KENの日記
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2007年04月21日(土) ロストロポービッチの映画

前から予約鑑賞券を買っておいた「ロストロポービッチ・ガリーナ」の映画を見てきました。場所は渋谷のシアター・イメージフォーラム。日本プレミアは本日21日からでした。本日3回目の上映は午後4時30分からでしたが、劇場は空席が多くその分ゆったりと鑑賞できました。


http://www.sokurov.jp/



チェリストのロストロポービッチとソプラノ歌手のガリーナ・ヴィシネフスカヤは結婚50年を迎えましたが、1978年に旧ソ連から国外追放を受けたので旧ソ連時代の映像・記録が殆ど残っていないのです。特にボリショイ劇場の看板ソプラノ歌手であったヴィシネフスカヤの映像は殆どありません。まだ見たことがない昔の映像があるのではないかと期待して行きました。


残念ながら今回の映画の構成は殆ど以下に限られています。
○結婚50周年を祝うモスクワでのパーティ
○ロストロポービッチのウイーンフィルとのコンサートリハーサル風景
○ビシネフスカヤのレッスン風景
○自宅におけるロストロポービッチ、ビシネフスカヤへのインタビュー


これらを中心に、古い写真を効果的に使った回想シーンが随所に織り込まれていますが、新しい発見や、彼等が過ごしたモスクワ・ペトログラードの風景は一切ありません。正直言って金を節約してドキュメンタリーを作った感じですね。


それでも、ロストロポービッチ、ビシネフスカヤの人物像は描けていたと思います。音楽家の家に生まれて小さい頃から神童といわれたロストロポービッチに対して、苦労して育ったビシネフスカヤの内面の複雑さ、それがオペラ歌手としての成功に大きく寄与してきたことが伺えました。ロストロポービッチが大家らしからぬ非常に気さくな人柄であることに対し、ビシネフスカヤは実に複雑で巨大な人間性を持っているように思われます。


嘗ての帝政ロシア時代から旧ソ連時代を通じて、ロシア芸術の真髄は何なのかということに非常に興味を持っています。チャイコフスキーを始めとする多くの作曲家を輩出し、トルストイ・ドストエフスキーを生んだロシアとは何なのか知りたく思っています。嘗て西側の度肝を抜いた「ムラビンスキー・レニングラードフィル」、リヒテル、ロストロポービッチ。ガリーナが正当に評価されていたら、同時代のカラスと双璧をなしたと思うのです。そのガリーナが今は故郷のモスクワで後進の指導にあたっています。ロシアの伝統を現在のロシアの若者に伝えています。


先週ベルディの「運命の力」(キーロフ・ゲルギエフ)を録画しましたが、この「運命の力」は、ベルディが招かれてロシアのペトログラードで完成させたものでした。




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