さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年06月30日(月) にゃん氏物語 葵01(あおい)

光にゃん氏訳 源氏物語 葵01

帝の代替わりで時代が変わってから 源氏は何事にも興味が持てない
官位が昇進して身分の高さの窮屈もあり軽々しく忍び歩きもできない
あちらこちらで 待っていて訪問されない嘆きを恋人に作らせていた
その罰なのか 相変わらず源氏は中宮の冷淡さを嘆き悲しんでいる

位を退いた院と中宮は 以前にも増して
普通の家の夫婦のように暮している
前の弘徽殿の女御である新皇太后は不愉快からか 院には来ないで
宮中の当帝の御所にばかり行っていて中宮は気楽でいるように思える

折々につけて音楽の会などを世間の評判になるほど派手に催し
院の生活は現在の方が きわめて良いものとなっていた
ただ恋しく思うのは内裏にいる東宮の春宮のことだけである
御後見をする人のいないのが気がかりに思って 源氏にそれを命じた
源氏は やましくて気が咎めたが 同時に嬉しくも思った

あの六条の御息所の生んだ前皇太子の忘れ形見の姫君が
斎宮に選ばれた 源氏の愛情が頼りないので御息所は
斎宮が年少なのを口実に自分も伊勢へ下ってしまおうと
前から思っていた この様な事情を 院が 聞きつけて

「私の弟が非常に愛していた人を おまえが軽々しく扱うのが
気の毒だ 斎宮も姪でなく自分の皇女と同じように思っている
どちらにしろ御息所を尊重したほうがいい 浮気心から愛したり
冷たくしたりするのは 世間の非難を受けるだろう」
と源氏へ小言を言った 源氏自身もそのとおりに思い恐縮している

「相手の名誉を考え どの女も公平に愛し 恨みを買ってはいけない」
と忠告されながら 中宮を恋する だいそれた心が このように
聞きつけられたら どんなに恐ろしい事だろうと恐縮して退出した

院までも御息所との関係を認めて忠告するのであるから
相手の名誉のためにも 自分のためにも 軽率なことはできない
と思って以前に増して その恋人を尊重するようにはなっているが
まだ公然と妻としての待遇にはおかないのであった

女も不釣合いな年上な点が恥ずかしく しいて夫人の地位を求めない
源氏はそれをよいことに 院もご存知であり世間でも知らない人が
いないくらいになっても なおも誠意を見せない
それを女は ひどく嘆いていた

このようなことが世間から伝わって来た時 式部卿の宮の朝顔の姫は
自分だけは源氏の甘い囁きにあって人の二の舞は踏むまいと
固く心に決めていて ちょっとした短い返事ももう書くこともない
そうかと言って憎らしい素振りや 軽蔑的な態度を見せない樣子を
源氏は格別に思い 長く恋し続けている


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