『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2006年04月26日(水) いれかわるとき、岸

怖い

怖い

となりのだれかの眠る音

あたしのつめたいからだの温度

鈍い頭痛と、再生する皮膚
けずりたてた爪のあと
些細な夜の一秒を削った
赤い三日月、肌に飾って

あたしはあなたにあいたいな
あえる?あえない?
どちらもきっとかわりがないよ
ただ
このときをふたりとも別々にいきて
生き残ってゆけたなら、きっと
会える日がきて
そうでなければ二度とない
小さな望みは大それていて
手に余るかしれない、、、と
危ぶみながら

あたしは息を吐き、息を吸い
荒れるしんぞうを飼い馴らす
あるいは、そう努力するから、だからどうかかみさま
お門違いかもしれないけれど
この、おなじ夜を生きてるあのひとが、あのこが、どうかどうか
今、あたたかな夢にくるまれていますように
あしたがどうぞ
彼、彼女たちにとって
刺草の痛みを、着せかけませんように

ねむれない宵に
やさしい音を
やすらかな音を

そうしていつか
目のさめた視界あふれるくらいの
青空を、やわらかな風を匂いを
うつくしいと笑う声が
そのくちびるからもれでるように

あたしたちの
絶望を知った、と
かんちがいを信じてしまう、前に

どうか

どうか

この、怖さを
突き抜けて取り外した
その先の場所に


早朝



2006年04月25日(火) 詩篇、林檎のやいば

まよなか、
月のない日、
冷蔵庫のうなりごえ
蛍光灯のてらす腕

すばらしいシチューが煮込まれた
鍋と、それをかきまぜていた腕
この胴体からたしかにつづいていたの
真夜中、ひとり、欠けて落とした
空気をそっくりとりかえた

宵、わたしはシチューをもぎとられ
たとえば林檎をきざもう
深紅の皮のしろい果物、
こまかくこまかくどこまでも
色の区別のなくなるまでに

口にはこんだ銀色スプン
とりとめない食物を山盛りに
わたしの目の先、うかびながら
はらはらとそらなみだをこぼしたの

林檎をきざみ、林檎をすくう
痛いも苦しいもすべて不安げな肢体も
くるおしさはすべてこの手で撹拌された
みえるのは、ほら
ただ、うっすらいろづいた
濁った白の果実だけ

わたしはみつめる
わたしはうろつく
わたしは泣いて
そうして忘れて

林檎はぜんぶをたべたから
深紅の色をスプンの下に
ひそませながらじっと待って
すべてをみて



早朝



2006年04月23日(日) 笑お。

一週間かぜをひいたらば、ゆるゆると
また、感染症のゆうべです。
ヘルペスさーん
あんまり会いたくなかったよ、でも再会こんにちは
あまり暴れないで帰ってください…と
願ってみながら痛いけど笑う

「にもかかわらず笑う」

このことばをどこまでぴたりと抱えながら
あたしはいけるかなと最近おもう
いろいろなひとの嘆きや怒りを見ながら聞きながら
「にもかかわらず笑う」。

二週間少しだけちゃんと働き
そうしたら倒れてさようなら
……現実はきっとそのとおり
「にもかかわらず笑う」?

こんばんあしたぐらい、またきっと
あの長いよくわからないねじけた時間がおとずれて
泣き言だらけで部屋のすみから埋まるだろうって
……四回目ともなればいいかげん
覚悟にも満たない想像はつきます

ながーいながーいよるとひる。

にもかかわらず
笑お

まだ笑えることを忘れてないから
笑お


4月23日、夜



2006年04月14日(金) 南に堕ちるあいのうた

じんわりと痛むあたまでかんがえるのです

あなたのこと
あなたの決意
その居場所

あたしはあいかわらずそらわらい、
笑顔がやめられずに笑ってて
ねえ、おとつい何があったっけ
……思い出せないことの増え

アルバイトはじめました
ようよう、ふた月足らず、
ヘルペスで篭った時間を差し引けばひとつき
イキタクナイヨと拒む体をとにかく立たせて
つづける、詐欺みたいな先生業、にて

それが今のところ
もっともあたらしい
私の「治療」。

・・・・・・・・・・

ともだちが、メールをくれた
所謂、自殺予告メール、というやつだった
とてもとてもとても疲れた
もう失うのは、たくさんだから

なにごともなく終わった今では
あたし
そのたった一行を
いとおしいと思う

しらせてくれて、ありがとう。

感謝は春の雪のよに降ります
目をこらし、注意していないと
はかなくはかなく消えてなくなる
それくらいに
日常は激しいようだから

ただ

いつかあおい海の縁で、朝も昼も夜も
かまわずきみと立てたならきっと
あまたの知らないあいのうたで空を
満たしたいと、思った

蠍の燃えるそらの
おしまいにならない、あいのうた

白い砂にからだうずめて

いつか


4月14日、深夜



2006年04月12日(水) 闇と雨とねむるひと

夜の雨は
すきなときとだめなときがあって
今日は、、、だめな、日

隠れていた不安が暴れだす
しばらく忘れていた
もしかして、脱ぎ去れたかもなんて
こっそり期待していた、あの気持ち、が

やあこんにちは、離さないよ

そう言う。

雨の、降って降って降りつづけるひるま
そのままやんわりとひかりをなくして夜へと突入
ざわざわとざわめくのはあたしの内部
オクスリを要るという
かなしい内部

不安がパーツを解体して
あたし
ほどけていくじぶんを見る
痛みが今日はひどかった、その上に
上乗せされていく、からっぽの精神が
てあしをばらばらと散乱させて

わらいながら
なぜ
あたしはわらうのか
わからなかった

取り落とした文庫本の薄いページ、
くしゃりと折れて、やぶれそうで


4月12日、深夜



2006年04月09日(日) 桜花火、祈り

目に見えなくて
みのがされてしまうくらいの
ちっぽけな、努力でした

でも
でも

時にあきらめかけながらそれでも続いた
たゆみない「それっぽっち」がなかったら
あたし、あなた、きみ、ぼく、
今こうしてここにいるかわりにじめんのしたで
あるかないか知れない国にいたかも
知れない

誰かがきみを打つなら
そのぶん
あたし

これまでに駆使されてきたささやかな努めに想いを飛ばして
感じ考え、そうして
今にありがとうと言う。

痛いぶんを
埋め合わせられないことは
よくわかって
それでも。

もういない、あなたのぶんも
つよくなれつよくなれ

……花が散っていく
あたしたちは
まだ散らないから

だから



2006年04月02日(日) ヒトリサクラ

物語も、たべものも、
やわらかなうたも
届かない
役にたたない
この空洞に


わたしはとてもさびしいとあなたにいえない


一度空想してしまった夢が
膨れ膨れてからだじゅうを喰らいます
きみのぬくもりを
反芻しながら

あたしがひとり
花みて凍え
北から吹く風
目尻から吹き飛ばす、なみだ


喪失がかたちになったなら
このはかない花の色を映して
降りしきるでしょうか

病院の庭の桜、
今年もまた
ひとりで見上げて

……見飽きるくらい眺めてるきみには
ただの風景のひとつかも知れないけれど

けれど、ね……?



四月二日、未明


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