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窓のそと(Diary by 久野那美)
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おおみそか。 一日がとっても丁寧に消費されていく。 刻々と、たしかに変化していく「今」を日本中が固唾をのんで見守っている。 一年でいちばん、大切に使われる1440分。 大晦日の空気ってだいすき。 夜も更けてくると緊張はどんどん高まっていく。 カウントダウンがはじまると、心臓がどきどきしてくる。 59,58、57、あ・・・ 45、44、43、あー。うわーっ 35,34,33、え?え?え?ほんとに? 24、23,22、いいの?そうなの?え?? なんか泣きそうな気持ちになる。
10,9、8、7 あーっ、おねがい、やめてっ、いや、ちがう、やめないで・・ わけのわからない動揺と混乱。 6,5,4,3,2,1・・・あ・・。ああっっっ・・・。 思わず目をつぶる。
・・・0。 闇の中、新年がやってくる。 <おめでとーございまーすっ。> 日本中が、沸きかえる。 さっきまで静けさはどこへ? さっきまでの丁寧な空気はどこへ? すべてのベクトルは未来へ向いて。 とっても希望に満ちた瞬間・・・
それはたしかにそうなんだけど、 それはそれでたしかにそうなんだけど、 なんだか、説明のつかない寂しさが、 影も形もなくしたまま宙に浮いている。 どうすんの?これ? なんだっけ?これ・・ 誰も覚えてない。 新しい年の初め。
絶対に正しく感じることのできないなにか大切なことがおこってしまったような気がする。 いや、気がすることすらできないなにかが、すでに通り過ぎてしまったような気がする。 これからさき、二度と出会うことのないなにか。もう誰にも何の関係もなくなってしまったなにか・・・。
たとえば出産したときのお母さんてこんな気分だろうか、とふと思ったりする。
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