒に
物憂げな気分で座っている
彼が口を開く「銃が欲しいの?1挺あげるよ」
彼女が答える「あんた何をバカなこと言ってんの」
ハンディ・ダンディ、砂糖と砂糖菓子みたい
ハンディ・ダンディ、彼にブランデーのお代わりを

ハンディ・ダンディ、片手に花のバスケット
もう一つの手には悲しみがたっぷりと詰まった鞄
彼は飲み物を飲み終え、テーブルから立ち上がり、こう言う
「よしみんな、また明日会おうよ」
ハンディ・ダンディ、砂糖か砂糖菓子かのあてっこみたい
ハンディ・ダンディ、どっちの手が砂糖でどっちの手が砂糖菓子か
あてっこさせているみたい


【 Union Sundown:アルバム「INFIDELS」より 】

邦題:アメリカの日没  参考:ボブ・ディラン全詩302編、廃墟の街のレコード店


おれの靴はシンガポール製
懐中電灯は台湾製
テーブルクロスはマレーシア製
ベルトのバックルはアマゾン産
おれが着てるこのシャツはフィリピン製で
乗ってる車はシボレー
アルゼンチンで組み立てられた
1日30セントの労働者によって

さあアメリカの日没だ
メイドインUSA
確かにいいアイデアだった
強欲が入り込むまではな

それでこのシルクのドレスは香港製
そして真珠は日本産
犬の首輪はインド製
植木鉢はパキスタン製
すべての家具はいうには「メイドインブラジル」
そこでは女が奴隷のようだろう
1日30セントを12人の家族のため持ち帰る
彼女には大金だ

さあアメリカの日没だ
メイドインUSA
確かにいいアイデアだった
強欲が入り込むまではな

それで仕事がないってみんな愚痴をいう
おれはいう「なんでそんなこといえる」
アメリカで作られたものは何もないのに
ここではもう何も作られてないんだ
資本主義は法律をも上回る
その原理は「売れないものはゴミ」だ
うちで作るとコストが高いだと
ならどっか安いとこで作ればいいってね

さあアメリカの日没だ
メイドインUSA
確かにいいアイデアだった
強欲が入り込むまではな

きみがやっていた仕事はね
エルサルバドルの誰かに回ったよ
「アメリカ」は「大企業」だ、友よ
そしてやつらは恐竜のようにでかけていく
昔はカンザス州で穀物を育てたけど
今では月で栽培してそのまま食うらしい
家庭菜園さえもが違法になるような
そんな日がやってくるのがね

さあアメリカの日没だ
メイドインUSA
確かにいいアイデアだった
強欲が入り込むまではな

民主主義が世界を支配しているわけじゃない
よく頭に入れておいたほうがいい
この世界を支配しているのは、暴力
でもおおっぴらにはいわないほうがいいよ
ブロードウェイからミルキーウェイまで
実に広大なテリトリーだ
人間はできることはなんだってやるよ
腹を空かした口に餌を与えるためならな

さあアメリカの日没だ
メイドインUSA
確かにいいアイデアだった
強欲が入り込むまではな


【 Under The Red Sky:アルバム「UNDER THE RED SKY」より 】

邦題:赤い空の下  参考:ボブ・ディラン全詩302編、廃墟の街のレコード店


小さな少年と小さな少女がいた
ふたりは赤い空の下
路地で暮らしていた
小さな少年と小さな少女がいた
ふたりは赤い空の下
路地で暮らしていた

年老いた男が月に住んでいた
ある夏の日に彼はやってきて通り過ぎる
年老いた男が月に住んでいた
そしてある日彼はやってきては通り過ぎる

いつの日か小さな少女よ
君のためすべてが新しくなるだろう
いつの日か小さな少女よ
君の靴のように大きなダイヤを手にするだろう

風よ低く吹け風よ高く吹け
小さい少年と少女はともにパイの中で焼かれてしまった
風よ低く吹け風よ高く吹け
ある日に小さい少年と少女は二人ともパイの中で焼かれてしまった

これは王国への鍵そしてここがその街だ
こいつが君を先導する盲目の馬だ
鳥よ歌え鳥よ飛べ
ある日月の男は家に帰りそして川は枯れた
鳥よ歌え鳥よ飛べ
月の男は家に帰りそして川は干上がった


【 Jokerman:アルバム「INFIDELS」より 】

邦題:ジョーカーマン  参考:ボブ・ディラン全詩302編、廃墟の街のレコード店


水の上でパンを投げ与える
鉄の頭の形をした偶像の目が光る
遠くの船は霧の中
両手に蛇を掴みハリケーンが吹き荒れる中
君は生まれた
自由が曲がり角まできてるけど
真実がそんなにも遠いのなら
なんの役に立つんだろう

ジョーカーマンが踊る
ナイチンゲールの歌に合わせて
月明かりの中で鳥は高く飛ぶ
ああ、ジョーカーマン

さっさと日は沈み
誰にも別れを告げずに君は立ち上がる
天使が恐れ踏み込まぬ場所へも馬鹿は飛び込む
未来は誰にも恐ろしいけれど気にも留めてないみたい
また皮を脱ぎ捨てて迫害者の一歩先を行く

ジョーカーマンが踊る
ナイチンゲールの歌に合わせて
月明かりの中で鳥は高く飛ぶ
ああ、ジョーカーマン

君は山だ君は雲の上を歩く
群衆を操り、夢をねじ曲げる
ソドムとゴモラへ行っても気にすることない
誰も君の妹となんて結婚したくないし
殉教者の友達
恥ずべき女の友達
燃える炉をのぞきこめば名前もなき富豪が見える

ジョーカーマンが踊る
ナイチンゲールの歌に合わせて
月明かりの中で鳥は高く飛ぶ
ああ、ジョーカーマン

レビ記と申命記とジャングルと海の掟だけが先生で
乳白色の馬上のたそがれの靄の中
ミケランジェロは君の姿を彫ることもできたかも
騒がしい場所を離れて野原で休み
星たちの側で寝ぼけてる君の顔を子犬が舐める

ジョーカーマンが踊る
ナイチンゲールの歌に合わせて
月明かりの中で鳥は高く飛ぶ
ああ、ジョーカーマン

ライフルを持った男は病人や足の悪いやつをつけ狙う
宣教師も同じ
誰が先かは不確かだ
警棒、放水機、催涙弾と南京錠
火炎瓶や石がどのカーテンの裏にも隠されてる
腐った裁判官が自分の網にかかって死んでいる
夜が入り込むのも時間の問題

ジョーカーマンが踊る
ナイチンゲールの歌に合わせて
月明かりの中で鳥は高く飛ぶ
ああ、ジョーカーマン

ぼんやりした世界だ空はつるつるした灰色で
女が今日ひとりの王子を産んで緋色の服を着せた
やつは司祭をポケットに入れ刃に熱を入れ
母のない子を通りから閉め出して売春婦の前へと導く

ジョーカーマンが踊る
ナイチンゲールの歌に合わせて
月明かりの中で鳥は高く飛ぶ
ああ、ジョーカーマン


【 Man Of Peace:アルバム「INFIDELS」より 】

邦題:マン・オブ・ピース  対訳:三浦 久


窓の外を見てごらん、面白いものが見えるよ
バンドは「ディクシー」をやっている
男が手を伸ばしている
ヒットラーかもしれないし
この地の僕しかもしれない
時には悪魔は平和の人としてやってくる

彼な話が巧みで、舌が滑らか
愛の歌は全て知っている
善意の背後には悪意があるかもしれないし
両手は油で汚れているかもしれない
時には悪魔は平和の人としてやってくる

彼ははじめ陰に隠れているが、そのうち前に出てくる
両目は兎狩りをするときのように抜け目ない
誰にも彼の正体はわからない
警察本部長にだってわからない
時には悪魔は平和の人としてやってくる

暗闇の中にいて、日の光を一目見たいと思う時
彼はあなたを捕まえる
苦しみが1トンもあるように感じる時
彼はあなたを捕まえる
彼はすぐ横に立っているかもしれないし
全く目立たない人かもしれない
時には悪魔は平和の人としてやってくる

彼は魅力的かもしれないし、退屈な男かもしれない
あなたの頭蓋骨の樽に乗ってナイアガラの滝を降りることが
できるかもかもしれない
何かが煮える匂いがする
祝宴があるに違いない
時には悪魔は平和の人としてやってくる

彼は偉大な人道主義者、彼は偉大な博愛主義者
あなたのどこに触れ、どんなふうにキスすればいいか知っている
彼はあなたを抱きしめる
あなたは野獣のやわからな感触を感じる
時には悪魔は平和の人としてやってくる

今夜はハウリン・ウルフは吠え
キング蛇が這うだろう
千年も経ち続けた木が突然倒れるだろう
結婚したいなら、ただちにするがいい
明日、全ては活動を止めるだろう
時には悪魔は平和の人としてやってくる

どこかで母親が泣いている、青い目をした息子のために
彼女の手には、小さな白い鞄と小さな壊れたおもちゃ
彼は星を追いかけている
三人の男が東方から追ってきたあの同じ星を
時には悪魔は平和の人としてやってくる


【 Man in the Long Black Coat:アルバム「OH MERCY」より 】

邦題:黒いロングコートの男  参考:ボブ・ディラン全詩302編、廃墟の街のレコード店


コオロギが鳴いている
水位が高い
窓は大きく開いている
アフリカの木々がハリケーンの風を受けて後ろへとしなる
ひと言のさよならもなく書き置きさえなく
彼女は去ってしまった
黒いロングコートの男と

そいつがうろついてるのを誰かが目にした
町外れの古いダンスホールで
彼女が呼び止めた時に男は目を覗き込んだ
踊りませんかと尋ねた時に
顔にマスクのようなものを着けていた
誰かがいった、そいつは聖書を引用するんだと
埃のついた男がいた
黒いロングコートを着ていた

牧師が語っていた
そいつが伝えた説教だ
彼はいった
人間の良心はすべて卑劣で堕落していると
自制心に頼り従うことはできない
満ち足りたままのあなたであるべき時に
飲み下すことは容易ではない
それは喉につかえる
彼女は心を奪われた
黒いロングコートをまとっていた男に

黒いロングコートをまとっていた
時にそれは真実だ
あなたがそのように思えるのなら
だが人は生か死かではない
人はただ漂うだけ
彼女は行ってしまった
黒いロングコートの男と

水上に煙が立ち込めている
6月からずっとそうだ
木の幹は根こそぎになる
そびえ立つ三日月型の月の下
鼓動と振動と
そして騒めくエネルギーを感じろ
誰かが向こうで死んだ馬に鞭を打つ
彼女は決して語らず
書き置きもなく
彼女は去っていった
黒いロングコートの男と


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文字数制限オーバーで
続きは
次の日へ(笑)


2019年08月12日(月)

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