2004年06月13日(日)  映画『ヒバクシャ 世界の終わりに』

渋谷のアップリンク・ファクトリーにて、ドキュメンタリー映画『ヒバクシャ 世界の終わりに』を観る。アップルリンク・ファクトリーだと思っていたら、apple linkじゃなくてuplinkだった。いろんな形の椅子やソファが並んだ手作り感あふれる小屋で、カウンターで注文したドリンクを飲みながら鑑賞。

『ヒバクシャ』は、函館の映画祭で知り合い、イラン大使館で「今井雅子の知人です」と益田祐美子さんに声をかけた縁で『風の絨毯』宣伝に巻き込まれた巌本さんが、今宣伝を手伝っている作品。

「低線被曝」という耳慣れない言葉が何度も出てくる。「核爆弾が落とされた場所にいなくても、じわじわと放射能を浴びることで被曝する」ということらしい。原爆投下の後の広島、長崎に入った人、大量の劣化ウラン弾をばらまかれたイラクの子どもたち、アメリカ・ハンフォーフォのプルトニウム製造施設の川下住民などが「説明のつかない」症状に苦しんでいる様子を知る。

「診断困難」というのが低線被曝の特徴なのだそうだが、目に見えない放射能を諸症状の原因と特定するのもまた難しい。しかも、過去の日本や遠い国の出来事で片付けられる話ではなく、チェルノブイリの事故で漏れた放射能の影響は日本にも届いているし、日本国内に何十箇所もある原子力発電施設も「核廃棄物は出していないというが、空気中に排出していないとはいえない」という。

核の量を張り合わなくても世界が折り合いをつけてやっていければいいのにと思う。そう考える人は世界の大半であるはずなのに、減らないどころか増えていくのはなぜなんだろう。原子力発電所のことも、考えても答えは出ない。その前に知識もなさすぎる。

最近読んだ『東京原発』の脚本は、知らないことだらけで勉強になった。本を読むとか映画を観るとか受け身でしか放射能と向き合えないわたしは、『ヒバクシャ』を作った鎌仲ひとみ監督の使命感と行動力に圧倒されるばかりだった。一緒に行った人は、「反ブッシュの警告を発することに徹しすぎで、都合の悪いことは描いていない」と編集の偏りを指摘。「イラクでは白血病の子どもたちを救う薬が満足に入ってこない。それはアメリカが経済制裁をしているから」という事実だけを強調し、「経済制裁に遭ったのは、イラクがクウェート侵攻したから」ということを描かないとバランスを欠いてしまうと言う。なるほど。それでもイラクで助かるはずの命が死んでいっていることは確かだし、知らないよりは知って良かったと思う。

上映後、鎌仲監督と高遠菜穂子さんの対談が予定されていたのだけど、会場近くまで来た高遠さんをマスコミが待ち受けていたため引き返してしまったとのこと。サイトでもメール配信でも公表していたので、大丈夫なのかなあと心配していたら、やはり。お忍びで登場という形だったら観客だけのサプライズにできたかもしれないのに、もったいない。

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