会いたいとか好きだとか、そういう言葉を軽々しく言葉にしてしまう己が嫌だ。そういう言葉を使うことで何を得ようというのか。何を試そうとしているのか。そう、何かの為に使っているのだ。純粋な気持ちではない。軽々しくそして卑怯に。

　ああ、何て辛い。何かを真面目にやるなんて久々だ。それはとても辛くて、でも気持ち良い。

　ああ、もうあの泣きそうな声を聞く事は無いんだ、もう抱きしめてもらう事も出来ないんだ、キスもセックスも全部。
　そう思ったら、堪らなく淋しかった。そこで耐えられなかったのは己の弱さなんだろうと思う。
　好きなのかもまだよく分からない。安易な方向へ逃げているだけのような気がする。それでも今失うのは辛すぎて、結局そういうことだ。

　危険性ということについて、ずっと調べている。結局の所、一番確実なのはしないことなんだというのが分かっただけだ。ピルは己には向かない上に、喫煙者なので服用出来ない(確か)。流石にコレばかりは成るように成るで済まされる話ではないので、己としても結構真剣だ。それにしてもつくづく女って面倒くさい。
　ほんの少し前まで、そういうことを考えたことが無かった。まず無いと思っていたし、確実な避妊の方法としてのセックスレスを一応知ってはいたから。まあそれよりも何よりも、相手がいなかったから。
　不思議な物だ。人間というのは変わるのだという事を、こんなにも変化の乏しい人間でも変わるのだという事を、目の当たりにしている現在。まあ、下地というか、元々の性格として考えられなかった事態では、実は無いのだけれど。

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