un capodoglio d'avorio
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2003年08月06日(水) つか「売春捜査官 ギャランドゥ」(高野愛チーム)1

どかが観劇を始めて以来、初の失態。
会場をまちがえる・・・!
当日券のみの公演だったので、確認のためのチケットも無く。
はあ、チケット置き忘れは前にやらかしたし、
あと観劇上考え得る災厄って、なんだろう。
王子駅前→滝野川会館までタクシーですっ飛ばし、
開演から5分遅れて着く、やれやれ。


キャスティング(高野愛チーム)

木村伝兵衛部長刑事:高野愛
熊田留吉刑事   :北田理道
桂万平刑事    :岩崎雄一
容疑者大山金太郎 :川端博稔
銀行員猿渡    :鹿野哲郎
ホスト春樹    :友部康志


さて「売春捜査官」である。
木村伝兵衛部長刑事が、実は「女」だったという設定。
「売春捜査官」の「売春」とは、
「売春」を捜査する刑事の話、ではなく、
「売春」が趣味な刑事の話、である。
この女・木村伝兵衛は歌舞伎町で「売春」しているという仰天な導入。
そこにかつて伝兵衛とつき合っていた熊田刑事が、
捜査室に応援要員として送られてくる。
伝兵衛は熊田に「ヨリを戻して」と迫る、キョヒる熊田。
伝兵衛の部下は桂万平、彼はゲイで、伝兵衛からむごい仕打ちを受けていた。
そんなはちゃめちゃな捜査室に、容疑者大山金太郎が来る。
捜査が進むに連れて浮かび上がるのは、
在日朝鮮人の悲哀、故郷への募る思いであった・・・。
「女」「ホモ」「使用人」「殺人者」「在日朝鮮人」、
そういった弱者が弱者として生きていくには、どうすればいいのか、
荒唐無稽に差別用語・罵詈雑言が連発されるシーンを支えているのは、
劇作家つかこうへいの限りない優しさである。
どかはこの脚本は、とてつもなく、完成度が高いと思っている。
「モンテ」や「サイコパス」「平壌」などの、各種「熱海」と比べても、
まったく遜色ない、それどころか、
最もロマンチックで、
最も切ない「熱海」。
それが「売春捜査官」。
伝兵衛が、ほんとうにほんとうに、かあいそうなんだ・・・。

どかは1999年の8月に紀伊國屋ホールで、
この作品の前バージョン(→近日アップ予定)を観劇したことがある。
そして、なにげにこの'99由見あかりバージョンは、
どかの中でも未だに屈指の秀逸な「つか舞台」だったから、
今回の北区若手主体の公演はパスしておこうかなと思ったの。
でも、万平役の岩崎サンをただ信頼して、行くことに決めた。
しかして・・・行って良かったな、岩崎サン最高。

猿渡と春樹はワンポイントしか出てこない。
あくまで「売春捜査官」は「熱海殺人事件」のひとつだから、
基本構造は変わらないのね、
2時間を4人だけで持たせる究極のテンションが要求される。
究極の役者芝居であり、役者の力量が足りなければ、
全く成立しない、最も残酷な脚本、それが「熱海」。
しかして・・・、4人、ちょっとパワーバランスが崩れてるなあ。
岩崎サンのひとり勝ちになっちゃったな、健闘したのは新人・北田クン。

まず川端サン。
伝兵衛経験者なのに、弱いよー。
さすがに上手くなったし、そつなくこなしているけれど、
大山役に要求される「弱者の妬みパワー」が少し稀薄。
間をとったりスピードを調整したり、
そういう「技」でかわしきれる舞台じゃ無いジャン「熱海」はあ。
いいんだよ、そんな小手先の技はあ。
もし川端サンが新人だったら、そりゃあすごい才能だと思うけれど、
アナタはもう伝兵衛まで上り詰めた方なのだから、
他の3人を置き去りにするくらい走ってくれなきゃあ
(でも仕方ないのかな、このヒト、
 もうひとつのチームでも大山やってるからすげー連チャンで出演だもん、
 ちょっと、熾烈すぎるなあ「勤務環境」)。
大山のかっこいいところ、警視総監に伝兵衛が呼ばれたあと・・・


大山  (伝兵衛に)どうすんだ、ホテルに7時に来いってよ

熊田  大山、もうその辺でいいだろう(つかみかかる)

大山  (振りほどき、殴りつけて)じゃ、お前が行くなって言ってやれ
    惚れてんだろう、ホテルに行くなって言ってやれ

伝兵衛 ・・・

大山  言えんのか(また殴る)
    言えんのか、惚れてる女がよその男に抱かれに行くんだ
    行くなと言ってやれ

熊田  うるせえ!!

(つか「売春捜査官 ギャランドゥ」より)


そして熊田留吉役の北田理道サン。
どか、初見だな、このヒト、でもすげーいい!
びっくりした、イイ人材、入ったなあ北区。
走ってるもん、とにかく、走ってる、一生懸命に。
そして、それなりにスピードが乗ってるのがすごい。
セリフ術が結構巧いんだけど、その巧さに甘えないで、
だれずに、どんどん自分を追い込んでいってるのが、好感。
赤塚クン風の色気は出ないだろうけれど、
岳男サン風の誠実さは、もしかしたら将来、出せるかもな逸材。
もちろん、まだ、芝居の受けが全然出来てないけれど、
新人で、とりあえず、しっかり自分の気持ちを相手に伝えられれば、
それだけでもう、北区ではエース候補。
だって、大変なんだもんねえ。
まっすぐ相手の目を見て、しっかり自分の言葉をしゃべるのって。
頑張って欲しいな、これから。


熊田  あんたに出会い、この世に幸せというものがあるのだと思った
    オレはあんたを信じ、あの冷たいみぞれ降る駅でずっと待っていた
    が、あんたはあの駅に来なかった・・・なぜ、来なかった!

伝兵衛 言い訳はしません

熊田  その方がいい
    遠い昔の話だ

伝兵衛 でも、まだ、私はあなたのことを愛しています

熊田  迷惑です
    オラ、明日八王子で雪江と結婚式をあげるんです

伝兵衛 明日・・・
    じゃあちょっと捜査を急がんといけませんな

熊田  オレの心は変わりません

伝兵衛 変えんだよ(熊田を蹴りつける)

(つか「売春捜査官 ギャランドゥ」より)


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