再生するタワゴトver.5
りばいぶ



 スターダス・21俳優クラス修了公演『桜の園』パンフ掲載文。


演出の戯言

今年の俳優クラス修了公演の演目に、チェーホフの四大戯曲の一つ『桜の園』を選んだ。幾つかの候補の中から、実際に読んで、感想も聞きつつ、挑戦しがいあるもの、簡単にはいかないものを敢えて選択するのは、いつもの通り。
長い読み合わせ期間経て、11月下旬キャスティング。大変さは共有されたかと思っていた。
いやいや、しかし。
とても腰の重いクラスだったー
…返事はいいのだけれど(笑)
人任せ感が根強くあったー
…返事はとてもいいのだけれど(笑)
その結果、稽古最終盤を前に、様々のコトを突きつけられるコトになった。自分のエンジンで動こうとするコト。価値観の違うモノを、ただ、わからないですませないコト。セリフや行為を支える思いや事象に興味を持つコト、自分の頭で考えてみるコト、己の体験に照らすコト、想像力を巡らすコト……
2月中旬、腰の重い面々も、ここへ来て俄然瞳の色が変わって来た。敵いそうにないものとちゃんと対峙するコト、自分と向き合うコト、ちゃんと他人と目を合わせてモノをつくるコト、想像を発展させる為の裏打ちを考えるコト。ちゃんと舞台上で交流するコト。役の人生と本当のところで向き合うコト。
…遅いような気もしながら、でも、気づいた時がいつだって変わる、伸びることができるチャンスである。お芝居なんて所詮ウソかもしれないが、この費やした時間にウソはない。この苦しくも楽しく、クセになる(?)体験がこの後の自分をつくっていくのだからー

そして芝居は観てくださる方々との共犯関係があって、初めて成立する旅、でもある。普遍的な創造力に富んだ旅となりますかどうか。
狭い所で恐縮ですが、休憩込みの2時間25分弱の旅、どうぞ最後までお楽しみください。

藤井ごう



2017年02月26日(日)



 Ring-Bong『逢坂〜めぐりのめあて〜』パンフ掲載文。

演出の戯言

資料を漁っていて、坂口さん演じる松田のモデル、巨怪正力松太郎に宛てた文章に出逢った。
「あなたは四人の偉大なお子さんをお産みになりました。長男は読売新聞、次男は読売巨人軍、三男は日本テレビ、そして四人目は目下妊娠中とも言うべき、原子力平和利用。そのうち最も冠たるものは原子力平和利用になるであろうが、われわれ野球ファンは、次男坊をいちばん愛しています。」
昭和33年ベースボールマガジン社の読者からの投稿欄。現在平成29年、四人目の扱いは未だならず、持て余し、でもコントロールできていると誰かは言う。次男坊は僕も大好きだけど…。
この作品は史実を基にしたフィクションではあるが、市井の人々の言葉に、僕らはー
どんな今を過去から学び、
どんな未来に繋げていくのか。
どんな歩を進めていくのか。
山谷典子は不器用に問いかけ続ける。
その思いに俳優陣が身体と心を費やし世界を構築する。
その小さいけれど確実な一歩は、
いつかの大きなウネリに繋がっている。
そんな事を思いながら、世界の深度(進度)を増すために、日々稽古を重ねている。
本日はご来場ありがとうございます、
狭い所で恐縮ですが最後までお楽しみください。

藤井ごう


2017年02月13日(月)
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