あたろーの日記
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| 2003年07月26日(土) |
イラク特措法案強行採決に思う(ニュース23を見て) |
日本の平和主義を根本から揺るがす法案が、十分な議論もなされないままいとも簡単に成立してしまった。 こんなことがあっていいのだろうか? 昨夜のTBS「ニュース23」(ここで映像が見れます⇒)http://news.tbs.co.jp/tbs_main.htmlを見たら、23日の党首討論で、民主党の菅代表が、「総理はこれを読まれたんでしょうかね」と、新潟県加茂市の市長が全国会議員に対して提出した要望書について言及していた。この、「イラク特措法案を廃案とすることを求める要望書」を書いた加茂市長というのが、もと防衛庁幹部(教育訓練局長)の小池清彦氏。防衛庁時代もPKO法案に対して慎重であるべきとの立場だった人だそうだ。 今でも地元の自衛隊員との交流がある小池氏がテレビのインタビューで「イラク特措法案が通れば、もはや、自衛隊の海外派兵は自由自在になります」「もはや憲法の歯止めは効かなくなります」と述べられていた。 小池氏が要望書を各所に送付してから、多くの賛同の手紙が寄せられ、その中にはかつての上司や仲間からのものも多いそうだ。 「要望書について全面的に賛成です。退職後、外交防衛政策が変貌してしまったことに危機感を持っていました」「すべて丸投げしてイラクへ出すなら、出された自衛隊がかわいそうです」「(要望書は)現役の自衛隊員達にとっても、まことにありがたきことと存じます」とは、防衛庁・自衛隊OBからの賛同の声。 「なかなか聞こえてこない自衛隊員の本音はこれと同じはず」(小池氏) 「一国の軍事組織を率いる人達は愛情を根本としなければいけない。イラクへ行く(自衛隊員の)思いがどんなものなのか、総理も防衛庁長官も、国会議員も、自分の身になって考えてみられるといい」(小池氏)
この小池氏の要望書がもっと早く広くメディアに取り上げられてよいものなのに、と、残念。「(どこが戦闘地域でどこが非戦闘地域か)そんなの私に聞かれたって分かるはずがない」とニヤつきながら答える小泉首相。ヤジ、怒号、暴力沙汰のいい加減な国会討論。その中で、日本の平和憲法を根本から覆す非常に危険な法案がさっさと採決されてしまう現状に、憤りを感じる。 しかも、イラク復興支援、と言いながら、実際の自衛隊派遣は11月の選挙後になるかもしれないとのこと。なんだ、結局は、イラクの復興なんかではなくて、大切なのは自分達が選挙で勝つことなんだ。イラクに自衛隊を派遣して、実際に自衛隊員に犠牲者が出る、あるいは戦闘に巻き込まれるなどの被害が出た場合、選挙の大勢に大きな影響が出かねないと危惧している。どうせ犠牲が出るなら選挙後に、とのつもり?小泉首相、ホントにイラクの人達を助けるつもりでいるの? 本当にイラク復興支援を考えるなら、イラクの人達が望んでいることを、アメリカの視点でなく、実際のイラク国民の立場に立って探ることが必要なんじゃないかと思う。他国の領土へ軍隊を派遣する(自衛隊派遣とはそういうこと)のは戦後の日本に課せられた役割ではない。医療体制や生活環境を整える支援とか、経済援助とか、日本にできることは沢山ある。なんで自衛隊派遣ばかりに躍起になるのか。 とにかく、小泉首相の思惑どおり、自衛隊を海外へ派兵する法案が成立してしまった。これで、今後、アメリカの要請があれば海外にどんどん自衛隊員を派遣することができる。平和憲法なし崩し解体法案だ。 以下は、メーリングリストで頂いた、加茂市長の要望書です。 無断転載になってしまうのですが、この要望書が掲載されているという当の加茂市のホームページhttp://www.city.kamo.niigata.jp/ が混んでいてなかなか表示されません。でも、この要望書は、政治家だけでなく、もっともっと多くの人が目を通すべき内容だと思う。とても大切なものだ。ここに全文をコピーして載せます。原文そのままです。
平成15年7月8日
様
元防衛庁教育訓練局長 新 潟 県 加 茂 市 長 小 池 清 彦
イラク特措法案を廃案とすることを求める要望書の 写しの送付について
謹啓
時下益々御清祥のこととお慶び申し上げます。
イラク特措法案は、衆議院を通過し、現在参議院において審議中であります。
この法案は、憲法に違反する上に、極めて問題の多い法案であります。
イラク国民や中東諸国民が望んでいない自衛隊を、招かれざる客として戦場へ 派遣し、国の宝である自衛隊員をいたずらに死地に赴かしめる法案であります。
小泉総理は、イラクでは、夜盗・強盗の類の攻撃があるだけであるので戦闘行 為は行われていないと答弁しておられますが、イラク全土がフセイン側の不正 規軍によるゲリラ攻撃が行われているゲリラ戦の戦場であります。正規軍によ る攻撃のみが戦闘行為なのではありません。
私は、事態を座視するに忍びず、このたび同封の要望書を衆参両議員各位及び 各大臣に提出いたしました。
御一読いただければ幸甚に存じます。
時節柄幾重にも御自愛下さいますようお祈り申し上げます。 敬具
平成15年7月8日 衆議院議員各位様 参議院議員各位様 各 大 臣 様 元防衛庁教育訓練局長 新 潟 県 加 茂 市長 小 池 清 彦 イラク特措法案を廃案とすることを求める要望書
1 イラク全土は、常にロケット弾攻撃、自爆テロ、仕掛爆弾攻撃等の危険が 存在する地域であり、戦闘行為が行われている地域であります。このことは、 米国による戦闘終結宣言によって左右されるものではありません。
2 「戦闘行為」を「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は 物を破壊する行為」と定義し、1に掲げる攻撃が「戦闘行為」に当たらないと するイラク特措法の考え方は詭弁であり、強弁であります。
3 イラクは、全土において、前線も後方もありません。イラク全土がいまだ戦 場なのであります。
4 このような地域へ自衛隊を派遣することは、明確な海外派兵であり、明ら かに憲法第9条に違反する行為であります。イラク特措法が定めるような海外 派兵さえも、憲法第9条の下で許されるとするならば、憲法第9条の下ででき ないことは、ほとんど何もないということになります。
5 憲法第9条は、もともとアメリカによって押し付けられたものであること は事実でありますが、しかし、同時に憲法第9条は、終戦後今日までの58年 間、日本及び日本国民が国際武力紛争に巻き込まれることを固く防止して来た のであります。また、憲法第9条の存在によって、日本人は世界中の人々から 平和愛好国民として敬愛され、今日の地位を築くことができたのであります。 さきの大戦において、祖国のため、戦火に散華された英霊が望まれたことは、 祖国日本が再び国際武力紛争に巻き込まれることがないようにとのことであり、 日本国民が再び戦場で斃れることのないようにということであったはずであり ます。私達は今一度大戦中の苦い経験をかみしめ、昭和20年8月15日の原 点に立ち還るべきであります。
6 イラク派兵がひと度行われるならば、平和愛好国民としての日本人に対す る世界の特別の敬愛は消滅し、日本は普通の国となって、多くの災いが降りか かって来ることになりましょう。
7 イラク国民は、決して日本国自衛隊の派遣を求めてはおりません。中東諸国 の国民も自衛隊の派遣を求めてはおりません。自衛隊は招かれざる客なのであ ります。
8 自衛隊の本務は、祖国日本の防衛であります。自衛隊員は、我が国の領土が 侵略された場合には、命をかけて国を守る決意で入隊し、訓練に励んでいる人 達でありますが、イラクで命を危険にさらすことを決意して入隊して来た人達 ではないのであります。「国から給料を貰っているのだから、イラクへでもど こへでも行って命を落とせ」とか、「事に臨んでは危険をかえりみない職業だ から、どこへでも行って命を落とせ」ということにはならないのであります。 自衛隊員の募集ポスターやパンフレットには、「希望に満ちた立派な職場だ」 とのみ書いてあるのであって、「イラクへ行って生命を危険にさらせ」とは書 いてないのであります。
9 私は市町村長の一人として、毎年自衛隊入隊者激励会に出席し、防衛庁・ 自衛隊の先輩の一人として、「自衛隊はすばらしい職場です。どうかこの職場 ですばらしい青春を過ごし、意義ある人生を送って下さい。」と祝福し、励ま して参りました。もし、イラク特措法が成立して、私が激励した人達が、招か れざる客として、イラクに派遣されて、万一生命を落とすようなことになった ら、私は今度は自衛隊入隊者激励会において、何と申し上げたらよいのでしょ うか。私は言葉を知りません。
10 自衛隊は、現在は不況下のため隊員の募集難は解消しておりますが、つい 先日までは、著しい募集難の中にありました。今後の少子化によって、自衛隊 は近い将来再び大きな募集難の時代に入ることになると予想されます。このた びの自衛隊のイラク派遣は、戦場への派遣でありますので、犠牲者が出る可能 性は、大きなものがあります。もし、イラクで犠牲者が出た場合、自衛隊は職 場としての魅力を失い、大募集難が到来することになりましょう。隊員が集ま らなくなった自衛隊は、その根幹が崩壊するのであります。その時は、徴兵制 が取りざたされることになり、ファシズムが台頭する危険さえ出て参ります。
11 イラクで犠牲者が出た場合、自衛隊員の不満は大きなものとなり、国内に 大きな衝撃を与え、極めて好ましくない事態が起こってくることを危惧するも のであります。
12 「兵は妄りに動かすべからず」。古今の兵法の鉄則であります。兵を動かす ことを好む者は、いずれ、手痛い打撃を受けるのであります。それは、やがて 国民を不幸に陥れることになるのであります。安易に兵を動かしてはなりませ ん。アメリカに気兼ねして、イラク国民と中東諸国民が欲せぬ派兵をしてはな りません。
13 防衛政策の中核である防衛力整備をおろそかにして、海外派兵のことばか り考えることは、大きな誤りであります。国土が侵略されたとき、現在の自衛 隊の防衛力は、独力でどの程度まで祖国を防衛することができるのですか。極 めて不十分な防衛力ではありませんか。この程度の防衛努力しかできない国が、 イラク派兵に狂奔するなど、「生兵法大怪我のもと」であります。今こそ日本 は、海外派兵重視の防衛政策から防衛力整備重視の防衛政策に転換すべき時で あります。名刀は鍛えぬいて、されどしっかりと鞘の中に収めておくのが剣の 道であり、兵法の極意であります。
14 以上に鑑み、21世紀の日本及び日本国民の安泰を祈念し、イラク特措法 は廃案とされるよう、強く要望するものであります。
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