 |
 |
■■■
■■
■ 『野ばらの月』パンフレット掲載文。
演出の戯言『芸術のちから』
ノンバーバル(言葉をつかわない)の作品を創る。 僕としては二回目の機会、一回目は同じホールで ほぼ同じチームで「セロ弾きのゴーシュ」をリライ トして「Gauche」という作品を創らせてもらった。 コロナ禍真っ盛り、宮沢賢治が沖縄の今と出逢っ て「セロ弾きのゴーシュ」を書き換えていく物語 だ。普段「言葉」に拘り、その言葉を喋る「身体」 を中心に作品創りをするのだが、この「言葉」が 使えないハードルに難渋しながら、出自の違うプ レイヤー四人とあーでもないこーでもないを繰り 返し、それぞれの武器(コンテンポラリーダンス、 琉舞、人形美術家、俳優)を目いっぱい作品に入 れ込み、それに音楽隊、その世界を支える美術、 音響、照明、そして、この場の力を借りた正に創 意工夫の賜物と言えるものになった。チーム全体 でクリエーションを楽しみ、その底には互いへの リスペクトがとても大きかった実感がある。その 時も「言葉は使わない」(意味のある言葉を発し ない)けれど、まずは手掛かりにと、大量の「言 葉」で書き込んだ分厚い台本(しかも普段書かな い演出意図やら、まだ確定していない「こうでき る?」や「悩み中」の呟きまで…言わば設計図)を 用意してそれを皆で解体していった。 今回は「国境線」をテーマに、やっぱりノンバーバ ルをやるとは思えない厚みの台本を大量の「言 葉」で書いた。メンバーも前回の世界を構築してく れた顔ぶれを中心に、また得意なモノの違う面々 に加わってもらったチームで、僕の書いた狭い世 界を目いっぱい広げてもらいながら「言語に縛ら れない」作品を描いてきた。そして物語を完結さ せる最後のピースはお客さま皆さん、四人が紡ぐ 物語に想像力をフルに使ってご参加ください。 大国の傍若無人な暴君の都合だけで進んでいく 世界。 歴史に学ぶこともないまま、不安と恐怖を煽り、 都合の悪い事はなかったことにし、反対の声をあ げる機会を、現実を見る機会を、 遂には教育基本法に抵触するとまで機に乗じる 現在。 戦うなら、たくさんの武器を持つのでなく、想像を めぐらす力を養うこと、考えること、相手を理解し ようと努めること─ もちろん、簡単ではないし、その事で傷つくことも あるけれど、強い誰かの意向に準じるのではな く、僕ら一人一人が自ら気付いていくことが大事 なのだと、クリエーションを重ねながら教えられて いる。 この世界にある「あたりまえ、こうあるべき」をい い意味で疑うこと、 芸術にはそういう力がある。 元始に神天地を創造たまへり 今人神の創造 りたまへる地に 垣根を作りて これを国境と名 付けて世界を二つに分かつ。その故にや 月も 半分になりて中空にとまどう ある人の創作ノートにあった一文にインスピレー ションをもらった世界、どうぞ最後までお楽しみく ださい。
2026年06月24日(水)
|
|
 |