2008年10月13日(月)  鎌倉山の陶芸教室と『静辰』

セピー君とお母さんの志雅子さん、わが家の三人、夕食だけのつもりが宿泊になったテスン君とユキコさん、朝7時に合流したダンナの妹ケイコちんとともに江の電に乗って、七里ケ浜へ。お目当ては、「世界一の朝食」と噂の『Bills』。『アテンションプリーズ スペシャル シドニー・オーストラリア編』の脚本執筆でシドニーのことを調べているときにこの店のことを知り、湘南にあるという海外1号店のことも気になっていた。昨日セピー君が「行こう」と言い出し、山積みパンケーキ状態の期待を抱えて乗り込んだのだけど、開店15分前にして一時間待ちの行列。

諦めて、徒歩5分ほどのファーストキッチンへ。世界一の朝食よりも海に近いテーブルで頬張るバーガーは、格別。数あるファーストキッチンの中では世界一の朝食と言えるかも。

テスン君、ユキコさんとは朝食の後に別れ、あとのメンバーはタクシーで鎌倉山へ。前日から鎌倉入りしたのは、ダンナの小学校時代の同級生で陶芸家のダンちゃんのkamakura山陶芸工房を訪ねるためだった。10時前に前を通り過ぎたタクシーの窓から見ると、Billsの行列は店内に納まっていた。

2歳児連れのわが家に配慮して、貸し切りで教室を開いてくれたダンちゃん先生。各自ろくろと手ふき布と粘土を配られ、まずは「作りたい物を言っていただけますか」と先生。セピー君は「邪視」という目玉みたいなものを入れる器、志雅子さんはキャンドルホルダー、ケイコちんはぐいのみ、ダンナは一輪挿し、わたしは「たまの手型を押した」お皿。「一輪挿しより器のほうが使えるよ」と言ったが聞き入れられず、「せめて取っ手がゾウの鼻になってるとか、面白いの作ってよ」と言うと、「それはどうでしょう」とダンちゃん先生に首を傾げられた。基本的には生徒のやりたいことを引き出すのが上手な先生で、「どうしたいですか?」と聞いた上で助け舟を出してくれる。師いわく、「実現したいという気持ちがあれば、方法は見つかる」。

土台を作り、ぐるりを積み上げてから形を整えて行く。娘の手型のついた皿にもてなし料理を盛って、「これ、たまの手なんです。合作」と言って話のタネにしようというのがわたしの目論みだったのだけど、粘土に手を押しつけようとしたところたまがぐずりだし、激しく抵抗。「お母さん、それぐらいで」とダンちゃん先生に止められ、手型を諦めることになった。

セピー君は作るうちに「邪視そのもの」を粘土で作りはじめ、ケイコちんのぐいのみは巨大サイズのビールジョッキに化け、ダンナの一輪挿しは不器用さを物語る塊に仕上がって行った。志雅子さんの作るキャンドルホルダーだけは、最初からブレがなく、着々とイメージに近づいて行く。

結局、わたしが作ったのは、ハート型の大ぶりの器。サラダや煮物を入れるのによさそう。手型をつけられなかったかわりに、底にハートをくっつけた。セピー君から余り粘土を分けてもらい、ミルクピッチャーを作りかけたらうまくまとまらず、ハート型の小ぶりの器になった。姉妹みたいで、これはこれでいいかもしれない。表面を丁寧にならし、うわ薬を塗り、藁で飾り用のキズをつけて完成。乾燥した後ダンちゃんが焼き上げてくれる。出来上がりは、一か月後のお楽しみ。

せっかくだから教室の後に鎌倉らしいところで食事をということで案内されたのが、教室からすぐ近くの坂道をひょいと入ったところに建つ一軒家。『静辰(しずたつ)』という暖簾が下がり、軒先には大きなからすみを干している。お寿司やさん? 中に入ると、洋間と和室にテーブルが一つずつ。昼夜ともにひと組しか客を取らないのだという。

陶芸教室に出た後は、器を見る目もいつもより観察深くなる(器を勉強するために、「いいお店」を知っている陶芸家は多いのだとか)。陶器の平皿にパンが盛られているのが新鮮。このパンが外はカリッ、中はモチモチ、後に続く料理への期待を否応にも高めてくれる絶妙な味。

ひと皿目は、パンによく合うよう計算された塩加減のパテ。ターメリックで味つけしたタマネギと里芋を添えて。タマネギはあまりに美しく澄んだ黄色に染まり、これは何だろうかと一同で答えを出し合ったけれど、正解はいなかった。

ふた皿目は、魚介のカルパッチョ。たまがむさぼるように食べた。彩りも楽しい生野菜はシャキシャキとした歯ごたえで新鮮そのもの。

三皿目は、大きなほたて貝の殻を器にしたきのことほたてのグラタン。これまた、たまが半分以上食べてしまった。

四皿目は、イカスミのたきこみごはん。とっても辛い大根が添えられていて、ちょっとずつ混ぜて食べる。こんなもの、食べたことない。

そして、デザートは、ふわふわの雪玉のようなまあるいチーズケーキ。danchuに作り方を紹介されたときの記事が壁に貼ってある。シェフの川口氏の看板メニューの様子。たまの食いつきはすさまじく、皿に鼻をつけんばかりに身を乗り出し、「うめー」とうなりながらほとんど平らげてしまった。

厨房から出て来たシェフに、「おいしいです!」を連呼するたま。浴びるほど称賛を受けてきたと思われるシェフも、「子どもは正直ですよ」とうれしそう。たまは厨房まで追いかけ、なおも「おいしいです!」。一食でずいぶん舌が肥えてしまった気がする。椅子にじっとしていない子ども連れでコース料理を最後まで味わえるのは貸し切りだからこそ。ゲストブックに名前を求められたが、次回訪ねたときに今回と違うメニューを出すためなのだそう。

鎌倉山から鎌倉駅へ向かうバスが一時間に二、三本ほどしかないので、歩きながらバスを待つことに。あと少しでバス停というところで追い抜かされること二回。足が疲れてバス停で休んだら、今度は40分以上待たされた。でも、両側にこだわりの注文建築の家が並んでいたり、かわいいパン屋さんがあったり、歩いていて楽しい道だった。

2002年10月13日(日)  新宿のドトールにいませんでした?

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