ジョージ北峰の日記
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2005年06月18日(土) オーロラの伝説ー続き

 余談になるかも知れないが、読者に予備知識として、私の体験した奇想天外な冒険の序章を少し話しておいた方が良いように思う。
 ご想像の通り、私が夢を見ていた時、すでに某国へ拉致されていた。しかし、私が拉致された先は、こんな国家がこの地球上に存在するなどとは、想像にもおよばない所だった。彼らは、自分達の国をラムダと呼んでいた。もしかすると、それは宇宙人達が住む異星国だったのかもしれない。つまり、私はUFOで連れ去られた可能性だって考えられたのである。しかし、彼らがどんな手段を使って私を拉致したのか、最後まで分からなかった。この事についてはいずれは話すつもりであるが---。
 ラムダ国の政治、経済体制、文明のあり方は、私が知る限り、地球上にこれまで存在してきた如何なる国とも違っていた。古代と超近代が渾然一体となったような国で、私自身がこれ迄、培って(つちかって)きた倫理観や、蓄積してきた知識からでは、正直なところ良い国なのか、それとも悪い国なのかさっぱり判断がつかなかった。
 私が経験した詳細については、これから逐一語り、その判断は読者に委ねる(ゆだねる)つもりだが、今のところはゲームに現れる国を想像していただければ理解しやすいかもしれない。
 学会で知り合った自称キャシーは、私を拉致した張本人だが、実はラムダ国の王女だった。ラムダ国の人々には、地球人のような簡単な名前はなく、すべてのメンバーがITのアドレスナンバーのように長い記号で呼ばれていた。私は彼らと脳の働きが違っていて記憶力が悪いのか、或いは又単に習慣の違いによるのか、味も素っ気もない記号のような名前を覚えることが出来なかったので(彼らの記憶力では、記号の方が余程簡単なようであったが)、私は彼らに勝手な名前をつけて呼ぶことにしていた。
 例えば、キャシーがクレオパトラと似ているという印象を受けていたので、私は彼女を、略してパトラと呼んでいた。彼女は私にパトラとよばれるのがとても気に入っている風だった。
 パトラは王女としての風格に加えて、一見女性の優しさ、色気を兼ね備えていたが、一方褐色の肌、赤い瞳、そして時折見せるオリンピック選手のような優れた運動能力ーー彼女はまさに獰猛な肉食動物、又は猛禽類の鷲のような凄みを見せる事があった。
 さて、そんな彼女が私のウイルス発見に興味を示した理由は、ラムダ国の文明に深く根ざした哲学と密接に関連していたのであるが、しかし、彼女が如何して、私を男として愛してくれたのか、今でもちょっと想像できない。 私が夢の中で見た“性の儀式”は、、同国では普通に行われている、まさに彼等が示すごく普通の性行動であった。
 セックスに際しては、男達はベットに動けないように張り付けられていた。つまり男に女を選択する権利は与えられていなかったのである。男女の交合は、何時の場合も広い舞踏会場のようなホールに集まり、ひとしきり宴会を楽しんだ後、始まるのが慣例であった。そして必ず性的興奮をたかめるためのショウが催された。
 興奮も充分にたかまった段階に達すると、パトラの合図で、男達は一斉に目隠しされ、猿ぐつわを噛まされベットにはりつけられる。すると女達は競って思い思いの男選びを開始する。その際必ずと言ってよいほど、何人かの男をめぐって、取り合いが起こったが、その争いを取り仕切るのもパトラであった。パトラはこの国にあって法律執行官でもあった。
 ただ、私が驚いたことは、何人もの女達が一人の男に集中することが多々あったが、男達は皆驚異的な持続力で女達の攻めに耐えうることだった。
 私が夢の中で見た光景は、私の常識からは、ありえない凄まじいものに見えたが、この国ではそれは異常なことでもなんでもなく、実際、通常に執り行われる性習慣だったのである。白色、褐色、黒色など色とりどりの肌で、一様に筋肉が盛り上がり、逞しく体格がよいプロレスラーのような男達がベットにはりつけられ次々運ばれてくる。すると、やはり一様に美しい女達(私にはそう見えたのである)が、待ちかねた狼がまるで獲物でも狙うように、荒々しく男達を襲うのである。その行為は、動物的かつ刺激的で、強烈な興奮を呼び起こすが、しかし反面、私には狂気の沙汰のようにも見えた。
 で、頂点を迎えようと女の動きが一層激しくなると、男に悶え苦しむような筋肉の痙攣を誘い、やがて女達の我を忘れた嬌声(きょうせい)が、最初は夜を賑わす虫達の静かなコーラスの合間に、時折ウマオイの声が不協和音のようにはさまる程度だったのが、やがて高く、低く、大きく、小さくホール全体にこだまするようになり、それがまるで第九交響曲の“合唱”でも歌っているかのような響きとなって広がっていくのである。
 男達は猿ぐつわをかまされているので、男性側の声は聞こえてこない、しかし、だからこそ快感に耐えようとする動きが一段と挑発的、刺激的で、男の私でさえ圧倒されるほどの欲情を感じるのでした。
 それにしても、集中的に攻められる男も大変でしたが、一方女の寄り付かない男達が、興奮でいきりたち身もだえする姿は痛々しく、苦しく、地獄の拷問のように思えた。しかしそれも又女達の興奮を一層呼び起こすようでした。


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