あたろーの日記
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2005年02月05日(土) 古井由吉氏講演会

 旧暦12月27日。
 14時から東京堂書店の6階会議室で行われる古井由吉講演会を聴きに行くため、神保町に行った。
 土曜で晴れてて昼間の神保町はちょいと久しぶり。古書店が連なる靖国通りはさすがに人が多い。古書店店頭の均一台にも人が群がっているのを見て、ムラムラしてくる。講演会終わったら自分も古書店に寄る時間少しはあるだろうな、と、ゆっくり寝過ぎたことを後悔する。
 東京堂書店の6階に上がり、受付を済ませて会場となっている会議室に入ると、14時少し前についたので、もうほぼ満席。1月26日に発売になった『聖なるものを訪ねて』(古井由吉・集英社)を予約&購入する際に申し込んだ読者達、おそらく皆古井ファンですが、100名ほどの聴衆の約5〜6割が古井氏と同世代の男性(古井氏は1937年生)、残りはやはり同じくらいの女性、でも1〜2割ほどは私位の世代(30代とおぼしき男性が多いのは少し驚いたけど、納得できる)。自分が好きな作家の読者層って、ふだんあまり意識していないので、こういうイベントでいろいろ気づくことがあり、面白いと思った。
 古井氏の講演は約1時間。どんなお話になるのか、わくわくしながら会場に向かった私なのですが、実は、途中爆睡してしまった。。。。。初め、古井氏が前のテーブル席に座って話し始めたとき、好きな作家が目の前にいて話しているということにすごくコーフンして、どんなことも聞き漏らすまい、と思って聞いていたのに、おっとり穏やかにお話になる古井氏のお声が、次第次第に心地よい子守歌に聞こえるようになり、いつしか睡魔がやってきて、時々思い出したようにハッと目覚めてさも聞いていたかのように前をじっと見つめはするのですが、やっぱり再びいつしか・・・という感じで、一体どんなお話だったかというと、最初は日本経済の話に日本の文学界の状況を絡ませて・・・ご自分の入院生活の話とか・・・えっと、それで、最後に「私は自分の作品の中に退屈を作っていきたい。私の文章を読んだ方が退屈を感じて頂ければ・・・それで、本日の私の話も退屈を感じてくださったでしょうか」と締めくくられた。その、一番最後のところで睡魔から解放されようやく真面目な聴衆に生まれ変わろうとしていた私は、ギョッとしてしまいましたです。
 講演のあとはサイン会。前の列の人達から順番に古井氏のテーブルの前に『聖なるものを訪ねて』を持って並び、他の人達は皆順番が来るまでそのまま席に座って待つ。しーんとした会場で、前方の席に座っている年輩の男性がしきりに、「ほー」「ふーん」「はあ〜」「へ〜」と感嘆の声を漏らすのが響いている。で、そのおじさん、「ふゥ〜ん、凄いねえ、偉いねえ、若い人達も結構来てるんだねえ〜」と会場を見回しながら、自分の隣に座っている若い男性に向かって言う。その声があまりにでかいもんだから、会場中の人がおじさんに注目してしまう。「今時の若い人達もこういうの読むんだねえ、ふゥ〜〜ん」。会場からくすくす笑い声。話しかけられている男性のほうは少し迷惑そうに、頷いてはいる。と、おじさん、「だってこの人の書くの難しいでしょう、なに書いてあるのか分からないもん」と。会場中大爆笑。サインを書いている古井氏も失笑している。作家本人の目の前で凄いこというなあ、このおじさん(笑)。てっきり古井氏のお知り合いかと思ったら、違った。自分がサインしてもらう番になって、古井氏の前に立ったら、以前サインしてもらった本も持ってきてたようで、それを見せていた。で、今日は横須賀から来ました、とも言っていた。もう何十年も前からの筋金入りのファンなんでしょうなあ。
 確かに古井氏の書くものは分かりづらい。時たま何書いてあるのか理解しがたい部分もある。ただ、そういうところを感覚的に捉えることができれば、いいのかな、という気がする。
 私も本にサインをしてもらう番に。こういうのって、緊張するもんですね。とてもドキドキした。いつも読んでいる作家のすぐ目の前に立ち、自分がさっきまで読んでいたその方の著作に、自分の名前と、作家のサインを書いて貰う。前に並んでいた人達は気の利いたことを二言三言話して、古井氏も「ああ、そうですか」「はあ、なるほど」と答えていたけれど、私ときたらそんな度胸などからきしなく、ただ、本を受け取るとき、「ありがとうございます、大切にします」と、蚊の鳴くような声で言っただけです。普段の図太い私はどこへ行ったのだ。
 会場をあとにしたのは15時半過ぎ。このあと小唄のお稽古に行かねばならない。が、その前に、1時間半くらいは、古書店回れるかな、と、神保町の町に飛び出していく。で、古書モールにて嬉しい収穫。『池塘春草』(瀧川政次郎・青蛙房)が600円『未刊随筆百種』(三田村鳶魚編・中央公論社)の3・5・6・7巻と『桃蹊雑話』(石川久徴著・歴史図書社)が各300円。『池塘春草』は和漢古典籍から艶話を収集し随筆風に時代別にまとめたもの。『未刊随筆百種』には、他ではなかなか読めない江戸時代の随筆類が多く集められていて、ほんとは12巻揃えで欲しいのですが、1冊300円というのは嬉しい値段。でも、最も欲しいのは1巻で、ここに載っている『文政年間漫録』と『博奕仕方風聞書』は、去年図書館で借りたのですが、手元に置いておきたいものでした。『桃蹊雑話』は水戸藩でのさまざまな事蹟を随筆風にまとめたもの。こういう随筆に出てくる、「ありえない〜」というような話を探すのが面白い。
 一度入ったらなかなか抜け出ることが出来ないのが神保町。もっといたかったけど、荷物の重さが限界に達したので、小唄のお稽古に浅草橋へ。「古井氏の講演会が終わったら行きます」、などとほざいていたのに、少し遅くなった。「神保町で迷子になりました」と一応うそぶいてはみるものの、ずっしり重そうな紙袋で、なんで遅くなったかはバレバレ。なんだけど、すぐにお稽古、ではなくて、お茶して、古井氏のサイン見せびらかして、講演の内容を聞かれて答えに詰まり、みんなに笑われる。そこにいるメンバーの多くが、同じ同人誌の仲間なので、ひとしきり古井氏の話など。そのあと、テーブルの上にあった金銀の輪っかを、私が誰かの腕輪かなんかだろうとどかしたら、バラバラと分解してしまい、それがなんと知恵の輪だったので、みんなに「元に戻してごらん」と言われたのがきっかけとなり、知恵の輪教室になってしまう。知恵の輪、どうしても元に戻せなくて、やがて癇癪を起こして放り投げたわたくし。
 小唄のお稽古は22時近くまで続いた。普段自宅アパートで1人練習するときは、周囲に音が漏れないように、爪先でかするようにつまびくだけなので、どうしてもストレスが溜まってしまう。そこへ行くと、みんなでお稽古の日は、マンションの一室なので、遠慮なく音を出すことが出来る。私の音色はあまりよくない、同じ三味線を使っても、私と他の人とは出せる音色が違う。なんでかなー。どうして他の人は響きがいいんだろう?練習が足りない、それが一番の原因かな。反省。
 


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