劇団☆新感線『五右衛門ロック』  2008年08月10日(日)
8/9(土) 大阪公演を観てきました。
mixi掲載文を再アップします。
ふ う。。
レビューについてはメモ列挙。

○っていうかこれ、ルパン三世やん!!峰不二子やん!銭形警部やん!!最後に飛んでどっかいくの、不二子ちゃんやん!!
○松雪泰子【真砂のお竜】=不二子。盗人。その場その場で身を預ける相手(オトコ)を変える。そのオトコは物語上の重要人物、ないしは敵方のボス。そして美貌と抜群のスタイルが武器。しなやかで戦闘力が高く歌と踊りもいける。恋に生きるが誰にも己を明け渡さない。宝物を一人で持ち去る。まさに不二子!!
○男の子が憧れるような冒険譚。カリオストロの城!?昔の宮崎駿!?とにかく冒険、南の島の宝と王と陰謀と争いと!スリル満点でドキドキ。みんな歌ってノッてワクワク。そんな総合エンターテイメント。よくぞここまで作った・・・劇団四季みたいな、ディズニーランド的なものになっていかなければいいが・・・。人の心の闇や影を描くことを今のまま続けてほしいです。

○ついに飛ぶようになった。とうとう垂直移動も出来るようになったか・・・。ラストシーンの昇天の演出がさらに工夫されればもっと泣けるようになるかも。
○北大路欣也の存在感は異常。台本にも尋常じゃない存在感の王、として書いてあるぐらいなのでそういう作りこみがされているからだろうが、声の通りも、一言一言の響きも、なんか別格。
○ストーリー、登場人物、時代背景などの構成は今までの新感線を完全に踏襲。スタートで既に豊臣秀吉が出てきたり、関係人物のアイツやコイツが忍びだったとか、実は日本国の侍でしたとかいうあたり、もうまるっきり今までの番外編やん!て、面白いからいいんですが。
『髑髏城の七人』が関東、『SHIROH』が天草・島原、そして今回はタタラ島という南方。どんどん南下するなあ・・・。

○舞台演出切替のスピードに驚嘆。どういう速さでセットを組み替えてるんだ・・・。10秒あるかないかで一転させているのは本当に凄い。
客の眼に照明をガチッと当てておいて煙や轟音で意識を持っていきながら、その間の数秒間で暗転した舞台上を組み替えている。
○道具の使い方が更に巧妙になっている! 船とか、誰だあんなうまいこと考えた人は! 
(木材を模したブロックを逆三角形に並べて組むことで、船の先が客席を向いているように見える。頂点をずらして組み替えると、まるで船全体が方向転換したように見える。見立ての技術がすごい。)
佐門字が乗って追い掛けてくるタライがまるで本当に、波打つ海の上を漕いでやって来ているように見える。光の演出がすごい。

○だんだん悪人、大ボスに悲哀や深い絶望が組み込まれるようになってきた。
(「髑髏城」天魔王=野望のみ。直球に悪。が、小さい人でした。
 「朧の森」ライ=己の野望と欲で己自身を貫いてしまった。が、魔性の力を借りた、分不相応なまでの強すぎる悪。)
 
今作・クガイ=存在感はあるが、自分の存在意義は最終目的である「島の沈没」=「秘石の消滅」だけ。それゆえに今現在を苛烈に、恐怖政治で生きていても、そこにはストイックさしかなく、悪でも野望でもない。王自身も、ただ目的を守り、皆が不幸にならない道をと願っているだけなので、その諦念というか、あらゆる前向きな気持ちを封じ込めた後の姿をしている。息子を亡くした後の万俵家のお父様という感じか。

○松雪泰子【真砂のお竜】のプロポーションの良さは一体なんだ。
「何を食べたらそんな体になるのか!?」と陳腐な台詞を言わずにはおれぬ。
歌い方がまるでカーブを思いっきり掛けた変化球みたいで、聞き取れないところが多かったのですが、声をくねらさずストレートに出したときは相当カッコいい。力強い台詞、妖艶な台詞はいい感じ。華奢ですらっと長い肢体をくねらせポーズをとる時、この人ほんとに綺麗だなと唸らされます。テレビで映ってるのはなんだったんだ・・・あんなもんじゃないぞ。。
○高田聖子【インガ】がいつもにも増して可愛かった。思慕を歌い上げながら黒板にアホなこと書くのは反則。すげえなあ・・・笑いに走ってもいけるのか・・・。
私はこの人の演技力と歌唱力が非常に好きで、出ていると安心します。歌の安定感が半端ではない。また、アドリブのスピード感も。さすが、新感線の定番女優。
おばちゃんキャラ、姐御キャラをやっても存在感抜群。今回は一回り若い気がします。年齢層七変化。素の写真とか、すごい可愛いし。

○森山未来【カルマ王子】の動きの良さ、殺陣での飛び回り方や即・歌に転じるときのパワーは秀逸。メイク後の顔は美人過ぎて、なんか惚れそう。むむむ。反則。
○栗根まこと【タタラ国・ガモー将軍】がけっこうシリアスな役柄だったので驚き。いびつで変なキャラをやると炸裂するのに、真面目に王に忠誠を誓って剣を振るう様は・・・かっこよかった。基礎実力が相当ある。いつも必ず出てはるのでどんな役をやるのか実は一番楽しみにしてます。
○橋本じゅん【バラバ国・ボノー将軍】・・・すごいなあ。この人は。キャスト全員分まで面白いところを一手に引き受けて、客のテンションを引き付けた。台本読んでもそこまでイメージの浮かばなかったところを、この人が喋ると面白くて仕方がない。

○江口洋介【岩倉佐門字】、最初はパッとしなかったが島に漂着して武士の堅苦しさが抜けたあたりからテンションがおかしくなり、原住民とギター弾いて歌う場面(妙にウッドストックというかヒッピー村なシーンだった)ところから完全に弾けてしまう。真面目な顔をして陽気なことをするのが上手い。素敵だ。。
○濱田マリ【シュザク夫人】と橋本じゅんの掛け合いが見事。笑わせてもらった。毎回、何かしら「スケールが少し小さくて、ちょっとへたれな男性を、愛して支える女」が出てきますが、今回はまったく、ボノー将軍の小ささを直接歌で歌うんですから。愛。

○古田新太【石川五右衛門】 さすが。前に『朧の森に棲む鬼』で書いたように、雄弁に喋り続けるのではなくて静かに黙っているところから短めの言葉で真を突くのが冴える俳優、という感想を持ちましたが、今作でもその良さが使われています。ツッコミに徹する場面も多いし。登場の回数やインパクトはどの俳優・キャラもほぼ均等に割り当ててあり、石川五右衛門がそんなにたくさん出るわけではないんです。もっとばんばん出るのかと思ったら、各キャラの見せ場を丁寧に作ってあったので。
見どころとして、他のキャラに変装して現われ、正体を明かすというシーンが2回あります。が、そこでわざわざ本物の俳優と入れ替わりで古田新太が同じ種類の衣装を着て現われます。体格が全く違うので滅茶苦茶面白いです。髪型はパイナップルだし。もうこの人好きやわあ。なんでこんなことできるんやろう、お茶目やし。

最後の最後も、五右衛門自らがクガイ王にリスペクトを示して終わりますし。チャンバラで戦ってるシーン、島や月生石の秘密を解き明かすシーンは印象に残りましたがストーリー的には完全にアウトサイダー。そこに過去の因縁が幾つも絡まってて彼の存在感が浮かび上がるという、設定上の主役みたいな感じ。その因縁も設定のみで、昔知ってた、ぐらいです。
実質的な人間ドラマでは、五右衛門の外側、タタラ島の周辺で渦巻いています。彼は物語を先に勧めるための起爆剤に留まり、クガイ王とカルマ王子の深い因縁と親子愛とか、クガイ王の治めるタタラ島に秘められた月生石の利権を巡る他国との駆け引き、といったドロドロしたところが核になっている。そこに漂着して入り込んだ五右衛門が島の真実を知る・・・といった具合で。そういうアウトサイダーが暴いていく実の姿、という謎解き話でもあり。
『髑髏城の七人』で見せた「過去の縁」の張り巡らされた糸が、今回も存分に出てきます。設定的なものですが。そしてエンディングは必ずしも円満解決ではなく犠牲がけっこうあったりするのでそこで私は満足です。ハッピーエンドなんてくそくらえだ。

○完全にイヤなキャラ、がいない。これは新感線演劇の鉄則かと思うぐらい。悪役、裏切り役、憎まれ役は必ずいる。(周囲全員をペテンにかけて最後は総取りを狙う異国商人ペドロ・モッカ&アビラ・リマーニャ。無垢なカルマ王子をたぶらかして騙し続けてきたシュザク夫人&ボノー将軍など)
けれど、どんでん返しでその企みを逆につぶされて情けない羽目に陥ったり、面白可笑しい歌と踊りを繰り返されたり、変なところで弱みがあったり、どうにも憎みきれません。本来なら感情移入して「こいつ・・・ひどいやつだ!」「はよ斬られろ!」という気持ちが高まるのですが。それが高まっていく最中で落とし穴にはめられたり、銃がびろんびろんに切り裂かれたり、「あなたはちっちゃいの」の歌が始まったりする。うまいなあと思います。愛着が沸いてしまうじゃないですか。
一人一人のキャラ&出演者を愛して作りこまれているなあと感じさせられます




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