2006年12月06日(水)  マタニティオレンジ38 悪いおっぱい

先日、赤ちゃんとお母さんが集まる会に出席したときのこと、指導に当たられた助産師の先生は、「おっぱい先生」だった。赤ちゃんのどんな症状も母乳と結びつけるのである。
ママ1「うちの子、肌が荒れているんですけど」
先生「それはおっぱいが悪いからです」
ママ2「おむつかぶれがひどくて」
先生「それもおっぱいが悪いです」
といった具合。「うちのダンナ、育児を手伝わないんですけど」と言ってもおっぱいのせいにされるのではと心配になるほどだった。乳製品や卵を取ると湿疹やアトピー性皮膚炎になりやすいし、赤ちゃんの不調と母乳は密接な関係にあるのは確かだろう。だけど、気候やおむつ内の湿度だって関係あるはずで、母乳だけが悪者にされては、出してるほうも立場がない。

「赤ちゃんが寝てくれない」のも、「おっぱいが悪い」から。「母乳が甘いと、赤ちゃんは眠りが浅くなります。甘いものをやめればぐっすりです」と言う。勉強になったが、「洋菓子はもってのほかだけど和菓子もダメ。赤ちゃんは小豆が嫌いです」「砂糖は一切ダメ。味付けはみりんで」と徹底され、「栗やさつまいもも甘みが出るから控えめに」とまで言われると、わたしなんかは、自分が不眠になってしまいそうになる。母乳が不安定だった生後一か月頃、一日に大福を四個食べていたら出が良くなった。先生的には間違った和菓子療法だが、「餅はいい」「小豆はいい」と思い込んでいたことによるプラシーボ効果が出たのだから、それでいい。

「おっぱいが悪い」を連呼していた先生だが、「うちの子、8時間ぐらい寝るんです」というママの声に、「それはおっぱいに悪いです」と初めて同情を見せた。それだけ長い時間溜めておくと乳腺炎になるという。眠らないのはおっぱいが悪いからで、眠りすぎはおっぱいに悪い。おっぱいの世界は奥が深い。

「他に質問は?」と見回した先生と目が合ったので、「うちの子、手足が冷えるんですが」と日頃気になっていることを聞いたら、「そういう質問を待ってました」と先生。「それは、おっぱいが冷えているんです。お母さんの食べているものが悪いんです」。タウンミーティングのやらせ発言のようなやりとりになってしまった。「ちなみにお昼は何を食べましたか」と聞かれ、「カレー」と答えたところ、先生はさらに勢いづき、「カレーはおっぱいの質を悪くします。赤ちゃんがいやがります」。四歳のときから隣人のインド人の本格カレーを食べてきた遺伝子を受け継ぎ、妊娠中も毎日のようにカレー味(!?)の羊水で育った娘のたまは、カレー直後の母乳もごくごく飲む。でも、確かにスパイスの刺激は赤ちゃんには強すぎるかも、とここは反省。前日の夕食も聞かれたので、そこは胸を張って「玄米と納豆」と答えたのだが、「玄米は胃に負担をかけるので胚芽米にしましょう」「大豆は三大アレルギー源のひとつなので控えましょう」。消化のいいファンケルの発芽玄米なんですが、と反論するのは遠慮した。

おっぱい先生の指導通りの食生活を送れば、母乳はすばらしい品質向上を遂げるのだろう。でも、その前に、干からびてしまう気がする。

2005年12月06日(火)  戸田恵子さんの『歌わせたい男たち』
2003年12月06日(土)  万歩計日和

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