再生するタワゴトver.5
りばいぶ



 『冬の夢』パンフレット掲載文。


演出の戯言

暑すぎる長い夏、季節外れの台風、急激に下がる気温。いつからが秋でいつからが冬なのか、四季の巡りすらも変わってしまった…、なぞと乾いた思いでいるうちに迎える年の瀬。

昨年は『冬の怪談』。夏目漱石(「夢十夜」より)、小泉八雲(「雪女」など)の作品群をとりあげ、その文章の美しさ、そして言葉を発することで無限に広がるイメージを、造り手ながらにお客様と実感させてもらい、
今年は『冬の夢』と銘打って、夏目漱石(「夢十夜」より)、室生犀星(「蜜のあはれ」)の作品に光をあてる。同時代人であった前二作家とはまたちがい、接点もなく時代も少し違う漱石と犀星、しかしまるでそうなることが必然だったかのように、相互に響き合い、絶妙なメロディを奏でている。

人は夢を見る、人は夢を描くと「ハカナく」なって
ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの
なんて犀星のよに歌ってみたけれど、自分のふるさとは東京だと思いあたり、
東京といえば東京大学医学部標本室に保存されているとゆう漱石の脳について考えた。
その脳は今でもきっと物語を夢を思考し続けているにチガイナイ。だってまだその死後九十七年しか経っていないのだから。

日本語の響きと、自由で奔放、ウィットに富んだ発想に身を委ね、夢幻のイメージの中を旅してみる。
フトした日常の風景が違って見えてくるー

『冬の夢』どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください。

藤井ごう




2013年12月08日(日)
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