un capodoglio d'avorio
passatol'indicefuturo


2003年07月07日(月) CHARA @赤坂BLITZ(「青」の相対性理論)

(続き)

そうなのだ、ハイロウズはステージ上だけで美しくも完結するけど、
CHARAは、観客席も含めて、大きな空気を作ってすっぽり覆ってしまう。
ステージ上からメッセージを観客に送るのではなく、
自分も含めたコミュニティをその「声」の魔力で形成してしまうんだな・・・。

先にあげたセットリスト、
基本的にはニューアルバムの「夜明けまえ」のナンバー中心。
6曲目の「ハートの火をつけて」と7曲目「みえるわ」に、まずやられる。
クゥーっ、かっこいいー、シャウトとウィスパーの間、
そこに未来も過去も全部溶けて、ここに広がって。
バンドもどんどん乗ってきて、ぐいんぐいんのグルーヴが腰を直撃する。
CHARAはなんか、演奏もひっくるめて、
ちゃんと自分の世界に責任を持ってる感じがする。
ソロでやってるヒトって、結局自分だけ、
ボーカルだけ、ギターだけ、あとは適当にってヒトが多いけど、
CHARAはあくまでロックンロールで音を作ってくる、そこがエラいなって。
自分の「声」に始まって、ドラム、ベース、キーボード、コーラス、
ライティング、会場、そんななんやかや全てに気を配って、
完全な彼女の世界を作り上げる、フィクションがリアリティを持つ瞬間を、
この人はちゃんと、おさえている。

そして圧巻の11曲目から雪崩をうってのたうつブリッツ!
「スワロウテイル」→「ミルク」→「やさしい気持ち」→「スカート」、
と、一気に「静」と「動」の振幅が大きく、最大限に拡大されて。
YEN TOWN BANDはなにげに苦手な、どか、でも「ミルク」からは、
否応なく巻き込まれてしまい「やさしい気持ち」のイントロで涙腺崩壊。
訳わかんない、私、なに泣いてんだろう、突然。
でも、すごかった、あの重たいドラムとベース、ギターフィードバック、
そして黙示録的に明日が無いかのような、シャウトシャウトシャウト。
グゥーッと自分の「時間」が圧縮されて、
過去が限りなく薄いトレぺみたくなって向こうがすけるかのよう。
止まらない涙、そして始まる大好きな「スカート」!
あの、サビに入る瞬間、世界中の全ての窓が開かれていくような、
サイケな開放感、圧縮された過去はパースペクティヴを取り戻し、
未来に向かって、音もなく投企されていく自分の、「時間」・・・。
リーズ駅で止まらなくて苦しかった涙が、
いつの間にか、きょう、ブリッツでは乾いていた。

そしてアンコール、出た「BREAK THESE CHAIN」!
本当に日本語の美しさを感じさせる詞、
あの岩井俊二の「FRIED DRAGON FISH」の主題歌で有名になったけど、
岩井サンにとりあげられるまでもなく、この曲は名曲である。
YEN TOWN BANDの時、何曲か英語で歌ってたけど、
CHARA、英語で歌うの、ヤなんだって、本当は。
確かに彼女のオリジナルアルバムはオール・日本語。
アーティストのささやかな意思表明だけれど、
でもどかはこういうところに、大切な姿勢が顕れるんだと思う。
ピアノを弾きながらのアンコール、けれども、
ブリッツを包むムードの濃度は極大値に達していて。

光と同じ速度で光を見たら、それはどう見えるのか。

一番深い青と同じ彩度で一番深い青を観たら、それはどう見えるのか。

CHARAが打ち立てたのは、バラードにおける相対性理論だ。
たった1つの「色」を繰り返し繰り返し歌い続けて、
つきることの無い彼女の才能は、このたった1つの「色」の
ヴァリエーションを生み出すことにのみ捧げられていて、
ヒロトがたった一人、みるべきものを周りに失った後で、
空を見上げ続けているように、
CHARAもたった一人、氾濫する「青」の中でも、
自律的に存在できる「青」を探し続けている。
そんなシジフォスの神話みたいな「無駄な潰え」のフィクションを、
それこそ神話になるほどのテンションで続ける姿に、
私たちは、「祈り」という言葉を感じずにはいられない。

「無駄」を省き続ける即効性のドラッグにまみれたオリコンチャートの中で、
まったくそれに背を向ける形でせっせせっせと石(意志)を積み続ける姿は、
限りなく美しい。
「花の夢」は、いまでも聴くたびにへこんでしまうくらい大好きな曲だけど、
あのまるでシャーウッドの森の奥にある沼ほどにどこまでも深く、
底なしに暗すぎる辛い辛い曲は、CHARAの全ての曲の中でも一番美しい。
つまり、そういうことなんだよ、ぜんぶ。

「花の夢」と「あれはね」、聴きたかったな。
いいや、また、今度、聴けるかも知れないっていう楽しみをもらったもんね。
あ、あと、CHARAのファンサイトをぶらーっと観てたら、
このツアーでのCHARAは結構、声の調子が良いときと悪いときがあって、
ブリッツはかなり良い方の部類に入っているらしい。
ラッキーだったのかな、良かった。


追伸 CHARAがMCで言ってたけど、赤坂BLITZ、この8月で閉鎖なんだって?
   うそーーー!!
   ショックーーーー!!
   ハイロウズが一番映える、一番純度が高くなるハコだったのにーーー。
   なんでなんでーーー、TBS、まちがってるよー。
   ACTシアターはいっくらでも潰して良いけど、ブリッツはだめーーー!!

   どか、断固、反対。


どか |mailhomepage

My追加