 |
 |
■■■
■■
■ 続・泣き笑い。
その日はどんよりとした朝だった。 彼にはその日、10時50分からテストが待っていた。 いつもより30分早めに起きた彼は、いつになく気分がよかった。
まだこの後に起こることなど、知るよしもなく。
いつも通り朝食を済ませ、ふとTVの占いに目をやると。 『今日の最下位はかに座さん!』 彼は、かに座だった。 「ま、まぁなんてことないさ。」 と思い、見続けてみると。 「今日は運に見放されることが連鎖反応のように起きてしまうかもー。泥沼には気をつけて!」
どうやって気をつけろというのだ。高島アナ。
まぁいいさ。 雨の降らないうちに駅に向かおうと思い、彼は玄関を出る。 そして、最近調子の悪い原付にまたがろうとした時。
ざー。(どしゃ降り)
「さっそく来た、泥沼が。」と軽く彼はパニックになった。 急いで玄関前に戻り、雨合羽をかぶる。 このアクシデントで駅に向かうのがちょっと遅れた。
そしてあまり効果のない雨合羽に包まれた彼は、結局ずぶぬれで駅周辺についた。 いそいで原付を降り、合羽をしまおうと脱ぎ始めた時。 …。 雨音は、ぴたっと止んだ。 道行く人は、いっせいに傘をたたみ始めた。 ただ、ずぶぬれで歩く男一匹。 その手に持たれた傘には、ほとんど水滴などついていなかった。
嫌な予感を振り切るように早足で駅へと向かう彼。 だが数分も立たないうちに、その彼の足取りに異変が。 「…っ。」 突如、彼の下腹部を襲う腹痛が。 案の定、さらに電車に乗る時間は後へと延ばされるのであった。
何とか電車に乗れた彼はしばし安堵の時を迎えていた。 そして京阪・環状線・阪急と乗り継ぎ、最後の乗換駅に到着。 すっかり朝の占いの事など忘れかけていた。 ここで特急から普通に乗り換えれば、もう六甲。 大学まであとすこしだ。 と、六甲に着いた彼を待ち受けていた次なる試練。 彼の両手から、あるものが消えていた。 そう、傘だ。 さっきまであったはずの傘がない。
六甲には、止んでいたはずの雨が無常にも降り注いでいた。
結局傘は一度も開かれることなく、彼はぬれたまま歩き始めた。 15分間どれだけ腕を振って歩けど、彼の心も体も冷えていくのだった。
なんとか教室についた彼は、あと2分でテストが始まるという現実に直面する。 そこに1人の知り合いを発見。 3冊持っていた本のうち一冊を借りることに成功し、少し落ち着いた心持ちでテストに望むことができる。 …はずだった。 しかし昨日の日記にもあるように今回のテストはいつものものとは訳が違う。 「でも、こっちには本がある。」 と自分に言い聞かせる情けない彼の姿があった。 そうこうするうちにテストは始まった。
終了。
わずか5分にも満たない幕切れだった。
借りた本など何の役にも立たなかった。 それよりもその知り合いの持っていた講義ノート(のコピー)が何よりも重要だったということに気づいたのは、肩を落とし教室を出る直前だった。
帰り際、不必要だった筆記用具をしまおうと彼はカバンに手を入れた。
痛。
右手の指先に走る鋭い痛み。 見ると、クリアファイルの角が右手中指の爪の間に刺さっていた。 みるみるうちに指先は赤く染まっていった。
しかしやせ我慢して、何気ないふりをして教室を後にし、彼は歩いた。 そう、予定外に時間があいたのだ。 しかし彼に降り続く雨をしのぐ術は無かった。
彼の体が乾くことは、夕方まで無かった。
こうして、彼にとってとても印象に残る2月の開始となったと同時に、毎朝何気なく見る占いの恐ろしさを実感する結果となった。
指先の傷に、2月の雨は染み渡った。
ほんだ
2004年02月02日(月)
|
|
 |