| 華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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| 2002年09月24日(火) 受話器越しの情愛。 『孤独な女』 |
俺は関西出身だが、愛知県人となって12年目になる。 元は大学に進学するためだけに愛知県に来たが、何故だか居付いてしまった。 19歳にして、初めての一人暮らし。 それも何ら大きな志を持てないでいる二流半の大学生。 例に漏れず、怠惰の極みのような生活を送っていた。 自由な時間が有り余るほどあった。 それを消化しきれずに持て余すことも多かった。 そしてフリーターを経て社会人として働くようになると、 今度は逆に、まとまった自由時間が足りなくなる。 まるでパッチワークのような細切れの自由時間。 そんな中で俺は暇つぶしと興味から、テレコミの醍醐味を覚えていく。 今まで何人もの女性とこういった遊びで知り合い、実際に会ったが、 電話だけで実際に会う機会の無かった人も大勢いた。 その中でも、今でも心配になっている女性が一人いる。 その女性は受話器の向こうで、本能と情念を剥き出して猛り狂った。 相手の手の感触も体温も伝わらない場所。 たった一本の電話線で繋がった肉体関係。 そして・・・突如消息を絶った彼女。 抱いた事どころか、会った事も無い相手に対して何を心配しているのか。 俺がお人好し過ぎるのは分かっている。 ある冬の人恋しい夜。 俺は寂しさから、テレコミの会社に電話する。 「新しい女性の登録がありましたが・・・」 受付の中年男はそう切り出す。しかし煮え切らない語尾が気になる。 「この女性は29歳で・・・遠い所の女性ですがいいですか?」 「どこの人です?」 「この女性は・・・新潟市ですね」 この会社は自宅などの女性が登録した場所から『コレクトコール』で男性のいる 自宅やホテルに掛けてくるシステム。 遠い土地の人だと、それだけ電話代もかさむ。 なので男性の所在地から遠い所に住む女性は、あまり歓迎されない。 しかし当時の俺は今まで出逢った人と違う土地に住む女性に興味があった。 新しい刺激を求めていたからだろう。 「いいですよ、その新潟の人でお願いします」 「では5分ほどお待ちください」 関西人にとって、新潟など北越は本当に遠い印象を持つ。 そんな未知の土地の女性と知り合えるチャンスを無駄にしたくなかった。 トイレを先に済ませて、心を躍らせて待つ。 電話が鳴る。自動コレクトコールのアナウンスが流れる。 そして発信音の後、待ち遠しかった新潟の女性と繋がる瞬間を迎えた。 「もしもし?はじめまして」 「・・・もしもし」 随分小声で大人しい口調の女性だった。 彼女の源氏名は「ミオ」と言った。 エステ関係の仕事をするミオは男性との出会いは皆無だ、とこぼした。 こういうテレコミの仕事はまだ数回しか経験が無く、何を話せば良いのかと 迷っている内に相手に飽きられて切られる、と言う。 「こういう電話をする男は寂しい奴が多いからねぇ」 「男の人も寂しいんだね」 「そりゃそうでしょう!女の人よりも寂しさに弱いと思うよ」 「そうなんだね・・・」 俺は色々と話を振ってみるものの、一問一答的な会話になりがちになってしまう。 会話が膨らんでいかないのだ。 ミオもまだ緊張している様子である。 「ミオはいつもそんなに堅苦しいの?」 「そんな事無いよ、でも男の人だと緊張しちゃうの・・・」 「男の人って、あなたのエステには来ないの?」 「うちは女性専用だけど、よそでは男の人も来るみたい」 「何するんだろう?・・・脱毛?」 「全身の永久脱毛や、髭の脱毛でしょ、あとファットバーニングとか」 「ファットバーニング?」 「脂肪燃焼を促進する・・・マッサージみたいなものかな」 「・・・効果あるの?」 「・・・あると信じるの(笑)」 「俺、信じるからお願いしようかな(笑)」 ミオとの会話は時間の経過と共に堅苦しさが取れ、徐々に砕けた方向へと向く。 「ミオは今まで何人くらいの男の人と付き合ったの?」 「・・・3人・・・くらい?」 「少ないねぇ」 「そうかな、離婚してからは誰も無いよ」 「バツイチなんだ。子供は?」 「いない。だから気楽なんだけどね」 「じゃあ、そろそろ新しい彼が欲しい時期じゃない?」 「う〜ん、そういう事は・・・無いかな?」 まだ傷が癒えないのだろうか、ミオの鎧は取れそうに無い。 しかしこういう堅苦しい女性の内面は、情熱的な場合が多い。 俺の経験上、そういう女性も多かった。 「でも、たまに男の人が恋しくならないか?」 「・・・本当言うと、無い訳じゃないの」 「そういう時、どうするの?」 「どうするって・・・どうするって?」 「男の人に抱かれたくなったら、ミオはどうするの?」 「え、え?どうするって、え・・・?」 受話器を手に持って真っ赤になっているミオの姿を想像してしまう。 「・・・だってもう何も知らない歳じゃないんでしょ?」 「・・・・そうだけど・・・」 「こういう話って、誰も傷つかないから楽しいじゃんか。はっきり言ってよ」 「・・・そりゃ、我慢できない時は・・・しちゃう・・・けど」 「独りで?」 「・・・・・・うん」 「手で?おもちゃ?」 「・・・・・うん、手で」 消え入りそうな声だったが、しっかりと肯定するミオ。 素直すぎるほどの彼女がとても可愛く思う。 「勿体無いね、独りでしちゃうなんて」 「・・・もう恥ずかしいから言わないで・・・」 こういう態度を取られると、さらに責め込みたくなる。 俺はきっと‘S’なのだと実感する。 「良いんだって、女の子だって大抵は独りでしているよ」 「・・・そうなのかなぁ」 「はっきり言わないだけさ。嫌いじゃないでしょ?Hな事も」 「・・・うん」 「・・・ね、ミオの事、もっと聞きたいな」 「え・・・何を?」 「独りでしちゃう時ってさ、どんな事考えてするの?」 「・・・そんな事言えないぃっ!」 「大丈夫だって、教えてよ・・・」 「ダメ!・・・・・・でも、本当に内緒だよ・・・」 ミオは凄まじい照れ方をしながらも、俺の誘導尋問に乗って話し出す。 いたって普通のSexを経験してきた様子のミオらしく、妄想も元彼とのHとノーマルだ。 俺はミオの気分を高めるべく、大袈裟な反応をしてみせる。 「へぇ〜っ・・・ミオって結構Hなんだぁ・・・」 「・・・言わないで、もうダメ・・・」 「そうやって話しているうちに、本当はもうドキドキしているんでしょ?」 「・・・やだぁっ、分かるの?」 「分かるよ、声も上ずっているし」 「・・・・・・」 動揺を見透かされたからか、ミオはとうとう黙ってしまった。 しかし気分を害した沈黙では無さそうだ。 「もし俺が君の隣りにいたら、抱き締めてそのまま後ろへ倒しちゃうよ・・・」 俺は受話器に向かって、声のトーンを落として囁く。 <以下次号> |
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