甘い秘密

2006年12月24日(日) マッチの香りに包まれて

低温蝋燭を使うはずだと思っていたのに
目の前のそれは市販の赤い蝋燭だった
いつかは体験するだろうと覚悟するつもりだったが
四度目の逢瀬で登場するとは予想外で息を呑んだ

『どうするんですか?』
恐る恐る聞いてみる

『決まってるだろう』
素気なく答えられる

『でも・・・』
伝えたい事は沢山あるはずなのに絶句する

今日は妙な縛り方をするなと感じたが
これが目的だったのかと納得した

ユラユラ揺れる炎に怯えてしまう

広げたシートにうつ伏せに寝かされ
手首と足首を宙で繋がれ目を閉じる

不安から石の塊と化した私に
A氏の一言が突き刺さる

『熱いぞ』

ポタリと垂れた一滴の蝋に
海老反りになって悲鳴をあげる
熱いと言葉にする余裕も無く叫ぶ

ゆっくりと落ちてくる熱い液に
いつまで続くか分からない折檻に
『ひぃぃん』『ひひん』
馬のように鳴くだけで精一杯


・・・嫌だ・・・

・・・辛い・・・

・・・苦しい・・・

・・・もうダメ・・・

・・・堪忍して・・・


でも彼がとても嬉しそう
今までで一番楽しそう
だから心の中で葛藤する


・・・楽しんで欲しい・・・

・・・でも辛い・・・

・・・満足してもらいたい・・・

・・・けどもう無理・・・

・・・あぁ・・・


『今日はこのくらいにしてやる』

一気に脱力しフロアに倒れこむ
本当はA氏の胸に飛び込んで抱きついて
声を上げてわんわん泣きじゃくりたい
けど甘えるのは恥ずかしい

『嫌いです!蝋燭は嫌い!』

シャワールームに駆け込み
貼りついた蝋を指で剥がしながら

不愉快にさせたのではないだろうか
怒らせてしまっただろうか
どんな顔して出て行けば良いのか

ぬるいシャワーの下で途方にくれた






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