1/15(土) 大事件勃発!
以下に公開するのは三日前の1月12日に書いた日記。
いろいろ考えるところあって、今まで公開を控えてたんだけど、
やっぱりこれはオレの日記として欠かせない「事件」だし、
気持ちも落ち着いてきたし、もうそろそろいいかなあと。

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ドえらいことになってしまった・・・。
思えば、オレはいつも「事件」を待ち望んでた気がする。
平々凡々(でもないか)な毎日から少しはみ出したくて、
かといって自分から動き出す行動力や思い切りもなくて。
日常を面白くしてくれる、オレに変化をもたらしてくれる、
そんな「事件」をいつも受動的に待ってた気がする。今にして思えば。
そして今、その「事件」が、いや、「大事件」が起ころうとしている・・・。

・・・こんな大層な前振りをしたとしても、
まだまだ足りないくらいの大事件勃発ですよ!

ことの始まりは、今朝梱包を終えて、何気なくmixiを見てたときのこと。
たまーに見てる北海道の男の子の日記があってね。
こいつはパンクなルックスがいかした18歳で、
足あとを付けたらその度に付け返してくれるもんだから、
何日かに一度のペースで日記やプロフィールを覗いてたのね。
そいつの日記を今朝見ると、何やら物騒なことが書かれてまして。

誰かしばらくの間泊まらせてもらえませんか?
この家にいたら下手すれば殺される。
本当に今ヤバい。


な、何やらただ事じゃなさそうな不穏な匂い。
家庭で虐待でもされてるのか、単に鬱の延長上にある被害妄想なのか、
もしくは逃避願望を叶えるために嘘八百を並べ立ててるのか、
なんだか詳しい事情は一切わからないんだけど、
とにかく家を出たいということが切実に書かれてて。

これを読んでオレは思ったのな。

「知らないヤツが部屋に転がり込んでくるって・・・映画みたいでめちゃくちゃ面白くねぇ?」

ちなみにうちの部屋はボロアパートの6畳ワンルーム。
物だらけで居住スペースは2畳ほどだし、風呂もなければ寝るスペースすらない。
さらに、少し考えれば問題は山積み。
知らないヤツを家に泊めるって・・・大丈夫なのか?
そもそもオレはそいつの日記を流し読みしてただけで、
ちゃんと読んだことがないから、そいつの素性がわからない。
盗癖があって、気が付きゃうちの貴重品がなくなってるなんてことは?
家庭内のごたごたにオレも巻き込まれてしまうなんてことは?
何か犯罪を犯しててオレまで共犯扱いってことは?
普通に考えりゃさ、絶対に相手するべきじゃないことぐらいわかってんのよ。
でもオレは直感的に楽しそうだと思ったことには首を突っ込みたいし、
いくつになろうとも、やっぱり一生バカでい続けたい。
だからメールを送りましたですよ。

「大阪でよければ来ます?」

そのときはさほど難しく考えず、軽い気持ちでメールを送ったのな。
やっぱ北海道から大阪だし、現実的に考えて無理っしょ。
そしたら向こうからさ、切実なメールが届くわけよ。
今本当に頼れる人がいなくて困ってると。
大阪でもどこでも、当分住ませてくれる人がいるならどこへでも行くと。
ただ、大阪まで行く旅費すらないと。
・・・・・・・・。

ここでさ、普通ならしょうがないかと投げ出すところだろうけど、
こんなメールを読むと、オレは無性に父性が働いちゃって。

「旅費ぐらい貸してやる!」

ああ、オレはバカだ。大バカ者だ。見ず知らずのヤツに万単位の金を貸してしまった。
しかも、荷物は着払いで送ればいいとまで世話を焼く始末。
何の得もしない、いや、むしろ狭い部屋に鬱陶しい同居人を抱え、
プラスになることなんて何もないのに、ただちょっとオモロそうというだけで。
いや、しかし! 賛否両論はあるかと思いますが、
困ってるガキを放っておくのがオッサンとして取るべき道か?
擁護してくれる人がいないなら、オレがやってやるしかねぇでしょうよ。
今日のオレって無性にかっこいい。

ここまででも充分に大事件なんですが、
本題はここから始まるんであります。

とにかくそいつは大阪に来る段取りを急ピッチで進めてて、
オレもそいつのことを何も知らないってのもなあと思い始めてきたのね。
何も知らない状態で会って、一から関係を築くというのも面白いかなあと思ってたんだけど、
せっかくそいつの日記があるんだし、今まで斜め読みしてた日記をちゃんと読んで、
そいつに関する基礎知識を一通り予習しておくかと。
すると、驚愕の事実に辿り着いたわけですよ。

生物学上の性別は女で、性同一性障害で通院中。

・・・・・・・・えぇぇぇぇぇぇっ!
えっ、お、女なの !? しかも金八の鶴本直と同じトランスジェンダー !?
同じ屋根の下に年齢が16も離れた男と女。
しかも女は性同一性障害で男として暮らしている・・・。
ということは、オレは彼、いや、彼女、いや、彼とどう接すれば・・・。
さらにさらに、日記を読み進んでいくともはや理解不能の域に。

生物学上の性別は女で、性同一性障害で通院中で、性癖はゲイ。

もうややこしすぎてわかんねぇよ!(泣)
実は女だけど自分を男と見ていて、さらに男としてゲイだと・・・。
そしてオレは、そんなヤツと当分同居生活していくと・・・。
わー、厄介極まる! 面倒! そして・・・・・俄然面白くなってきた!

いやね、もちろんそんな心の病を興味半分で面白がってるわけじゃなくて、
なんつーか、これから始まる無謀な共同生活のことを考えるとね、
初めてバンドを組んでライブをしたときのようなワクワクドキドキ感が
抑えようもなく溢れてくるのを禁じ得ませんですよ、実際。
興味半分で面白がってなんかいない、と言えば嘘になるけど、
なんか今までオレが培った概念を木っ端微塵にしてくれるような、
そこまではいかないまでも、オレの観念に大きな変化をもたらしてくれるような、
そういう予感がして胸が高鳴って、今日はほとんど寝れませんでした。
いろんな問題が起きるんだろうなあ。ワクワク。
いろんな衝突が起こるんだろうなあ。ドキドキ。
これこそ、オレがずっと待っていた「事件」だ!

彼、いや、彼女、いや、彼(ややこしいな・・・)の到着は明後日。
さて、どうなる。

あ、ちなみに確認したところ、家出ではないとのことで一安心。
こんなことで警察の厄介にはなりたくないもんねぇ。

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そこからのことは後日の日記につづく。
ご意見(批判歓迎)などいただければありがたいです。(→メッセージ

1/16(日) 彼が来るまで。
今日公開するのは1月13日に書いた日記。
彼が来るまでの心境を綴っております。

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あれから彼(以下、S)のmixi外に置かれてるサイトを見たところ、
激しいリストカットの写真(本人のもの)が掲載されてたり、
血で書かれた文字の写真(同じく本人のもの)なんかもあったりして、
こりゃSの心の病は相当ヘヴィーなレベルではなかろうかと心配に。
が、その反面、その心配を他人事のように思ってるのも事実で。
というのも、オレは彼の病をどうにかしようなんて大それたこと思ってないのよね。
ただ単に、居候させてやるってだけの話でさ、
オレごときがそこまで首を突っ込むことでもないし、
結局最後は本人自身の問題でしょうと。冷たいかもしれないけど。
とりあえずはうちの部屋を血で汚さないでくれやと。

でももし、Sがうちに来たことで病を軽くすることが出来るとすれば、
それはオレが彼に対して応援したり説教したりすることじゃなくて、
普段のオレのダメ生活を見せつけることじゃないかなと。
おまえはいろいろと考え込んで背負い込んじゃうタイプなんだろうけど、
ほら見ろ、こんなに何も考えなくても適当にどうにかなるんだぞと。
あと、しょせんは18歳で、周囲の人間関係は限られるだろうから、
オレみたいな人間と出会うのははじめてのことじゃないかなと思ってね。
そんな180度真逆の人間と出会った彼の考え方の変化も気になったりするんだな。
もしかして何も変わらないのかもしれないけど。
だったら少し寂しいなあ。

Sはようやく仙台に着いた模様。先は長い。

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次回、いよいよ到着。

1/19(水) 二人の距離。
いやはや、ついにSが大阪にやってきましたですよ。
1月14日の夜、ヨドバシカメラ付近で待ち合わせたものの、
この時点ではお互いの素性が知れず、
不思議な関係性なだけに、互いのポジションもわからず、
しかもお互い人見知り気味で、どうも微妙にぎこちない二人。
トランスジェンダーでもまだホルモン投与はしてないみたいだから、
ルックスはビジュアル系のボーイッシュな女の子といった感じ。
オレは性同一性障害ってことで勝手に上戸彩を想像してたんだけど、それは違いました(笑)。
そりゃ唇の真ん中に尖った口ピアスを付けた上戸彩はおらんわな。トホホ。

まずはうちに移動して荷物を置いて、メシを食いに近所のファミレスへ。
今までオレの周りに鬱の人間なんていなくて(理由はみんな脳天気だから)、
彼が来るまでネットで少し勉強してオレなりに考えて、
Sを傷つけないように鬱を考慮してなるべくソフトに接しようなんて思ってたんだけど、
やっぱオレには冷静にふるまうことなんて出来ないわ、この状況では。
だってさ、性同一性障害で鬱で自傷癖があってゲイでって、・・・こんな人間周りにいる?
もう聞きたいことが噴出してきて、気を遣ってる場合じゃないっしょ!
相手を気遣うどころか、自分の興味がまずありきで、矢継ぎ早に遠慮のないクエスチョンの嵐!

・いつ自分が男と気付いたのか?
・トランスでゲイってことはノーマル(女)として生きた方が楽なんじゃ?
Aセクシャルらしいけど、だったら彼氏は何をもって彼氏というのか?
・鬱にもいろんな症状があると思うんだけど、Sの鬱ってどんな鬱?(気遣いゼロ)
・将来的にはチンポ付けんの?(無神経な質問)
・リスカの跡見せて〜。(超無神経な要求)
などなど。

今にして思えばいきなり深く聞きすぎたかとも思うんだけど、
やっぱこれから一緒に生活していくんだし、まずは遠慮してる場合じゃないよなあと。
何よりも、なるべく早く彼を理解したいって気持ちがあるからこそ聞くわけだしね。
でも傷つくどころか、それはSも同じことを考えてたようで、
何も包み隠さず、洗いざらいぶっちゃけてくれたのよな。
いやー、詳しくは彼のプライバシーに関わるから伏せておくけど、
日記に書けないのがもったいない濃厚な話がてんこ盛り。ゲップ。

「相手はメンタル面に弱さを抱えてんだからもう少し労ってやれよ」という声も聞こえてきそうだけど、
でもこのぶっちゃけタイムがあったからこそ、
オレらの中で一気に距離が縮まったのも事実であってね。
オレはオレで、うちにお客さんを迎えるかのような、
少し遠慮した、かしこまった部分もあったんだけど、
この時間を経て、そんなもんいらねぇかって。
つーか、そもそもSの鬱を考慮する必要さえねぇわと。
だって、これからクソ狭い部屋で一緒に暮らしていくわけよ。
それじゃとてもかしこまってる暇なんてないだろうし、
鬱を気遣って遠慮してる余裕もあるはずないだろうし。

腹が立ちゃ怒るし、言うこと聞かなきゃ怒鳴る。
うん、こうなりゃ何も遠慮しないでいこう。
それがオレの愛情表現だとSはわかってくれるはず。
下手すると、それは危険なことかもしれないけど、
でも、なるようになるでしょ、きっと。

そんなこんなで気付くと深夜三時。ファミレスに居座ること三時間。
帰り道、行きよりも少し肩の距離が近い二人なのでありました。

1/21(金) 欲情と処理。
Sがうちに来て一週間。
初めの三日ほどは心配だからずっと一緒に行動して、
天王寺やなんばを軽く案内したりもしたけど、
ようやく大阪にも少しは慣れてきたようで(でもよく迷子になってる様子)、
最近はそれぞれ別々に行動しております。
たまーに鬱モードに入るときもあるようだけど、
やはり環境を変えたからか軽度なもので、
リスカやオーバードーズまではいかない様子。
というか、問題を起こしたら即追い出す約束。

で、この日記を読んでる人が気になってるのは一点に尽きると思うのね。
「とはいっても相手は女でしょ? 欲情はしないの?」
実際、狭いからシングルベッドに二人で寝てるし、
本人は同性気取りで目の前で普通に着替えやがるけど、
幸か不幸か、性欲は一切かき立てられませんな。
それは彼が来るまでにオレの心の準備が出来ていたからか、
もしくは、そもそもオレのタイプじゃないからかもしんないけど(笑)。
なんつーか、弟分、もしくは妹分みたいなもんだから、
欲情するどころか、「普段からナベシャツ(オッパイを圧迫するかたちで着用する
男装用の強度の強い下着)着てるから胸の形悪いよなあ」なんて言って笑ったり。
なわけで、話としては面白くもなんともなくて恐縮ですが、
Sに欲情するってことは正直一切ないっスわ、残念ながら。

でもそんなオレにも問題はあるわけで、
それは数日前、Sに直接指摘されました。
「一緒に住むってことは・・・オナニーはどうすんの?」
ギャ〜、痛いとこ突かれた〜!
そこは放っておいてほしかったが・・・。
大きい声では言えないけども、留守中にこっそり処理してますですよ・・・。

Sの話、もうちょい続きます。
次回はオレがSを呼んだ理由。

1/24(月) オレったら最高なんです。
オレは自分では結構冷静沈着と思ってたけど、
ふとした思いつきで見ず知らずのSを住まわせることになり、
Sが来ることが決まってから、改めて冷静に考えてみたのね。
「なぜオレは彼にメールなんて出したのか」と。
だってさ、やっぱどう考えても普通じゃないっしょ。
メールさえ出さなきゃ、こっちから能動的に関わらなきゃ、それで済んだ話じゃん、って。
メールを送った時点ではいろんな問題を抱えてるとは知らなかったわけだけど、
そこを抜きにしても厄介すぎるでしょ、狭い部屋で知らない男と住むなんてことは。
じゃあなぜオレは彼を大阪に呼んだんだ?
その理由を考えて出た結論は二つ。

まずはさ、オレは家族が欲しかったのかもしんない。
昔のヒッピーってさ、疑似家族(コミューン)を形成したりしてたでしょ。
血の繋がりじゃなくて、心の繋がりのある本当の仲間が家族のように一緒に暮らしてさ。
オレ、そういうのになぜか憧れがあんのよね。
といっても、別に本当の家族と不仲なわけでは決してないんだけど、
本当の家族とは別に、そういう一生をともにする信頼出来る仲間がいるっていいよなあと。
だから、さすがに本物のコミューンは無理だとしても、
将来友達みんなが結婚して家族を持つようになっても、
みんな近所に住んでお互いの家を行き来出来るような、
プチコミューンを築きたいなと以前から思ってて。
その憧れへの一手段としてさ、彼を大阪に呼んだってのはあるよね。
もしかすると、彼が家族になってくれるんじゃないかっていう期待を込めて。
実際、今は兄弟のような距離感で一緒に暮らしてて、
そりゃ狭い部屋だから鬱陶しく思うこともあれど、
文句を垂れながらも、それなりに毎日楽しく暮らしてるわけで。
「だったら彼女を作って同棲すればいいんじゃ?」と思ったあなた、
オレもその意見に100%賛成(笑)。
でも・・・・・その彼女がいないんだからしょうがねぇじゃんよ!(泣)

もうひとつは、これが一番大きい理由だったりするんだけど、
オレはルックスを除いて、とにかく自分が大好きなのね。
もうオレ史上最強、オレ天下無双、オレ唯我独尊、ってなもんですよ。
オレに一切の間違いはないし、もうなんなら悟っちゃってるし(神の域?)、
どうしてみんなオレの真似をしないのか?ってほどのオレフェチで。
完璧であり、完全体であり、パーフェクト超人である、それがオレ、と。
・・・ま、早い話がバカなんですが(笑)。
そんなオレはSを無償でサポートすることで、
「あー、やっぱりオレってかっこいい」と思いたかったんだろうなと。
メシをおごってやったり、部屋着を買ってやったり、自転車を買ってやったり、
こっちに何の得もない、端から見れば行き過ぎたいい人ぶりを発揮するにつれ、
「あー、こんなこと出来ちゃうオレってホント最高!」と。
要は自己満足のためにSを呼んだってのが一番大きな理由で。
だって、Sが軽い鬱に入ったときがあって、それをオレがなだめたとき、
心から思ったもんね、「ギャー!オレってかっこよすぎ!」って(笑)。
そして、同時に思ったのは、どうしてこんな優しい男に近寄ってくる女がいない!と(泣)。
いや、いつの時代もヒーローはわかってもらえないもんなんスよ・・・。

そんなこんなで十日間、Sとの不可思議な同居生活を送ってきたわけでありますが、ここに来て急展開。
今日、突如としてSは北海道へ帰っていってしまいました。
次回、Sとの生活最終章。

1/25(火) さよなら、S。
ところでSが来てからというもの、一切仕事はしておりません。
というのも、この極狭な部屋に二人でいると、仕事どころじゃないのよな、やっぱ。
スペースがないというのももちろんあるけど、そもそもそういう気分になれなくて。
かといって、Sを養ってる以上、支出は今までの倍だから、このままじゃヤバい。
で、どっちみち二月か三月には引っ越しを考えてたから、
予定を少し早めて、いっそこの機会に引っ越しすっかと。
引っ越して仕事を再開すれば、収入も元に戻って、生活も安定するだろうと。
んなわけで、ここ最近は毎日物件探しに奔走中でして。

で、日曜も二つの物件を見て、Sの待つ部屋に戻ったところ、
物件探しでテンションの上がってるオレにSが一言。
「俺、大阪でやっていける自信ねぇ・・・」
えぇぇ !? ここに来て今さら自信喪失 !?
ついこないだまでは、頑張ってバイト探すぞ、なんて張り切ってたのに !?
もういきなりオレのテンションも急降下ですよ。
どうやら特大級の鬱がやってきたようで、
新生活への自信喪失や大阪で働くことへの不安、
北海道で待つ母が持つ病気への心配やオレに対する申し訳なさなど、
いろんなネガティブ思考が一気に頭を駆け巡り、
一時は死にたいとすら思ったとか(!)。
そんな状況で、母親と電話で相談して、
いろいろ考えた挙げ句、北海道に帰ろうかと思ってるとのこと。
オレはそれを止める権利もないし、むしろホッとすべきところなんだろうけど、
そこは金八イズムが顔を出し、ついつい余計な説教を始める始末。
「まだ大阪で何もやってないんだからさ、結論を出すには早計じゃねぇ?」
しかしそう簡単に立ち直れないからこそ鬱なんであって、
オレの言葉は馬耳東風で、次はSの母親と電話で話す羽目に。
「娘さん・・・いや、息子さんの考えを一番尊重すべきで、赤の他人の僕に何も言う権利はありませんが、
言わせていただくならば、大阪に来たのも何かの縁ですし、
ここでもう少し頑張って何かを残した方が、彼の自信に繋がるかとも思うのですが・・・」
そうは言ってみるものの、やっぱ第三者に過ぎないオレの言葉なんて空虚でさ。
向こうからしてみりゃ、馬の骨が何を偉そうに御託並べてやがるって話でしょ、やっぱ。
そんなこんなで、結論はS自身が朝まで考えてみるってことに落ち着いて就寝。

翌朝、Sは開口一番、「俺、やっぱ今日帰る」と。
そこまで言われるとさ、オレにはどうこう言うことは出来ないし、
たった十日間といえども偽兄弟として一緒に生活してただけに寂しさもあるんだけど、
ここは手を振って送り出してやるのも兄貴としての役目なのかなあと。
しかし、だったら引っ越しを急ぐ意味はどこに・・・買ってやった自転車っていったい・・・。

ま、いろいろと納得出来ないこともあれど、
とにかく今日帰るってことで、急ピッチで荷物をまとめて実家に送り、
帰りの飛行機や空港までの移動の手はずを整えて、
最後に一緒にメシでも、ってことで近所のファミレスへ。
帰り道、Sが「これあげる」と言って、小さなカッターナイフをオレにくれたのな。
よくよく見ると、カッター部にわずかに血痕の跡。
「リスカに使ってたんだけどね。これを俺だと思ってさ」と冗談を言うS。
これは、もうリストカットは止める、ってことをオレに伝えてくれてるのか。
そう思って、最後に少しジーンときたオレなのでした。
・・・ま、気持ち悪いんですぐに捨てましたが(笑)。

こうして、オレらの同居生活はあっけなく幕を閉じました。
そして今、もうオレの部屋に彼はいなくて、
帰宅して「ただいまー」と言っても返ってくる言葉もなく、
メシを食いながらつまらない話をする相手もなく、
狭い部屋だけど、ひさしぶりに一人になってみると、案外広い部屋じゃん、なんて。

そんなオレが、今一番思ってること。
「これでやっと安眠出来る!」
そう、あいつ寝相が無茶苦茶悪かったんだよ!(笑)

最後にSよ、世界は窮屈だろうが達者で暮らせよ。
グッドラックであります(ケロロ軍曹)。


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written by オレ 

マイエンピツ追加