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ブルースの巨人たち エルモア・ジェイムス編 - 2004年08月01日(日)

昨年から今年にかけて、
ブルースという種類の音楽が流行の兆しを見せています。
クラプトンやエアロスミスによるブルースのカバーアルバムはもとより、
8月末には映画「THE BLUES」が公開。
関連書籍やCDが発売されるなど、
まさしく今年はブルース・イヤーと言った様相を呈してます。

でもなー、ブルースって結局どこまで行っても、
黒人奴隷たちの魂の叫び的な捕らえ方をされちゃって、
小難しいジャンルに押し込められちゃってるような気がするんです。
延々3コードな音楽だから、
聞く側にある程度の忍耐力を求めるのも事実だし。
だけど、すごくいいんですよ。特に歌詞とか。

ブルースの歌詞世界は、お笑いで言うところの、
「それってある、ある」というのが基本です。
もちろん、日米、今昔でディテールの違いはあれど、
基本は「ある、ある」。
「仕事しんどいなー」とか「一発やりてぇなー」とか、
そんなのばっか。
これが黒人のオッサンのダミ声に乗って
歌われると、なんかカッチョよく聞こえてくるから不思議です。
まあ、ようは雰囲気モノなんですがね。

オイラがブルースの中で一番好きなのが、
エルモア・ジェイムスで、
もうとっくの昔にくたばってる人なんですけど、
歌とかギターとかすげえ上手いの。
代表曲「Dust My Broom」とかよくコピったもんですよ。
で、最近、その曲の歌詞と真剣に向き合う機会があって、
20歳の頃に聞いてたのと印象違って、やけに染みるんですよね。
では、対訳を。ちょいと意訳も入ってますが。

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 Dust My Broom
 
 朝起きたら、
 この部屋を出てこう。
 朝早く起きて、
 この家とおさらばするんだ。
 あんなに愛してやったのに、
 俺のダチをこの部屋に連れこむだなんて!
 
 でも、手紙は書くよ。
 知ってる町全部に電話してみるさ。
 手紙も書くよ。
 お前を探して、心当たりのある町に電話もする。
 もしウエスト・ヘレナにいなかったら、
 イースト・モンローあたりで探してみるよ。

 だけど、あの女は最低だね。
 町で会う男みんなと寝るなんて。
 ああ、最低の女さ。
 会う男みんなを欲しがるなんて。
 こんなヤリマン、
 路上でのたれ死ぬに決まってるさ!

 もう、家に帰ろう。
 故郷に帰ろうと思うんだ。
 ここでは散々な目にあったけど、
 あっちでは、そんなことさせやしねえ!
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いやー、わかるなあ、この気持ち。
オレもちょうど引越し先が決まりまして、
結婚とか離婚とか微妙な思い出が詰まったこの部屋から
やっと抜け出せるって感じが強くて。
同時に「女なんかクソくらえ!」って思いもあるし、
でも「やっぱ寂しいなぁ、ヤリたいなぁ」みたいな?
そんで、もう何もかも面倒だ、実家帰ろ!
なんて思うこともあるわけでして。
いやー、見事にシンクロします。
「ある、ある」です。

もともと「Dust My Broom」はエルモアの師匠である、
ロバート・ジョンソンの曲でした。
これがまたすごくせつない歌でね。
疲れたので実家帰ります、みたいな印象強くて、
ああ、コイツ、本当に凹んでるんだなぁ、って感じなのね。
それが気に食わなかったのかなんなのかわからないけど、
エルモアさんは晩年、師匠が作ったこの歌詞に手を入れます。
改造したのは最後の一節。
「家に帰る」の部分がこうなりました。

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 ああ、わかってるさ。
 俺の人生はもう長くはない。
 なんとなくわかるんだ。
 俺の命がもう長くないってのが。
 あの女と別れるのはやめよう。
 幸せな家を壊したくないんだ。

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ね、どうよ。
こっちのほうが完成されてると思わない?
「あんな女いらねえ」「でも手紙は書くよ」
「あんな女サイテー」「でもアイツと添い遂げたいんだよね」
という反復が見事すぎ。
もしかしたら歌の中の彼と彼女は、
別れたり、モトサヤに戻ったりしながら
なんとかやっていくんじゃねえか?
と思わせるようなオチになってるんです。
もちろん、エルモアさんに、
そんな女がいたかどうかは知らないよ。
でも彼が心臓を患って死期を悟っていたのは、
本当らしいんだよね。

自分の死期を悟ったとき、
エルモアさんは歌の中の主人公に、
救いを与えたかったんじゃないかな。
オレはまだ死にたくないんだよ、
バカヤローっていう意味も含めて。
この火事場のくそ力的マインドがなかったら、
「Dust My Broom」はこれほどの名曲に
ならなかったのではないか?と。

いやー、本当にいい歌だ。


...




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