さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2004年01月08日(木) にゃん氏物語 葵08

光にゃん氏訳 源氏物語 葵08

御息所は このような物思いで だんだん病気が悪くなった
斎宮のそばから離れて他の御殿に移り 修法などをさせている
源氏は それを聞いてどんな具合でいるのか哀れみ見舞いに行く
いつもとは違う仮の家なので とても人目を忍んで逢う
心に無く しばらく逢いに来なかったことを 源氏は御息所の
気が済むまで ことごとく詫びをいれる
妻の病状まで心配そうに語った

自分は それほどにも心配していませんが 親たちが 大変な
心配ようなので それがとても気の毒で 少し良くなる時まで
謹慎していようと思っていました
あなたが心おおらかに見て許してくれれば 私は幸せです

などと言って いつもより弱々しく見えるのは もっともである
しみじみ拝見して同情する
疑いや恨みも打ち解けないまま 明け方を迎えた
源氏が帰る朝の姿の美しさを見るにつれ やはり自分は未練で
別れ離れて行くのはできないと御息所は思う

正妻に子供が生まれれば ますます愛情が増して それ以外の
女性には 愛情がしだいに冷めていくに違いない時である
このように待ち暮らすことも続かなくなるだろうと思いながら
やはり思い待ち暮らしている たまの出逢いで物思いは減らず
新たに物思いしていた御息所に次の日は手紙だけが夕方に来た

ここ数日 少し良くなってきた病人の気分が 急に悪くなって
ひどく苦しんでいるので目を離せず出かけられないのです
こうあるのを 例の上手な言い訳をしてと御息所は返事をした

袖濡るるこひぢとかつは知りながら下り立つ田子の自らぞ憂き
袖を濡らす恋と知りながら そうしてしまう自分が哀しい
古い歌にも
悔しくぞ汲みそめてける浅ければ袖のみ濡るる山の井の水
と言います もっともな事です

多くいる恋人の中でも筆跡は優れている 源氏は返事を見ながら
どうして思い通りにならないのか 性格にも教養にも個性があり
それぞれ捨てがたい人ばかりで この人だけというのも無い
苦しく思いながら 返事は暗くなってから書いた

袖ばかり濡れると言うのは何故か 愛情が深くないのでしょう

あさみやに人は下り立つわが方は身もそぼつまで深きこひぢを
袖を濡らす人は浅い所に立って恋をしているからです
私はこの身がずぶ濡れになるほど深い所で 深い恋をしてます
この返事を直接 口から言わず 筆をかりて言うのは
どんなに辛いことでしょう と書いた


2004年01月06日(火) にゃん氏物語 葵07

光にゃん氏訳 源氏物語 葵07

御息所の心の煩悶は ここ数年来しだいに大きくなってきた
信頼できない源氏の愛情と諦めたものの
これっきり終わりと斎宮について伊勢に行ってしまうのは心細く
捨てられた女と噂されるだろう世間体も気になっている
そうだといって京に残るのは安心できない
無視されて恥をかいた車争いの記憶がよみがえる
自分の身の置き所を定めることができず 寝ても覚めても悩むうち
次第に心が身体から離れて 身も心も定まらず具合が悪くなった

源氏は伊勢に行ってしまうことを賛成とも反対とも言い切らない
私のようなつまらない男を深く愛してくれた貴方が 私を嫌だと
遠くへ行く気持ちもごもっともですが 最後まで変わらぬ恋を
続けてくれるのも 深い愛情ではないでしょうか
と言って引き止めているだけなので
気持ちも紛れることもあるかとお禊見物に出かけたのに辛い思いを
経験し かえって全てのことが辛く思いつめてしまった

大殿邸では葵夫人が物の怪が付いたようなようにひどく患っている
父母も誰も心配していて 源氏はお忍び歩きも遠慮する時である
二条の院でさえ時々帰るだけであった
夫婦仲は良くなかったが それでも正妻としてどの女性よりも
重んじて 源氏は特別に思っている
その妻が妊娠しているのに患って悩んでいるので 同情して嘆き
修法や祈祷など大臣家でするもの以外でも源氏は部屋でさせた

物の怪や生霊などがたくさん出てきて 色々名乗りをあげる
その中で他の人に移させようとしても一向に移らず ただじっと
病む夫人に憑いていて 特に激しく病人を悩ますわけもないが
その代わり 片時も離れないものが一つある
すぐれた修験僧にも従ない執念は並の物の怪ではないと見える

左大臣家の人たちは源氏の愛人を誰や彼やと見当をつけていくと
結局 六条の御息所と二条院の君は 特に源氏を愛している
それだから 夫人への恨みの気持ちは深いものだろうと言う
そうして物の怪の言葉から探らせるが特に手がかりがない

物の怪といっても亡くなった者 育てた姫君に愛情をもつ乳母
またはこの家を代々祟り続けてきた怨霊が 弱みにつけこみ
現れ出て来たり そんな大したものではないのが現れてくるが
そんなものは今回の物の怪の主ではないらしい

夫人はただ声を上げて泣くばかりで 時々胸がせき上がるように
とても耐えることができないように苦しがる
どのようになってしまうのかと誰もが不安で慌てがる

院の御所からも お見舞いの使いがひっきりなしに来る
祈祷までも別に行い 心づかいのある恐れ多いことである
こんな夫人に 皆もしものことがなければいいと惜しんで思う

世間の人々が惜しみ嘆いているのを聞いても御息所は不快でいた
御息所は ここ数年来は決してこのようではなかった競争心を
小さな車争いで 大きな怨念として生じさせてしまった
それが どれほどの大きさか左大臣家の人々は気づかなかった


さくら猫にゃん 今日のはどう?

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