ジンジャーエール湖畔・於
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2005年10月26日(水) 空の上のライブドア一座











風邪を飼いならして はや3週間


イボイボな声で会社の電話をとると「大丈夫?」と相手から声をかけていただき
打ち合わせ中ゴボゴボな咳をすれば「かわいそうに…」と痛ましいまなざしで見つめられ
ひとのやさしさになにかとチヤホヤされて調子にのっているところです


六本木のアカデミーヒルズという会員制のビルに仕事でほぼ毎日通っていて、
40Fの眺めを毎日みれることに感動しています。
特に夕方5時のオレンジ色からうすむらさきにグラデーションしてく空
「マジックアワー…」とかゆってみたがここには外みてる人なんてほとんどいなかった
UFOみえないかな、と思ったがそれもだめだった
見ている時間がすくなすぎる
ここで一日富士山の尾根らへんを観察できたなら、一度くらいはなにかが見れるんじゃないかしら、


モリビルの人々は事実天上人なんだなということを身をもって実感し、
空の上にある会社のオフィスで、「取引先に電話をかける」「会議書類を作成する」などしている
ところを深く想像していたら(とくに「M&Aしているところ」)
苦手なI先生がばかでかいかばんと荷物でパンパンのトートバックをさげて
いつものように眼をぎらつかせてキョロキョロと登場したのが数十メートル先に目に入った
(なんて地上人たる装いの方!)
さよなら、地上の仕事





明治大学のキャンパスグッズのモチーフになってるのが、土偶によくある遮光器で、
ハンドタオルとめも帳をもらって、いくぶんかうれしい気持ちになりました
遮光器、好きなので…(石原豪人の絵≪遮光器が天女の手をひいてUFOへ吸い込まれる≫経由で)



マキューアンの「アムステルダム」が文庫になってて、
あとずっと読みたかった「津山三十人殺し」とハヤカワのホラーオムニバス集
(スタージョン、リチャードマシスン父子、エドワードゴーリーなど)
を買って終電で帰ります
電車の中ではみなほとんど同方向をむいてたっているので通常は混んでもそんなに不快はないが
たまに向かい合わせで乗り込んでくる人がいて、私も負けず嫌いなので自分から方向を変えるということをしたくなくて
意地になっていきがってたら、どうやらちょっとしたチカン的な人物だったらしく
出ばなをくじかれる思いがしました(意味ちがうかな)
女ってそういうささいなところでも意地はってると自分が痛い目みるだけなのかな、などと考えた
坂口拓ちゃんとかトニージャーとかみたいに腕っぷしでバリバリいわせてみたいもんです、








2005年10月04日(火) 霧の女、摩周湖














霧の摩周湖との出会いは、台場のテレコムセンターの大きくてハイテクな感じのビルの中だった。
 どうしてぼくも摩周湖もおよそ関係なさそうなそんな場所にいたかというと、
 ぼくたちはそこで都知事選についての世論調査のための一週間のアルバイトとして集められていたんだ。
 「現在の小泉政権をあなたは支持しますか?」「あなたが支持する政党は次のうちの何番ですか?」
 なんてことをぼくを含め20人ほどのアルバイタ−が無作為にリストアップされた電話番号にかけて繰り返し質問しまくってた。
 摩周湖に気づいたのは3日目だった。
 彼女はぼくのななめ前の席で長い髪の毛を束ねていた。(電話をかけるのに邪魔にならないようにだと思う。)
 ぼくが電話をかけている最中、彼女の声はしばしばぼくの耳にきこえてきた。
 ラ行が苦手みたいで、「そレでは・・・」とか「こレかラの」なんていうのが妙ちくりんだった。
 やがて3時の休憩の時間になった。
 なぜかその日はアルバイターたちに差し入れがあってチーフにぼくはそれをみんなに配るようにいわれた。
 名瀬というぼくと同じ大学の男もいっしょに配った。
 差し入れには2種類あって、どちらもコ−ジーコーナーで、エクレアかシュークリームだった。
 ぼくがシュークリームをもって、名瀬がエクレアをもって、みんなに配っていった。
 摩周湖の前にきたとき、彼女は丁度手鏡をのぞきこんでいた。ぼくらに気づくと
 「さかさ睫毛って手術で治るんでしょ?」なんて言って笑っていた。
 「今日はおやつ付きかー。あたしモンブラン好き。」
 なんておどけてる彼女に、名瀬は言った。
 「モンブランー?ないからって。まじ、ごめん。シュークリームかこれ、エクレアなんだ。どっちがいいですかー?」
 自分のもってるエクレアとぼくのもってるシュークリームを指さした。
 そしてこんなことを言った。



 「てゆーか、どっちの男の子がいいですかー?」


 
 彼女は小さな声で、シュークリーム。と言った。

 名瀬は、げぇっ!と舌打ちをした。

 ぼくはボキッと指を鳴らした。

 彼女は、パチパチと2回瞬いた。




























 これが ぼくと霧の女、摩周湖との出会いだ。




































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