2009年03月11日(水)  辞書のご近所さん

「チェンジリング」を英和辞典で調べたついでに、新明解国語辞典を引いた。「チェンジリング」は載っていなかったけれど、ひさしぶりに開いた国語辞典を眺めていると、新たな発見があって、しばらく遊んでしまった。子どもの頃、辞書である単語を引いて、説明に出ている同義語をさらに引き、一人連想ゲームのようなことを楽しんでいたけれど、今回の遊びは「ご近所さんごっこ」。並び合う単語を見て、「これの隣にこれが?」という驚きは、有名人の交友関係を聞いて、「あの人とあの人が親しいんだ?」と反応するのに似ている。こちらが予想もしないツーショットや予想を裏切る距離感が面白い。

「きふじん(貴婦人)」と「ギブス」。「ギプス」という音には上品な響きがある印象を持っていたけれど、この並びを見ると、ますますそう思う。
「おなみだ(御涙)」と「おなら」。体の上のほうから出るものと下のほうから出るものが仲良く並んでいる。
「くつずれ(靴擦れ)」と「くっせつ(屈折)」。靴擦れしたときのやりきれない気分が、単語二つから浮かび上がる。
「かなしむ(悲しむ)」と「かなた(彼方)」。この二つが並ぶと、美しい詩のようだ。
「わがはい(我が輩)」と「わかはげ(若禿げ)」。「我が輩は若禿げである」氏の顔が浮かぶ。

並べてみると確かに似ている「かなづち」と「カナッペ」、「ハイヒール」と「ハイビスカス」、「マーガリン」と「マーガレット」。取り合わせの妙がそのまま小説のタイトルに使えそうな「オニオン」と「おにがしま(鬼が島)」、「じいん(寺院)」と「ジーンズ」、「マングローブ」と「まんげきょう(万華鏡)」。この二語の間に他の単語が入り込まないのが意外で面白い。

「ちかう(誓う)」と「ちがう(違う)」、「おとり(囮)」と「おどり(踊り)」、「かくらん(撹乱)」と「がくらん(学ラン)」、「しいたけ(椎茸)」と「しいたげる(虐げる)」などは「濁点ひとつや一文字で別物になるんだな」という発見がある。「おとひめ」と「おとめ」は、一文字減らしてもイメージのギャップはあまりない。

「つばさ」のお隣は「つばぜりあい(鍔迫り合い)」。3月30日から始まる朝ドラ「つばさ」は第一週から繰り広げられる親子の鍔迫り合いもひとつの見どころだが、この二つが辞書で隣り合わせていたとは。そこで「ドラマ」を引いてみると、「トラホーム(=慢性で伝染性の結膜炎)」と「ドラマー」に挟まれ、3つ前には「トラブル」がある。病気や災難にはできればお近づきになりたくない。「映画」の前後は「詠歌」と「栄華」、3つ前には「永遠」、4つ後には「栄冠」と想定の範囲内の耳障りのいい単語が並ぶ。わが職業の「脚本」はというと、「客分(=客として待遇されること)」「客坊」「脚本」「客間」「客待ち」という並び。「客分」の前には「逆風」が、「客待ち」の後には「逆戻り」があり、浮き沈みの激しい商売をご近所さんが暗示しているようで、考えさせられた。

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3年ぶりの映画の公開日は、奇しくも娘のたまの3歳の誕生日。この偶然は幸運の兆し? 公式サイトbokumama.jpでは特報(予告)映像も見られます。

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