『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2003年08月27日(水) 宮沢賢治生誕祭…HP公開のお知らせ

8月27日ということで
ずるずると、ひきずってきた
新しいホームページを、公開しました
折角なのでデザインを一新しました……一部かぶるけれども。

ない頭とパワーを絞りながらやっていたら足掛け5ヶ月もかかってしまったです。
公開していた時期と閉鎖していた時期がかろうじて同じにならなかったくらい
ながいこと閉鎖してしまいました
はんせい。

よかったら、いちどのぞきに、きてください。
そうしてもしもお気に召したなら
足跡ひとつのこして
そうして、ひだまりの住人に、なっていただけますように。


いまのわたしにできたことです。



8月27日 真火



2003年08月26日(火) なんでもない夜

午前3時にひとのうちを出てあるきはじめた
下駄の音がたよりなく道路にひびいた
ぺたぱた、ぺたぱた、ぺたぱた
行き先は土手のうえ
まっすぐに歩いていったらまっすぐに水に落ちられます
わたしは油のように浮かぶことができないから
きっとまっすぐにみなそこに沈んで流れていくでしょう

ぺたぱた、ぺたぱた、ぺたぱた

がまの穂が土手の脇に群をなしていて
なんとなく手をのばして触れてみた
がさりと触れた茶色のかたまり、ぎゅうっと握っても
ソーセージみたいなそいつは案外へこみもしなかった
小さいころから思っていた夢が
ひとつ、つぶれた

月は細くほそく紅く
漕ぎ出していく船で行ったら
また大海に乗り出す小船のごときで
火星のひかりの強さにも負けた

ぺたぱた、ぺたぱた、ぺたぱた

だれかの話し声がそらから聞こえてきてわたしはおびえる
自動車の通り道に立ち止まることをしても
ひっきりなしに続くはずのトラックの列は
地面を揺らしてゆくはずなのにわたしを通り過ぎていかなかった
ぐらぐらとこころは荒波みたいに揺らされて
わたしはそれにしがみつくのも無意味な気がして
ぼんやりと空をみていた

アカルイホウヘ

ふらふらとあるくさきに
自動販売機がふたつあって
右側の、上の段から順番に
サンプルの缶をひとつひとつ読んでいった


「そこへ行っても、いいですか」


神様は、わたしに応えてくれなかった。


だからまた、わたしはひとのうちへと帰っていった
まっくらな電気に照らされた道
ごうごうと土手の向こうで静かに水が
流れたりゆく
水が

ぺたぱた
ぺたぱた
ぺた
ぱた



それは、8月24日の未明のこと  真火



2003年08月23日(土) ささやかな

口紅くらいは、つけたいよね

いちおう

女の子、だったりするんだからさ、これでもさ



外を見てもテレビを見ても盛夏のさかりのいでたちの女の子たちは
元気に日に焼けながら闊歩しているみたいに見えてしまうので
ああなりたいのじゃなく、うらやましいのじゃなく、
眩しいなあ、という
ひとびとのかたち


無添加無香料すぐに落ちちゃう口紅でも
わたしにとってはタカラモノのような
ものなんです



真火



2003年08月18日(月) もう

もうなんだかくたびれてしまったので
眠りたく思います

ながあく、ながあく、

笑うのにくたびれてしまったから
泣くのにも涙が出てこないから

ひとのことばきいてもからっぽで目がなんにも吸いこまないで
砂漠のなかのバラの花にガラスケースかぶせないで

ばさばさと
いたいのと
さびしいのと
ふってくる
ふってくる
ふってくる

止まらない


できることならぼくのこともう怒らないでください


さようなら

おやすみなさい



真火



2003年08月14日(木) wherenever you are in the sadness

かなしいというきもちをすきとおったうみのなかかから
いちんちじゅう拾い上げているような、気が、していた

それは角がとれてしまったぎざぎざだったガラスのかけらで
もとは壜の形をしていたかもしれないうすみどりのうすっぺらなかたちで
砂の粒つぶを裏側のほうにぼんやりうつしながら水のそこに
沈んでいるんだ

いちんちじゅう、いちねんじゅう、
たとえばぼくが死んでもずっとずっと

あつめて手のひらのなかに重ねて積みあげてゆくと
それはいつまでたっても融けない飴玉だった
不規則なかたちをした粉砂糖をふりかけられた飴はどこまでも
ひららかでまろやかで、さっきまで浴びていたお日さまのひかりと
それからわたしの手のひらのすこしの熱さを吸い込んで
しずかに息を吐いて、それから吸った

息は、いちど吐かなきゃ吸い込めないですよ

大きく息を吸って、それから吐いて、という
ラジオ体操にくっついているナレーションを聞いて
ある幼稚園の先生(おじいちゃん)が
大笑いしてそう言ったんだそうだ

息は、いちど吐かなきゃ、吸い込めないですよ


なんだかさびしくなっちゃった

その女の子は白い服を着て浜辺に突っ立ったままぼうっと言った
だって、みんな帰っちゃうんだもん
わたし、見送ってばっかりな気がする

……そうだね見送ってばっかりはさびしい
見送るものと見送られるものとのさびしさをくらべるのは間違ってるけど
でも、わたしは、誰かのことをみおくるたびに
見送るものが抱き込んでしまわなきゃいけないさびしさのほうが
おそろしく鬼気迫っていてがらんどうに空っぽなくらいどうしようもないと
そう、思ってしまうんだ

今の今からわたしにはひとつも約束ののこされていない明日がつづいて

どうぞあなたは
しあわせに
なってください

そう願いながらからっぽのかばんを持ってからっぽの靴をはいて
スカートをひらひらさせながら元にいた場所に帰るのです
そうして傷口がふさがるのを、
まつのです

「バイバイかなしいをさがしてたあたし」

そう言えたらいいのにね

海辺の白い砂ははてしなくてそれとおなじくらい
そこに転がってひかっている融けない飴玉のガラスも
幾千も幾万もうずまっていて
わたしは

あおい空だけみてひとりではだしで立ち尽くしたい。


いつか、あなたを、あなたを、あなたを、みおくるだけのあたしじゃなくて
だれかを、誰かを待ってる、あなたを待っていることのできているあたしに




8月14日、雨夜 真火



2003年08月12日(火) なみだ。

涙が出てきてくれるのなら、それは、
すこし痛いけれどとうめいなおくすりになるにちがいないのにと
思った。

家出をしてみた
空があおく
おひさまのまわりを虹色の輪がとりまいているのを
わたしはみてしまって
黒いワンピースで日傘を脇に投げて
そらばかりみていた

いつまでこうしていたら
わたしはひとりぼっちじゃなくなるのでしょう
いつまでこうしていたら
わたしはひとりぼっちを平気におもえるのでしょう

お薬はわずかずつ増えました
自分で管理できないがため
手元に置いておけなくなったのでした

ただとってもながくふかくねむりたかっただけなんです
あの時もあのときもあのときも、いまも、また
ただそれだけなんです
目、すぐ覚めてしまったけど。でもね、

金曜日にはまた病院です
太陽のわっかは
また、見えるだろうかって、そんなずれたことばかり考えてしまいました。
しずかなところで静かな夏
なにもない真っ白な部屋でもいいから
友達も恋人もみんなみんな遠いところへ
とおいところへ

何か見ればかなしくて何かいおうとすればせつなくて
あたまのなかはがちゃがちゃとうるさくて、
しずめてくれるかもしれないとちょっぴりでも期待した涙は
かけらくらいも出ませんでした
ひくひく役に立たないのどを震わせているみたいなので
いっそ消えてしまえばいいと
思ってしまいました

だれのこともかきみださなくてすむ静かなところ

それはただ甘ったれちゃんな夢。



都内某所、真火



2003年08月10日(日) 噴水みたいな池になりたい

ふいに、かなしかったことをひとつ思い出したら
くやしかったきもちが噴き上げてきて次から次から止まらなくなって
わたしのまわりはびしょびしょになってしまった

お肉の入ったカレーライスを食べたかった
手指の皮がむけてべたべたに痛いからハンカチを手に巻いてテストを受けた
夏だけどいつも手袋をしている小学生だった
塩素でいっぱいで体中しみてしかたないプールを憎んでいた

みんなとおなじようなおしゃれがしたかった
半袖のシャツで思いっきり自転車を走らせてみたかった
一緒にお茶を飲みに行きたかった
きれいな色のセーターもキャミソールも着てみたかった
いつだって下を向いて歩いていた
ぎょっとしたようにまじまじとわたしの顔をみて
それから見てはいけないものを見たみたいに目をそむけたたくさんの人たち
わたしを指差してきもちわるいと笑ったひとたち
汚いから傍によるなと言ったたくさんたくさんの人たち
それってうつるんじゃないのと遠目から尋ねた警戒の目
二十歳すぎてもお化粧をしないわたしをまるで人扱いしてくれなかった人たち
傷だらけの腕を目にするなりばっと横を向いた、あのとき電車で隣り合ったおじさん

みんなみんな、
元気にしていますか

アレルギーが増えてるらしいです
みんながこの病気を抱えていないといいと思います
嘘じゃなくて
そう思います

だけど

白いシャツのあっちこっちに血痕がにじんでくるのなんてみたくなかった
脱いだハイネックのカットソーの首のうしろがまっかだったとき
洗濯機の前でわたしは少しだけ泣いた


大学、四年生までちゃんと通いたかったよ


……泣き言なんて言っていたらきりがないよね
なみだとことばはびしょびしょにこぼれてきます
これが時間決めのあふれてくる水で
ライトアップされた噴水みたいに時間がきたらぴたっと止まって
それから何事もなかったみたいにきらきらひかる
きれいな水面になるんだったらいいのに。

そうしたらその水にぱしゃぱしゃ手をひたしてはねちらかして
ちょっとだけあそぼう
そうしてきれいだなって言って
夜の空をみて、笑おう



8月10日、未明  真火



2003年08月06日(水) paper crain

できることがなにも思いつけなかったのでおりがみをした
とんとん、ぱたり、ぱた、むくり、どさ。
ぐったりひっくり返ること繰り返して何度も起き上がってそのたびに
四角いいろがみを三角にぴしりと折り合わせることから
ぜんぶを、はじめる。

ぴしり。

二等辺の三角形は
いつもきまって
少し、ずれる

paper crain、おりづる

それしかもうわたしは折れません

8月6日、
今年もまた夏が来ましたね
世界が終わったかもしれない夏の一日がきましたね
わたしは
何にもできないので
何にもできないので
ほんのわづかばかり夜ごはんの食べたあとの時間
折りづるを少しずつ折りました
もしそんなことでいいのなら広島まで送ってみようと思いました
燃えてしまったたくさんの鶴の代わりにもなれないけれども

ほんの少しずつしかふえていかないおりがみの鳥

自己満足でした
しかし
それが精一杯の思いつくこと
ではあります

paper crain

中学校のとき英語の教科書でこの単語に出会ったときわたしは
なんてきれいなことばを日本は持っているのだろうと思って
どこか心の隅のほうでほこらしく思ったことを憶えています

それは日本が偉いのじゃなくて、きっとあの空を飛ぶまっしろなつばさがえらいのだけど
均等にくっきりとひらかれた風切り羽のうつくしさとゆるやかに弧をえがいた首の線や
ほそいほそい足で支えられたふわふわと重さのないみたいな、
まっしろとそれから少しの黒とでできたまるで
地上に結び付けられていないような、鳥の姿が


「ペーパークレイン」



8月7日、朝  真火



2003年08月05日(火) つめたいみず

だれからも声のとどかないところにぼくがいたら
どんな電話の音がひびいても受話器をとりあげなかったら
さびしいという心はどんどんしずかになって小さくなって
しまいには死に絶えてくれるんじゃないだろうかとひそかに期待をしていたので

だれからか呼び声がかかるのを待っていたらだめだ
自分から呼びかけていかなければいけないと
よく言うし言われるしそれは正しいことのようだけれど
つねに呼びかけ続けてきた気のするぼくは、正直なところ
なんだかもうくたびれてしまったみたいなんです

……そんなことば聞きたいひとがどこにいる

たくさんのひとの話をききました
たくさんのことばを聞きました
たくさんの涙を見ました
たくさんのひとがぼくの前でたくさんのことをむきだしに話して
そうして泣くのをやめてまた自分の生きるところへ帰っていきました

ぼくは、語られたたくさんのことばについて考えていました
ながされた涙のことについて、心の中にしまいながら
ここ幾年かそれもしくはもう少し長い時間をひとのことばや泣き顔と一緒に
こっそり抱えて

「話したいことがあったらいつでもぼくはここにいるよ」

そういうのがぼくだと思って
そうするのがぼくの役目で

自分はみおくる者なのだといつの日にか感じました
紺色の制服のプリーツがしわしわになって日が暮れても
それでもまだ誰かのことに耳をかたむけていたころ

ぼくは見送るひとなんだと
そうしていつか
置いていかれるものなんだと
そういうふうにできていると


何を話したいかわからなくてどんなことばなら伝わるのかわからなくて
時間なんて無制限でいつまでたったら自分のなかみがきれいに整理できるのか
わからないわからないことだらけでただ出てこない涙だけいっぱいになっていて
そこに穴をあけようとして

……そうやって、だれかが、やってくる
ぼくはいつも、スタンバイしていようと思った
いつかやってくるきみのために


そうして


ひとりひとりが消えていく
タイミングよく遠くへといってしまうひと
ひっこしをしてゆくひと
病院へいってしまうひと
学ぶことに追われてゆくひと
働くことでいっぱいになってゆくひと
そうしてぼくが
少しずつ喰われたあとのこころの残骸をある日みつけてしまって
ぱったりと動かなくなって毎日しずかなこころでするすると泣いた
動いていた手が動かなくなる
回せていた首が傾かなくなる
ざらざらとテーブルの上に錠剤を並べてむかいあってみる
黄色も白もピンクも肌色もいろんないろのおくすりだった
これだけでぼくのいのちはのびてゆくの?

ことば、だれかにただ聞いてほしいと思ったら
いつも誰かのことばをすいとりつづけてきたわたしの前には
だれもいなくて、なんだかとてもわたしは
かなしいみたいな気持ちになったけど

それは、役目より外のことを、求めようとしたからなのかなあと、ぼんやりとも考えて


夏の夜はふあんがどんどんふくれていきます
それを片付ける方法を教えてなんて言わないから

きみをほしがってもいいですか


NOということばが100倍になって体の上におおいかぶさってくる日々



8月5日、深夜  真火


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