2011年07月15日(金)  尾道「てっぱん」ツアー1日目

春先に「てっぱんの話をしに来てください」と尾道市の教育委員会の方より連絡をいただき、てっぱん大ファンのたまが同行を希望。でも子守をどうしようと思っていたら、これまた熱烈なてっぱんファンのせらままが、「あたし行く!」と手を挙げてくれ、「大人の遠足だ!」と指折り数えて出発の日を待つことになった。

せらままは、わたしの映画脚本デビュー作『パコダテ人』で、大泉洋さん演じる古田はるおの娘、まゆちゃんを演じた前原星良ちゃんのお母さん、前原実香さん。2001年の撮影当時せらちゃんは5才、今や高校生。当時影も形もなかったたまは、間もなく5才。

新幹線ではおいしいコーヒーとパンの朝食を!と意見が一致し、カフェラテと焼きたてパンを優雅に食しつつ西へ移動。たまもハイテンションをキープ。福山から尾道へ向かう山陽本線では車内の手すりをバレエのバーに見立ててバーレッスン。

尾道駅で、メールでやりとりを重ねた内海さんと、今夜のてっぱん談義の司会の河上典子さんが出迎えてくださる。講演依頼のメールは事務的に済ませる人も多いのだけど、内海さんは、気持ちの見えるメールを何度も寄越してくださり、尾道へ行くのがますます楽しみになった。

尾道グリーンヒルホテルにチェックインし、尾道市の公用車で、「お好み焼き 村上」へ送っていただく。カウンターだけ、6人掛ければぎゅうぎゅうの店内は満席。それでも10分待ち程度。休日は行列だそう。



順番待ち用のベンチの後ろに「てっぱん」村上家のサイン。鉄兄、お母ちゃん、お父ちゃん、あかり。あれ、欽兄は?

「村上流尾道焼き」を注文。3枚頼もうとしたら「大きいで、2枚で十分じゃわ」とおばちゃん。ひっくり返すところを写真に撮っていいですかと聞くと「ひやひやするわ」とおどけた。

店のおばちゃんとお客さんの掛け合いが楽しい。近所のおばちゃんが買い物してきたものを届けに来る。食パンと、スイカ。「糖度13度で398円。安いじゃろ?」。そのおばちゃんは時計の修理に5万かかったという。後で4万6千円と下方修正。「電池かえるついでに分解したけぇね」というが、直す直す詐欺ではないとしたら、どんな手のかかる時計なのか、興味をそそられた。

念願の尾道のお好み焼きは、砂ずりとイカ天とやわらかいそばたっぷり、それでいてしつこくなく、満腹、満足。たまも無言で食らいついていた。「あんたと同じぐらいの孫がおるけぇね」とお手伝いのおばちゃんがくれたヨーグルトもペロリ。

千光寺ロープウェイで山頂へ。「函館を思い出すね」とせらまま。山があって海があってロープウェイがあって。『パコダテ人』で函館と縁を結べたように、「てっぱん」で尾道と縁を結べた。作品を重ねるごとに新しい土地に出会える。日本地図に旗がふえていく。


山頂で、あかりちゃんのポスター見つけて、おどけるたま。手に持っている「てんこ」の葉書は、河上さんがポスターのパロディで撮影したもの。Tシャツの数字の767を、パーソナリティをつとめる尾道FMの周波数にあわせて794に。ご本人も遊び心と人生エンジョイオーラあふれる人で、遠い町に住む他人という気がしない。


山頂展望台からのビュー! 夜上がったら、「あかり」の名の由来になった尾道の街の灯りが見えるはず。


「てっぱん」にたびたび登場する鼓岩、通称「ぽんぽん岩」では、記念撮影する人が、ひっきりなし。大ファンという女性と少しおしゃべり。


立て札のロケ作品紹介には誰かが「てっぱん」の写真を追加。

ぽんぽん岩の近くの6週「家族のつくり方」で駅伝君が駆け上がった坂を下り、千光寺へ。たまがピンクのランドセルのお守りを所望。「中に願い事を入れてぇね」と名物のすすめ上手なおばちゃん。

去年5月の第一次ロケのときに尾道を訪問した際、気になっていた小径に偶然出られた。今放映中の北川景子さんのカメラのCMにも登場する「尾道イーハトーブ」と称する一帯。その中にある「ブーケダルブル」というお店が、初音が千春のトランペットを引き取った古道具屋のロケに使われている。

そこの店主であり尾道イーハトーブの主である園山春二さんという方が、花巻の知人、宮沢和樹さんと宮沢賢治つながりだと以前和樹さんに聞いていたのを思い出し、和樹さんに電話すると、お店にいる園山さんへかけてくれ「今、店に来ている今井さん」とわたしのことを紹介してくれた。

フランスで生まれ、フランス語で賢治を知ったという園山さん。和樹さんは「骨董屋の主人として出演している」と言っていたが、「似てるらしくてよく間違われるんだけど違います」とのこと。役者でも通用しそうないいお顔とフランスの香り漂う紳士だった。


その園山さんがひとつひとつ手書きしているという福石猫をお土産にいただく。てっぱんの「縁」「円」「笑ん」にちなんで「えん」と命名。

あかりが飛び込んだ突堤の向かいにある「からさわアイスクリーム」で、忘れられない味のアイスもなかを買い、とけないうちに急いで食べた。

18時半からの「てっぱん談義」の会場は、しまなみ交流館の芝生広場。晴れて良かった。住職であり尾道市の観光協会理事でもある加藤慈然さんと司会の河上典子さんと3人でのトーク。事前に軽く打ち合わせしてから、いよいよ本番。


たまはわたしに一瞬はりついたけど、すぐにせらままの元へ。

尾道という素晴らしい舞台をお借りできたことへのお礼を言い、「てっぱん」がどのように作られたかを話した。

3人の脚本家が交替で書き、演出陣やプロデューサー陣もあわせて十人以上でああでもないこうでもないと話し合い、登場人物一人一人の名前をつけ、人生の輪郭を作り、てっぱん世界を作っていった。同じ世界観を共有するには、とことん話し合うことが必要で、その熱さが作品の熱になったのではないか、と話した。

陽が落ちて来て、謎のトランぺッターが登場し、「ひまわり」と「What a wonderful world」を演奏。あえて名前を明かさなかったのは、橘さんかも、の想像の余地を残してくれたのか。譜面台にはてんとう虫という心憎い演出。

キャンドル作家でもあるせらままがキャンドルを灯し、たまはそのアシスタントで、ろうが溶けてきたキャンドルを引き上げるお手伝い。壇上にいるわたしがどうしても気になり、ときどき寄ってくる。「うんち」とマイクに入る声で訴えて焦ったが、せらままが連れて行ってくれた。

その後、トーク終盤の質疑応答のところで再び乱入し、マイクを奪って「こんにちは!」。河上さんがたまを上手に紹介してくれ、来月5才になることを知らせてくださる。わたしも、だったら巻き込んでやれと開き直り、「たまはてっぱんの大ファンなんです」と紹介し、「いちばん好きなキャラクターは?」と振ると、元気よく「プリキュア!」。思わず「空気読んでよ」と突っ込んだけど、「てっぱんでいちばん好きな登場人物は?」と聞くべきだった。

質疑応答では「あかりちゃんの髪型が変わることに意味はあるんですか?」「瀬をはやみ〜は続編があるという伏線ですか?」といった質問をいただいた。

河上さんと慈然さんとのトークが初顔合わせとは思えないほど楽しく盛り上がり、あっという間の1時間半。「尾道は路地が狭いから、すれ違うとき、声をかけるしかないんですよ」「尾道の寺は拝観料を取らずに町にとけこんでいるんですよ」といった慈然さんの話に、尾道の人と人の距離感の近さや、ファンタジーと現実の境界線の淡さの理由を見た気がした。お坊さんでありながら観光協会の理事をやってトークに出て来る慈然さん、どこか隆円さんに通じる雰囲気があった。

河上典子さんのブログ「ママ・ブランチ」7/18 てっぱん談義!

慈然さんのブログ「じねん坊がゆく」7/17 尾道と「てっぱん」の裏話

最後は再び謎のトランペッターが登場。参加者の皆さんと「また逢う日まで」を歌い、締めはてっぱんダンス。たまもわたしも踊った。トーク終了後は色紙を持った方が何人も話しかけてくださった。

尾道やてっぱんについては、まだまだしゃべりたいことがたくさん。また尾道に呼んでください、河上さんの尾道FMの番組「ママ・ブランチ」にも呼んでください、と言う。呼ばれなくても、何度でも来たい街。

万葉ラブストーリーみたいに尾道が舞台の脚本募集をやって、脚本家の卵たちにシナハンに来てもらうのもいいのではとトークで提案したが、尾道は、創作意欲をかきたててくれること間違いなし。

会場近くの洋食屋で晩ご飯を食べるうちにたまは寝入り、わたしとせらままはスパークリングワイン飲んで大人の時間。ホテルに帰ってから窓辺にキャンドルを灯し、窓に映るキャンドルとその向こうの海の灯りを見やりながら深夜まで話し込んだ。

ああ、尾道に帰って来れて、幸せ。

今日のtwitterより(下から上に時間が流れます)
ツイッターでは携帯で撮った写真を発信。こちらもあわせてどうぞ。>>>もっと読む


【たま語】「なおしまのあいらぶゆう、まだあるかなあ。たまちゃんをまってるかなあ。まってたら、たまちゃんいくよ」。二年前に行った直島のアート銭湯『I LOVE湯』。自分は愛されていると信じられる幸せ。
posted at 12:42:43

尾道へ同行し、「てっぱん」トークの間たまの子守をしてくれるせらままはキャンドル作家。手作りキャンドルをいくつか持参、あかりを会場に灯します。 http://twitpic.com/5qaw7m
posted at 12:10:46

黒地を削ると下から色が出てくるノートでお絵描き中。間もなく福山着。 http://twitpic.com/5qah4l
posted at 11:43:09

新幹線で尾道に向かってます。おともはパンとカフェラテ。 http://twitpic.com/5q8y2r
posted at 09:51:39

@mippe03 注意報ですね。「おまたのかみのけ」というネーミングがツボです。QT 我が家には息子しかおりませんが、昨夜まだ職場にいるお父ちゃんに、全文コピペしてメールしておきました(笑)
posted at 06:58:09

【たま語】「はけれないよー。ねじまきになってるよー」。ぱんつがねじれて、ねじりはちまき状態。
posted at 06:49:30

植物の歴史は面白いですね。シロツメクサは「プチプチ」として日本に来た「詰め草」だと先日聞きました。QT @zacchye 中国では紫陽花はライラックのことで平安時代に日本に間違えた紹介をしたとの内容の文章がありました。日本語では、藍色が集まっている集真藍(あづさい)がなまったもの
posted at 06:22:43

2010年07月15日(木)  LANケーブルを引っこ抜いて仕事はかどる
2008年07月15日(火)  6本めの長編映画『ぼくとママの黄色い自転車』撮影中
2007年07月15日(日)  MCR LABO #4 愛憎@shinjukumura LIVE
2004年07月15日(木)  見守る映画『少女ヘジャル』
2002年07月15日(月)  パコダテ語
2000年07月15日(土)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)

<<<前の日記  次の日記>>>