「気づいたか」のぞきこむ黒い双眸が誰のものなのか、一瞬わからなかった。わかるのを拒否していた。「もう大丈夫だ」 まばたきもできず視線をはずすこともできずにただ目を見開いたままのクラピカに、男はやさしくくちびるを重ねた。 「・・・ん、」 当然のごとく割りいってきた舌から逃げようと首を振る。 「怒っているのか? 迎えが遅かったから」 迎え? 「ここには誰も来ない」 男はクラピカの横にうつ伏せに身を横たえ、伸ばした左手で金の前髪をもてあそんだ。 首から下が動かない。室内に必死に視線をめぐらす。男の住居ではない。警察でももちろんない。クラピカが育った館であるはずがない。どこかのホテルか、無数にあるらしい男のアジトのひとつなのだろう。窓の外には景色がない。 ノイズだけがある。 いままでも耳には入っていたはずなのに聴いてはいなかった音、あの国のことばが不意に意味をもって入ってくる。 ”警察””死者””テロ””封鎖”・・・古びた建物にかけつける警察車両のサイレンと赤いランプの乱舞、立入禁止の幅広のテープのむこうのひとびとの顔、 「ああ」男はクラピカの視線が射抜いている場所をふりかえり、かすかに笑った。「やつらは追ってはこない。ここは別の国だ」 ニュースは唐突にスタジオに切り替わった。 ”フローリス第三分署皆殺し事件” テロップにはたしかにそうあった。 ”高級ブティックでの虐殺と同一犯?”と、黒い大きな字が踊った。 「おまえはオレのものだと言ったのに」男はふん、と鼻を鳴らす。「オレたちを引き離そうとした」 初めてでた”外”で。男は約束だからと言ってクラピカを美術館に連れていき、それから新しい服を買うのだとブティックに連れていった。サロンのソファで男がまずドレスの品定めをし、どれを試着させるか店員に指示した。サロンのすぐ裏に試着室があるのだと先導する店員に、洗面所にいきたいのだと言ってそして。 非常階段を駆け降りた。警官が乗るバイクが反対側の車線を走ってくるのを止めて保護を頼んだ。とにかくここから遠くへと。そして連れていかれたあの建物の最上階で、クラピカは名乗りそして。 女性と男性ひとりずつの警察官がいる部屋に電話が入る。クラピカという名前の迷子を探している、保護者だと主張する20代の男が下に来ていると。 必死で首を振った。 いる、と言わないで。お願いだ。 クラピカの表情を見て、担当官は、とにかく別室に入れて素性をきいて、と指示していた。 それから。 それから? ・・・・・・・・ とほほ。 というわけで唐突にウサギちゃんと狂男の話、偽フィレンツェ警官40人殺しのエピソードなんか書いてみました。実際はかなり変わる可能性があります。 なにがとほほって、「エロを書くのじゃー」と始めたのにまだキスしかしてないことですよ! しかももうタイムアップなので今日の日記は唐突に、続く。で終わるのでありました。
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