華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年10月10日(木)

18歳。 『308号室』


本社近くに古い野球場がある。
今でも時折、高校野球の地方大会や草野球で賑わう。


その球場の脇には一本の道路がある。

南側にそびえる一塁側スタンドの高い壁がほぼ一日中日照を遮り、
正午以外はまともに日が当たらない。

そこは普通の健全な付き合いをする男女は決して訪れない、
待ち合わせの陰のメッカ。

その日、その時だけの逢瀬を楽しむ女を呼び出し、待つ男どもが集う場所。


その道にはテレクラや出会い系、
またはデリヘルやホテトルでの女を待つ男どもの自動車で、
多い時には10台以上が路上に並ぶ。

男どもは皆車内で、欲望で膨らんだ期待と股間を持て余しながら、
焦れつつ過ごしている。
その脇道を奥へ進むと三叉路があり、左へ行くとホテル街へと出る。

そういう意味でも男が欲情を果たしたい女を待つのに、
最も条件の良い場所なのだ。

地元民でも知る人ぞ知る場所。
その脇道には通称すら無い。




8月のとある金曜日の夜8時半。
俺はその脇道に車を停めていた。

そんな噂を聞いていた俺は、好奇心からその周囲の様子をまず観察していた。

まともな街灯すらないその脇道は、完全な都会の死角である。


その夜は10台近くの様々な乗用車が縦列で停車していた。

そして時折、場に不相応な高級車やガラスにフィルムを貼った怪しいワゴンが
通りかかっては縦列駐車の隙間に割り込み、女を降ろす。

その女を見定めた男は車の助手席のドアを開け、乗せると目的地へと
走り去っていく。


時には派手な化粧と衣装の中年女が古い型の軽四自動車で登場し、
路上駐車して男の車に乗り換えては、奥の三叉路を左に曲がって消えていく。


入れ替わり立ち代わりの活発な光景に、俺は半ば感心しつつ観察を続けていた。


先程コンビニで購入した夕刊のスポーツ新聞を広げ、デリヘルの三行広告を探す。
実はこの夜、俺はこの地区のデリヘルを利用するつもりでいた。


いくつかの店に電話をするものの、あまりに応対の好ましくない店が多い。
乱立するこの手の風俗店には、客商売という意識も薄いのだろうか。

店の受付の応対で、ある程度その店の営業姿勢が分かる。
いい加減な店では取り揃える女も大抵がいい加減で、高い利用料に釣り合わない。

客としても、店を見定める判断材料になる。

気に入らない店はこちらから切り、
また掛け直してしっかりと応対できる受付の店を探す。



暗闇の中、俺はある店をふと思い出した。

その店は素人専門店を看板にしているデリヘル『R』。
電話番の応対も丁寧で、印象に残っている。
そして前回紹介された娘もしっかりしていて、悪い娘ではなかった。


俺はその店を広告で探し、電話した。


 「ハイ、毎度ありがとうございます。『R』です」


俺は早速新人の女の子をオーダーする。


 「丁度、今日で二日目の新人の女の子がいますねぇ」
「いくつの子ですか?」

 「この子は・・・18・・・歳ですね」
「18?若いですねぇ・・・学生さん?」

 「いや、うちは女の子のプライベートはお答えしませんので」


俺もうっかりと聞いてしまったが、それ以上にしっかりとした店の方針だ。


 「その娘は多少人見知りしますが、外見は美人で文句なしですよ!」

受付は上手いトークで俺の欲情を焚き付けてくる。

しかし新聞広告ではその嬢の特徴はわからない。
いくら向こうが可愛いと勧めて来ても、俺が可愛いと思うかどうかは別問題だ。


 「うちはチェンジ・キャンセル無料なので、一度会ってみてください!」
「そうですか・・・?」

 「ええ、一切無料です。一度会ってから選んでもよろしいですよ!」



俺は嬢の年齢は気にしないが、いわゆる「ギャル系」が苦手だ。

行き過ぎた茶髪や下品な口調、臭いほど香水を振りまいたような女は勘弁して欲しい。
それも俺が金を出して呼ぶ女だ。


多少迷ったが、俺は一目見て気に入らなければキッパリと断るつもりで
その18歳の娘を待つことにした。


電話を切った後。
暗闇の車内でシートを倒し、FMで心地良い音楽を聞き流しながら考えていた。


18歳とは若い。
俺はこの遊びで何人かの18歳と出逢ってきた。
皆、様々な人生を年齢以上に積み重ねていた。

その娘もどんな人生を背負ってこの業界に飛び込んだのだろうか。

俺はいつもとは違う期待と緊張感に包まれていた。



相変わらず車の入れ替わりが頻繁な脇道で待つこと、約15分。
俺の車のグラスをノックする音がした。


顔を向けると、長い黒髪でクールな表情の少女が立っていた。
容姿は俺の予想を良い方に大きく裏切った。

白いブラウスは「18歳の風俗嬢」とは思えない清潔さを感じる。


助手席のロックを開けると、少女は無言のままドアを開けて助手席に座り込む。
俺は奥のホテル街を目指して、車を出した。

はにかんだ風の少女は、真っ直ぐフロントグラスの向こうを見据える。
俺には視線を向けない。


「はじめまして。18歳だって?やっぱり若いねぇ」
 「・・・」

「今日が二日目なんだって?」
 「・・・」


少女はやや口元を緩めたが、やはり無言のままだった。
本当に大人しいのか、ただ人見知りしているのか、会話に全くのってこない。


俺はこの後の展開に少し不安を感じつつ、車を近くのホテルの駐車場に入れた。
ライトアップされた外見が綺麗なそのホテルは、駐車場も広めで使い心地良かった。


俺たちは車を降りてホテルの建物に入る。


エントランスの自動ドアが開き、間接照明の廊下を歩くと、
突き当たりにフロントの電飾パネルがあった。
数室しか空いていない中、シンプルな内装の308号室を選んだ。


俺と少女はエレベーターで3階に上がり、薄暗い廊下を無言のまま歩いて向かった。


迷路のような細い一方通行の廊下。
ドアの上で308と書かれたパネルが点滅している。


ノブを掴み、年季の入った鉄板のドアを押し開けた。



<以下次号>







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